PINARELLO(ピナレロ)のロードバイクは、以前のシリーズを復活させたり、○○の後継機などと位置付けて、伝統を守っていくという風潮があります。
今回はかつてレースにも積極的に使用された、「MARVEL(マーベル)」についてお話します。
消滅→復活→消滅と、中々に激動の歴史を繰り返すモデルを振り返ってみます。
初代PINARELLO・MARVELの特徴
PINARELLOのMARVELは2005年モデルを中古品で確認できましたので、現在のフラッグシップモデル「DOGMA(ドグマ)」が初登場したのと同時期に活躍していたモデルです。
アルミフレームにカーボン製のフロントフォークという、現在のトレンドの組み合わせですが、シートステイにまでカーボンを使用する、PINARELLOが世界で初めて開発した「カーボンバック」というフレームです。
2005年前後ですと、フルカーボン車の全盛時代とまでは言えず、レースでもアルミフレームがまだ活躍していた時代です。
カーボンバック自体は1998年に最初のモデルが発表されており、他メーカーもこぞって追随したので、2005年であればかなり定着期に入った頃です。
しかし、フォークもカーボン製になっているということを考えると、進化は見られますし、ドグマと並んでレースに使用されていたモデルというのも納得がいきます。
このモデルがどの時期まで継続されたのかは調べられませんでしたが、MARVELはこのあとに全く別のフォルムで復活しますので、PINARELLOがその名を歴史に刻みたいモデルであったことは間違いありません。
PINARELLO・MARVELは2014年に電撃復活!
前項では、まず初代のPINARELLO・MARVELを確認しました。
そして、二代目はブランク期間は分かりませんが、2014年モデルに突然登場します。
2014年は、前年までミドル~エントリーグレードを形成していた、「FP」シリーズの名称を変更した年でした。
「FP QUATTRO」が「MARVEL」に、「FP DUE Carbon」と「FP UNO Carbon」の中間的な位置付けが「RAZHA(ラザ)24UD」に、そして「FP UNO Aluminium」が「NEOR(ネオール)T6」になりました。
中でもMARVELはミドルグレードの位置付けながら、当時のフラッグシップモデル「ドグマ65.1」と似た形状をしており、性能の特徴もかなり近いと言われていました。
現在のPINARELLOは、ドグマやPRINCE(プリンス)という歴史のあるモデルが完全にエアロロード化したため、新時代に突入したと言われています。
その新時代のモデルと一線を画すのがMARVELやドグマ65.1であり、2019モデルではラザが孤軍奮闘で、その伝統を守っている状況です。
二代目PINARELLO・MARVELの特徴
2014年に復活を遂げたPINARELLOのMARVELですが、FP QUATTROからの大きな変更点は、PINARELLOの象徴である「ONDA」フォークの形状変更です。
ドグマ65.1に近い、より複雑で繊細な曲げ加工が施されており、空力性能がアップしたと言います。
また、これも大きな変更点ですが、電動変速機に対応するべく、ケーブルの受けを交換することが可能な「THINK 2」という技術が投入されています。
これは、エントリーグレードになった現在のラザにも受け継がれており、これもPINARELLOの伝統様式の一つです。
ジオメトリ(フレーム形状)は基本的にFP QUATTROを継承しており、左右非対称の「アシンメトリックデザイン」が採用されています。
このアシンメトリックデザインもPINARELLOが世界で初めて開発したものであり、2012年にPINARELLOの全てのロードバイクがこの形状になりました。
2014年は進化する時期であり、その代表的なものがONDAフォークと言えます。
PINARELLO・MARVELはドグマのセカンドグレードだった!
前項では、PINARELLOのMARVELの主な特徴をお伝えしました。
PINARELLOが特に正式に発表しているわけでは無いですが、ドグマのセカンドグレードという位置付けであったかと思います。
ONDAなどはほぼ同じ形状ですし、THINK 2もドグマから継承したものです。
そして、セカンドグレードたる所以は、フレーム素材に表れています。
当時のドグマのフレームは「65HM1K」という、とにかく軽量で、ガチガチに硬いカーボンシートを使用していました。
世界広しと言えども、ほぼPINARELLOにしか使用されていなかったと言われているほど、特殊な素材でした。
しかし、軽量で硬いカーボンは割れやすく、破断しやすいという特徴があり、練習などで転倒を恐れずガンガン乗るというものではありません。
しかし、それでは裾野も広がらないということで、MARVELには「30HM12K」という適度にしなやかで、衝撃への耐性や、耐久性に優れた素材が採用されています。
しなやかですから、乗り心地が良くなりますし、衝撃に強いので転倒や接触を気にせず乗れるのは、幅広い用途に対応できますので、裾野が広がり、正にセカンドグレードとしての役割そのものです。
PINARELLOがMARVELに掛けた期待が表れるラインナップ
PINARELLOがMARVELの復活に力を注いでいたのは、当時の完成車のラインナップからも感じ取ることができます。
完成車は4機種あり、現在はPINARELLOではあまり見られなくなった、カンパニョーロの「Athena(アテナ)」や、シマノの「Tiagra(ティアグラ)」なども採用されており、価格の幅も大きいものでした。
そして、2015モデルには限定という形ではありますが、フレームセットも販売されました。
この年はPINARELLOの新時代のきっかけとなった「ドグマF8」が販売を開始しており、フレームセットで70万円に迫ろうかという高級さでした。
その中でMARVELのフレームセットは30万円以下の価格でしたので、2台目を探している方などを中心に人気を博したと聞いています。
しかし、MARVELは2016年、プリンスがドグマ65.1と全く同じ金型を使って復活するのに伴い、再び市場から姿を消すことになりました。
MARVELが作った伝統を引き継ぐモデル
先ほども触れましたが、現在のPINARELLOは新時代になっており、2014年にFPシリーズから名称変更となったモデルも、MARVELが2016年、ネオールが2018年に廃盤となりました。
そして、ドグマ65.1の金型で復活したプリンスも、2019年モデルより現在のフラッグシップである「ドグマF10」の技術を受け継ぎ、デザインもエアロ形状に特化しました。
このように、二代目MARVELが活躍した時代の面影がほぼなくなってきた中で、注目が集まっているのが「ラザ」です。
先述通り、MARVELの復活と同じタイミングで、FPシリーズの名称変更で登場したモデルです。
やはり、何と言っても、ラインナップの大半がエアロ形状のものになった中で、伝統的な形状を引き継いでいるのが、逆に新鮮さすら感じさせます。
また、こだわりを捨てていない証拠としてこの機種にだけ特別に、イタリア空軍が使用する「国籍識別マーク」が車体にペイントされています。
カーボンの最廉価モデルですが、貴重な伝統の生き残りですので、その付加価値を考えれば、コスパも十分高いと言えます。
伝統を受け継ぐ貴重なモデル
今回はPINARELLOのMARVELについてお話ししました。
歴史は古く、道中は激動ですが、伝統を受け継いできたという意味で貴重な存在になっています。
現在その形状や特徴を残すものは少ないですが、いちPINARELLOファンとしては残してほしい伝統様式であると思います。