ロードバイクのレースに「ヒルクライム」という競技があります。
山登りに特化したレースですが、乗り手もパーツも、全てが軽量だと有利と言われています。
その中でも、重要な要素となるホイールについて、どんなものがヒルクライム用として最適なのかを考えていきます。
ロードバイクのヒルクライムとは
まず「ヒルクライム」と聞いても、ピンとこない方もいらっしゃると思いますので、簡単にご説明させていただきます。
ヒルクライムのスペルは「hill climb」、直訳すると「丘を登る」となります。
自転車の世界では、山や丘陵の上り坂に設けられたコースを、駆け上がるタイムを競う競技のことを、ヒルクライムと呼びます。
主にロードバイクを使用することが多いですが、大きな大会になるとMTBの部もあります。
標高差は1,000~1,500m、全長20~25kmで、ロードレースとしては短い距離の勝負になります。
重力に逆らって進むことになるので、小柄で軽量な人が活躍しやすい環境にあります。
また、車体やパーツも軽いほうが断然有利となるので、ヒルクライム用と言われるのは、フレームやホイールでも軽量なものになります。
さらには、平坦のロードレースと比較すると、個人の脚力の差がストレートに出るので、集団走行になりづらい面があります。
集団での駆け引きや、他者との接触の可能性が低くなるので、レース初心者の方が目指しやすい競技です。
ロードバイク用のホイールは絶対に軽さが正義なのか?
ロードバイクを表現する際に「軽さは正義」という言葉がよく使われますが、ヒルクライムには、正にこの言葉がぴたりと当てはまります。
前述した通り、重力に逆らって進むこと、距離が短いこと、そして平坦路を走るようなスピードではないことが理由になります。
一般のロードレースでは、平坦路を一定の速度で走る高速巡航性が重視されます。
高速巡航性というのは、速いスピードを維持するという意味なので、いかにしてスピードを落とさないかがカギです。
その意味では、重量が軽すぎると不利になるのです。
例えば、野球の硬式用のボールと、子供が遊ぶビニールのカラーボールを、同じ力で転がしたとします。
最初は重量が軽いカラーボールが勢いよく転がっていきますが、最後まで転がり続けるのは硬式ボールです。
重いものはスピードに乗るのも遅いですが、落ちるのも遅いので、スピードの維持に長けているのです。
短い距離を速く走るなら、フレームやホイールはヒルクライム用と言われる、軽量なものを選ぶべきでしょう。
しかし、一定の速度をキープすることが重要な場合は、「軽さが正義」とは言い切れない部分もあります。
ヒルクライム用にはリムの重量が軽いホイールが良い
今回はホイールがテーマなので、ここからは、どんなホイールがヒルクライム用と言えるのかをご説明します。
ここまでの話でもお分かりになったかと思いますが、軽量であることに越したことはありません。
ただし、ヒルクライムはロードバイクを背負って登坂する競技ではなく、走らせるものです。
そのため、重要なのは、手で持った際の重量ではなく、走りの軽さです。
坂の上りやゼロストップからの漕ぎ出しの軽さは、ホイールの外周部分「リム」の重量が大きく関係してきます。
その意味では、カーボンリムが断然有利となります。
前後セットで1,000gを切ってくるようなものまでありますので、さすがに重量で比較するのは、スチール製がかわいそうです。
しかし、カーボンリムのホイールは高価です。
最低ラインでも10万円台の後半からで、30万円~40万円のものが珍しくもありません。
さすがに、これからヒルクライムに取り組もうとしている人に、これをおすすめですとは言えません。
そのため、今回は、できるだけ軽量なアルミリムのホイールをご紹介していくことにします。
ヒルクライム用のホイールは剛性の高低が重要
ヒルクライム用のロードバイクホイールを検証していますが、重量と共に重要な要素は「剛性」です。
剛性は、物質の変形しにくさを表す言葉で、高低で表現されます。
ホイールは、上から乗り手によって加重されるので、多かれ少なかれ、たわみます。
ホイールがたわんでしまうと、ペダルを漕いだ力が逃げてしまい、動力がしっかりとホイールに伝わらなくなります。
