ピナレロは2019モデルで、往年の名作「PRINCE(プリンス)」をフルモデルチェンジ、DOGMA(ドグマ)に準ずるセカンドグレードとなります。
セカンドグレードの役割としてドグマとの違いが気になるところであり、特に購買に直結する価格面は大いに関心があるところです。
そこで今回は価格を中心に、モデルチェンジを図った新・プリンスをご紹介します。
ピナレロ・プリンスの歴史
それではまず、プリンスがピナレロにとってどのような存在なのかを知っていただくために、歴史を振り返ってみましょう。
初代プリンスは1988年、車体の一部(シートステイ)にカーボンを採用したアルミフレーム「カーボンバック」としてデビューしています。
数々のレースで勝利を収め、ピナレロのレーシングブランドとしての地位を不動のものとした立役者とも言われています。
また、他メーカーもこの技術をこぞって使用したため、2000年代初頭は一大カーボンバックブームとなりました。
二代目は今もピナレロの象徴である「ONDA」のフロントフォークが初めて採用された「プリンスSL」で、ONDAの類を見ない特殊な形状もあり、デザインでも非常に高い評価を受けます。
三代目はフルカーボンフレームとなり、性能、価格、レースでの成績など、どれをとっても抜きんでたフラッグシップモデルとなります。
そして、この後はドグマの台頭により、一時期ラインナップを外れますが、2014年当時のフラッグシップモデル「ドグマ65.1」のセカンドグレードとして復活します。
このモデルが2018シーズンまで続き、2019シーズン前にリニューアルと言えるフルモデルチェンジが行われました。
ピナレロ・新プリンスは性能や価格面でアマチュアライダーを見据える
前項ではプリンスの歴史を振り返りましたが、ピナレロが新しい試みを行う際には必ずと言ってよいほど、プリンスの名を冠していたことが分かります。
しかし、先代の四代目はドグマ65.1の金型をそのまま使用していたこともあり、特に目新しさはありませんでした。
それに比べると2019モデルは、過去の面影がみじんも感じられないフルモデルチェンジで、新たな専用金型で作られていることもあり、「完全復活」というインプレ評価もあるほど市場は歓迎ムードです。
新・プリンスは現在のフラッグシップである「ドグマF10」の形状や技術を受け継ぎながら、新たな素材や技術を投入されたモデルです。
ドグマはプロチームに提供されるピュアなレーシングモデルですが、プリンスはアマチュアライダーも見据え、乗り心地や扱いやすさを加味し、現実味のある価格も目指しています。
高級ブランドと認知されているピナレロの中で、上から2番目のグレードですから手の出しやすい価格とまでは言えませんが、ドグマに比べれば大分親近感が湧いてくる価格ではあるでしょう。
ピナレロ・新プリンスのラインナップと価格
それではここで、ピナレロ・新プリンスのラインナップと価格をご紹介します。(価格は税込)
【PRINCE FX】
フレームセット:¥491,400
シマノ・デュラエースDi2完成車:¥1,047,600
シマノ・アルテグラ完成車:¥570,240
重量の公表はありませんが、プリンスでは最軽量とされており、上位モデルの位置付けになります。
【PRINCE】
フレームセット:¥297,000
シマノ・アルテグラ完成車:¥469,800
カンパニョーロ・ポテンザ完成車:¥469,800
シマノ・105完成車:¥415,800
シマノ・105 EZ-fit(女性向け)完成車:¥415,800
ノーマルグレードの位置付けで、多くの完成車も用意されており、セカンドグレードというのに相応しいラインナップです。
【PRINCE DISK】
フレームセット:¥318,600
シマノ・アルテグラ完成車:¥516,240
ノーマルグレードのディスクブレーキモデルです。
ピナレロ・新プリンスとドグマF10の価格比較①ドグマF10の価格
前項ではピナレロ・プリンスの価格をお伝えしましたが、ここではフラッグシップモデルの「ドグマF10」と比較してみます。
