価格以上の価値はあるか?メリダの29er「ビッグナイン 20」

MTBやロードバイクなどのスポーツバイクは嗜好品という側面もあるので、「安かろう悪かろう」という風潮が少し見え隠れします。

今回は、「果たして本当にそうなのか?」という疑問から、メリダのMTB「BIG.NINE(ビッグナイン)20-MD」を取り上げてみます。

かなり安価なため、評価もまちまちですが、買いなのかどうかを検証していきます。

メリダの名を世界に広めたのはMTB!

メリダは自転車大国台湾に籍を置くビッグメーカーで、1972年に創業されました。

世界各国のメーカーからのOEM(ブランド先受注生産)を受けるかたわら、自社ブランドの開発にも力を入れてきましたが、最初に脚光を浴びたのは今回の主役「ビッグナイン20-MD」などを含むMTBです。

MTBの本場アメリカメーカーのOEMも多く手掛けており、キャノンデールやシュウインが会社組織を失いブランド化し、メリダとの関係が切れてしまったこともきっかけで、自社ブランドを立ち上げたという話もあります。

また、世界でも珍しく生産が難しいとされたマグネシウムフレームの生産を行っていたこともあり、金属の高い成形技術も認められ世界をリードしていきます。

MTBでは早い時期からプロチームにも機材を提供しており、オリンピックの金メダリストや、世界選手権を複数回も制するようなチャンピオンクラスの選手にも提供されています。

現在もMTB界の女帝と呼ばれる「ガン・リタ・ダール」率いる、「Team MERIDA Gunn-Rita」と共に世界のレースシーンをけん引する存在です。

メリダは2019モデルからビッグナイン重視の体制となる!

ここからは、メリダのMTBのラインナップについてお話しします。

メリダのMTBの主力は、ハードテイルのXC(クロスカントリー)モデルである、「BIG.NINE(ビッグナイン)と「BIG.SEVEN(ビッグセブン)」です。

ハードテイルはサスペンションがフロントにしかないもので、スピードレースであるクロスカントリーの定番です。

ビッグナインは29インチのホイールを採用しているモデルで、ビッグセブンは27.5インチとなります。

2019モデルは2018モデルに比べ大幅な変更点があり、ビッグセブンのカーボンフレーム車が廃盤となり、アルミフレームのみとなりました。

詳細は明かされていませんが、こういったラインナップの大幅な変更は、機材を提供しているチームのオーダーの可能性が高いです。

カーボンフレーム車はチームが使用していたモデルですので、クロスカントリーにおいては27.5インチバイクの需要が、チームにはなくなったと推測できます。

そうなりますと、がぜん注目が集まるのがビッグナインということになり、それは最廉価モデルである「20-MD」も同じことです。

メリダは「ビッグナイン20-MD」のような29erを尊重してきた

前項では、メリダのチームがクロスカントリーにおいて、29インチに絞った可能性があるとお伝えしました。

29インチのMTBは「29er」という呼称もあるように、MTB乗りにとっては特別な存在でした。

MTBで一番大口径の車輪になりますので、進みがよくスピードが出ることから、スピード傾向が強いクロスカントリーの主力になりました。

さらに、クロスバイクが広まるまでは、その走破性の高さとフラットバーハンドルからくる安定性の高さで、街乗りスポーツバイクの代表格でもありました。

その名残りがあるのが「ビッグナイン20-MD」であり、その簡潔な装備からしても、気軽に普段使いに向くモデルです。

クロスバイクの普及や、スピードと小回り適性のバランスに長けた27.5インチの台頭で29erは下火になりますが、メリダは以前から29erを尊重しており、継続して多くの機種をラインナップさせてきています。