特に、登り坂では立ち漕ぎなどもしながら、ペダルに大きな力を掛けます。
このときに、たわみが大きいと、漕いでも漕いでも進んでいかないホイールになってしまいます。
ですから、ヒルクライム用のホイールは、ある程度の剛性の高さも要求されます。
縦方向からの加重に対する剛性の高低は、いくつかの要素で決まります。
まずはリムの硬さですが、硬いものは変形しづらいので剛性は高くなります。
リムが硬いとクッション性がないので衝撃吸収性が悪く、地面からの振動がダイレクトに伝わります。
この振動は、ボクシングのボディーブローのようにジワジワ効いてきますので、長時間乗っていると疲れが溜まります。
しかし、ヒルクライムはスプリント勝負なので、衝撃吸収を考えるよりは剛性の高さ優先で良いでしょう。
あとは、アルミスポークのホイールは剛性が高くなります。
ほとんどのアルミリムホイールは、予算の関係もありスチール製のスポークですが、一部の上位モデルではアルミスポークを採用しています。
ただし、アルミリムにアルミスポークの組み合わせは硬すぎてしまうので、ある程度脚力が付いてきてからの選択になるでしょう。
おすすめのヒルクライム用ロードバイクホイール①
それでは、ここからあくまでも個人的にではありますが、ヒルクライム用と思われるホイールをご紹介していきます。
【シマノ:WH-9100 C24】
シマノのロードバイク用コンポのハイエンドモデルである、「デュラエース」グレードのアルミリムホイールです。
全体の重量も軽量ですが、リムが前後計で400g(リムテープ含まず)を切っています。
これはアルミにカーボンをラミネートしているからで、15万円を超えるアルミリムでは、かなりの高級品です。
しかし、さすがに漕ぎ出しの軽さはお墨付きですし、9100系にモデルチェンジしたところで、剛性が上がったという評価もあります。
シマノはリムが柔らかいことで有名なので、この評価はヒルクライマーにとっては朗報でしょう。
【マビック:キシリウム・エリート】
シマノのデュラエースは、メーカーのハイエンドモデルですが、こちらはミドルクラスのホイールです。
同じキシリウムでも「プロ」の方をヒルクライム向きとする人が多いですが、「プロ」はアルミスポークなので、あえてエリートを選びました。
何と言っても特筆ものなのは、リムの軽さです。
410g前後ですので、デュラエースにリムテープ分を入れれば、ほぼ同じくらいの重量です。
また、リムが頑丈で硬いので、ヒルクライムに適した剛性になっています。
これでいて10万円を切っていますので、コスパも十分保証できます。
おすすめのヒルクライム用ロードバイクホイール②
ヒルクライム用のおすすめロードバイク用ホイールは、まだまだあります。
【フルクラム:レーシング・ゼロ】
一説には、アルミリム最強という声もあるホイールで、アルミスポークを採用しています。
クラス最軽量とまではいきませんが、とにかく反応が凄いので、漕いだら漕いだだけ前に進む感覚は異次元です。
剛性が高く硬すぎるという声も多いので、脚力に自信がない人は避けるべきかもしれません。
しかし、慣れてくれば、ヒルクライムにおいて、これほど強い味方になるホイールも他にはないでしょう。
【イーストン:EA70 SL 】
イーストンは、リムが強いのとスポーク本数が多いので、剛性が高いです。
また、イーストンは金属フレームのチューブを製造しているメーカーなので、アルミを軽量に仕上げる技術が高く、リムは軽いです。
10万円を切るホイールとしては、ハブの評価も高いので、巡航性を鍛えたい人にも向いているホイールです。
ヒルクライムはレースだけではありません
ヒルクライムは、いわゆる自転車を使った「登山」ですから、何もレースに限ったことではありません。
また、山や丘でなく近所にある勾配のキツイ坂道を登るのも、一種のヒルクライムです。
ですから、特に今後レースを目指さないという方でも、坂を登るというシチュエーションに備えておくことは損ではありません。
もし、今の自分の用途で坂を登ることが多いような人は、ヒルクライム用のホイールを一考してみてください。