ドグマF10もラインナップの構成はプリンスと同じで、上位グレードの「F10 Xlight」、ノーマルグレードの「F10」、ディスクブレーキ仕様の「F10 DISK」になります。
なお、ノーマルグレードに完成車はありますが、台数限定の上に情報が無いので今回はフレームセットのみご紹介します。(価格は税込)
【DOGMA F10 Xlight】
参考価格:¥972,000
【DOGMA F10】
参考価格:(STD)¥734,400/(MY WAY)¥820,800
【DOGMA F10 DISK】
参考価格:(STD)¥756,000/(MY WAY)¥842,400
※MY WAYはボディーカラーを自由に選べるオーダーシステム
フレームセットだけでこの価格ですから、フラッグシップモデルとして、さすがの存在感です。
特にXlightは、プロチームにすら数量限定で提供されたモデルであり、ずば抜けて高額なのもうなずけます。
ピナレロ・新プリンスとドグマF10の価格比較②価格差の検証
前項では、現在のピナレロのフラッグシップモデルであるドグマF10の価格をお伝えしました。
冒頭でもお話ししましたが、プリンスがセカンドグレードとしてアマチュアライダーも見据えているということが、この価格の差でもお分かりかと思います。
ドグマF10のフレーム素材は、ロードバイク界ではドグマにしか使用が許されていない特別なものですし、極限まで素材を削り、積層を細かく複雑に張り巡らせるなど、最高の技術で製造されています。
しかし、それにしてもノーマルモデルのフレームセットでプリンスと約45万円もの価格差を考えると、やはりプリンスに現実味を感じるのは筆者だけではないでしょう。
完成車にしても、プリンスFXのデュラエースモデルは別格ですが、その他についてはドグマのフレームセットよりも安価です。
フレームセットを一から組み上げるのは価格だけの問題ではないですが、パーツの質や手間を考えれば、コスパはプリンスに優位性を感じます。
ピナレロのその他のモデルとプリンスの価格比較
前項ではプリンスよりも上位グレードとなる、ドグマF10との比較をしましたが、下のグレードのモデルとの比較もしてみましょう。
2019モデルでは新プリンスがセカンドグレードになったため、前年までのセカンドグレード「GAN(ガン)」がサードグレードになりました。
ガンはノーマルグレードの完成車が継続販売となり、シマノ・105完成車が321,840円(税込)、カンパニョーロ・ケンタウル完成車が415,800円(税込)となります。
シマノ・105の完成車はプリンスにもありましたが、価格差が10万円以上あります。
これはガンの方がもう一段階しなやかで柔らかめの素材を使用しており、重量が嵩んでいる分や、投入されている技術がシンプルな分の価格差と考えられます。
そして、もう1機種ご紹介するのは、ピナレロのカーボンフレーム車で最廉価となる「RAZHA(ラザ)」です。
価格はシマノ・105完成車で262,440円(税込)で、これが最低価格なところがさすがピナレロですね。
カーボンはガンと同じ素材ですが、こちらは今のピナレロでは唯一と言ってもよい、2000年代後半から続いたカーボンフレームの形状や技術を継承しているモデルです。
そのため、最新鋭の技術が投入されていない分、価格も抑えられていると考えられます。
なお、プリンスも2018モデルまではこの歴史の継承モデルでしたので、ラザにその面影を感じる方も少なからずいらっしゃるはずです。
セカンドグレードらしい価格設定になっている
今回は2019シーズンでフルモデルチェンジとなったピナレロ・新プリンスについて、主に価格面を検証しました。
フラッグシップを世に広め、なおかつユーザーの裾野を広げるという、セカンドグレードの本分は守られていている価格と言ってよいでしょう。
決して手頃な価格とは言えませんが、グッと現実味のある価格設定にもなっており、検証からは好印象ととれます。