そのため、今回のラインナップの変更が筆者のもくろみ通りチームオーダーのものであるならば、メリダの進んできた道が間違っていなかったことの証明と言えるでしょう。

メリダ・ビッグナイン20-MDのインプレ評価

それではここから、メリダの「ビッグナイン20-MD」について詳しくお話ししていきます。

2019モデルの20-MDは71,172円(税込)で、ビッグナインシリーズで一番価格の低い機種になります。

上位モデルと明らかに違う部分が複数あるので、この価格になっているわけですが、筆者の知人の話や、インプレ情報をまとめますと、「安かろう悪かろう」の言葉は全く当てはまりません。

フレームのアルミは上位モデルとは違うと聞いていますが(メリダは素材を明確にしません)、加工方法は同じであり適度な剛性と強度が確保されています。

そのことでは、インプレ情報にシャキッとした反応が楽しめるという評価があり、MTBしての本分は保たれています。

また、フロントサスペンションは、トラベル量100㎜で、必要のないときにボタンひとつでサスペンションの動きを止める「ロックアウト」の機能も付いており、これも上位モデルと同じ仕様です。

付属パーツはこの価格なので正直それなりのレベルですが、よほど高レベルのレースを目指す以外は必要十分で、山に入っての散策(トレイル)や、普段使いであれば何の支障もありません。

また、パーツは自分好みにカスタムしていく段階で交換をしていくものなので、最初からそこまで神経質にならなくてもよいでしょう。

ビッグナイン20-MDの「MD」は機械式ディスクブレーキという意味

前項ではメリダ・ビッグナイン20-MDが、決して安かろう悪かろうではないということをお伝えしました。

ただ、ひとつだけもったいない点を挙げれば、ディスクブレーキが機械式であることです。

ディスクブレーキには油圧式と機械式があり、現在の主流は油圧式で、ビッグナインシリーズも20-MD以外は全て油圧式です。

ボタン一つで自動車をジャッキアップしてしまうほどのパワーを持つ油圧を制動力とするので、今までの自転車のブレーキとは比べものにならない強い制動力があります。

ワイヤーを引いて作動させる機械式も、従来のリムブレーキに比べれば制動力は強いですが、油圧式にはかないません。

そして、油圧式とは制動方法が違いますので、機械式との互換性はありません。

そのため、機械式から油圧式に交換する場合は、本体からレバーまで一式の交換となり、工賃を含めると多くの費用が掛かります。

もし、油圧式を求めるのであれば上位グレードを視野に入れることも考えた方が良いでしょう。

ビッグナイン20-MDのライバルは?

ここまで、メリダのビッグナイン20-MDを確認してきましたが、MTBの本分であるトレイルライドも当然ですが、街乗り車としての色合いも濃いモデルだともお伝えしました。

ロックアウトの機能は平坦の舗装路がメインとなる場合に重宝しますし、太めのタイヤは悪路をものともしませんので、砂利道や未舗装路なども構わず走ることができます。

また、機械式ではありますが、ディスクブレーキは路面状況や天候に制動力が左右されにくいので、毎日乗るような通勤・通学にも適しています。

しかも、29erはロードバイクやクロスバイクと同じ口径の車輪なので、ある程度のスピードも期待でき巡航性も高いので、ママチャリなどとは比べものにならないほどの距離をこなすこともできます。

このような用途にも適しているということになると、クロスバイク的な要素が強くなりますので、クロスバイクの購入を考えている方も視野に入れる存在かもしれません。

実際にメリダのクロスバイクを確認しますと、機械式ディスクブレーキを装備した「GRAN SPEED 80-MD」や「CROSSWAY 200-MD」は、ビッグナイン20-MDと同じような価格帯ですので、比較対象になる存在かと思います。

ビッグナイン20-MDは価格以上の働きをしてくれるはず

今回はメリダのMTB「ビッグナイン20-MD」をご紹介しました。

結びに当たっては、冒頭で「買いなのか?」と記しましたので、その答えを出さなくてはいけませんね。

筆者の独断ですが、機械式のディスクブレーキであることを納得するならば、買いというより、むしろお買い得だと思います。

MTBの本分であるトレイルも、普段使いの街乗り車としても使えますので、MTBが初めてという方にもおすすめです。