今やどのメーカーもラインナップには欠かせない存在になっているのが、空力性能を重視した「エアロロード」です。
大レースでも次々と結果を残しておりその勢いは留まるところ知らずですが、その性格上カーボンフレームが主となります。
そのため、安価に手に入るものではないというイメージも定着している中で、メリダのリアクト400は希少なアルミフレーム車です。
そこで今回はインプレなども参考に、リアクト400を検証してみます。
エアロロードとは?
「エアロ」とは、空気や空中などの意味を持つラテン語「aero(アエロ)」の英語読みで、単体で意味を持つ言葉ではなく、名詞の頭について意味を持たせる接頭語です。
自転車においてのエアロは、空気力学という意味の「エアロダイナミクス」の略になりますので、エアロロードは空気力学に基づいたロードバイクということになります。
もう少し簡単に言いますと、何を置いても空気抵抗をいかに少なくするかが優先されており、スピードに特化したバイクということです。
エアロロードが栄えてきていることは他のモデルを見ても明らかで、翼断面のダウンチューブや平べったいシートステイなどの空力学に基づく技術が、エアロロード以外にも次々と投入されています。
そんな中でもスピードに特化するエアロロードは、レース志向が強くなり、フレーム素材はカーボン、専用のハンドルやシートポストに、リムハイトの高いカーボンリムのホイールが合わせられますので、高額になるのが必至です。
プロ仕様は軽く100万円を超えますし、インプレ情報からも30万円を下まわる完成車を見つけるのにひと苦労していることが伺えます。
そうなってくると、今やホビーライダー専用という扱いのアルミフレームは出番が少なく、メリダのリアクト400はとても貴重な存在です。
硬いというインプレが多数!それがアルミフレームを妨げた
エアロロードは前項でも触れましたが、翼断面のダウンチューブや偏平形のシートステイ、また剛性と軽量を両立させるための「バテッド」など、複雑な形状のチューブを成形しなければいけません。
そのため、成形に自由さがあるカーボンでなければ対応できないということも、エアロロードがほとんどカーボン車という要因の一つです。
特にエアロロードはパワーロスが厳禁で、剛性を高くして応力の伝導率を高めますので、昔のインプレ情報などからは「硬い」のオンパレードで、乗り心地も悪いというのが定説でした。
まして、カーボンよりも伝導率の高いアルミでは、剛性を高めるとなおさら硬さが強調されてしまい、一般ライダーの脚力では持て余してしまうことになり兼ねません。
また、前項でも触れましたが、アルミフレームがプロレースから撤退して久しい現代は、アルミのレースモデルの需要は著しく低下しています。
一時期は「ジャイアント」や「トレック」など多くのメーカーが扱っていたアルミのエアロロードも、そういった理由が重なり、今では「メリダ・リアクト400」やスペシャライズドの「アレー・スプリント・コンプ」など、限られたものになりました。
メリダがリアクト400を継続できる理由とは
前項ではアルミエアロロードの厳しい現状をお伝えしましたが、今後は分からないもののメリダはまだラインナップに「リアクト400」を残しています。
これは需要があるからに他ならず、そこにはメリダの高い技術が確実に関わってきます。
メリダには独自の「トリプルバテッドハイドロフォーミング」という、カーボン並みの自由さでアルミを成形する技術があります。
特に1本のチューブ内に3か所厚みの違う部分を作る「トリプルバデッド」は、強度が必要な溶接部分などは厚くして、必要のない中央部分は薄くするという画期的な技術です。
これによって均一な厚さにするよりは軽量になりますし、剛性のバランスが保てるので硬すぎないフレームにすることができます。
また、「NACA FASTBACK」という、後ろの端が斜めにカットされたような断面になる形状のチューブも成形しています。
詳しい科学的なことは分かりませんが、これも剛性と軽量化の両立に大きく貢献しています。
エアロロードはそれでも他のモデルに比べれば、太く厚いチューブが必要なので、重量は嵩みます。
しかし、リアクト400は、オールラウンドモデルの「スクルトゥーラ400」との比較で、同じ50サイズでは300g重いだけです。
昔のインプレ情報などを参考にすると、1㎏は違っていてもおかしくなかっただけに、大きな進歩が伺えます。
メリダ・リアクト400のインプレ~筆者の試乗インプレ
それではここで、筆者が試乗会で乗らせて頂いたメリダ・リアクト400のインプレを記させて頂きます。
筆者が試乗したコースは未舗装のダートや割とアップダウンのあるコースで、エアロロードにはやや過酷な条件と思いますので、それを踏まえて読んでください。
まず、漕ぎ出しは至ってノーマルな感じでそこまでの重さは感じませんでしたが、硬さは感じましたので、特に慣れるまでは早めに脚に来る可能性はあります。
しかし、アルミということもあり、踏んだら踏んだだけ前に進んでくれる、踏み応えのある楽しいフレームです。
また、坂の下りで脚を止めるとフレームが身体を引っ張ってくれるような「伸び」を感じましたので、巡航性も高いですね。
坂の上りでは少しもっさりとした感じもありますし、重さを感じる部分もありましたが、ホイールがヘビー級なのでその影響もあるかと思います。
未舗装のダートも少しだけですが走ったところ、従来のエアロロードのイメージよりは地面からの突き上げは感じませんでした。
のちほどご紹介しますが、他の情報のインプレでも言われている通り、乗りやすさや安定感という味つけもされているようなので、それが衝撃吸収にも繋がっているのでしょう。
エンデュランスモデルではないので乗りやすいとまでは言いませんが、必要以上に身構えることもなく、キャリアの浅い方でも挑戦できるバイクという印象でした。
メリダ・リアクト400のインプレ~まとめ
前項では筆者の試乗インプレをお伝えさせて頂きましたが、他の方のインプレ情報も確認しながら、もう少しメリダ・リアクト400を掘り下げてみます。
インプレで目立つのは、坂の上りでのバイクの動きについてのことです。
筆者も感じたもっさり感や重さもそうですが、左右に振るようなダンシング(立ち漕ぎ)に関してやりにくさが指摘されています。
これは直進安定性を高めるために、ヘッド周りの剛性が高くハンドルに少し遊びがないというのが要因かもしれません。
神経質になるほどピーキーではありませんが、気になる方は試乗などで自分とのフィーリングを確認しておきたい部分です。
また、エアロ形状のアルミ車としては軽い方ですが、一般的なロードバイクよりは重いので、加速するまでに時間が掛かるというインプレが多くなります。
前項でお伝えしたように踏み応えがあり、こちらが頑張って漕げば期待に応えてくれるのですが、加速時はより以上の頑張りが必要ということです。
メリダ・リアクト400はホイールを交換したい
ここまでメリダ・リアクト400のインプレをご紹介しましたが、本体以外ではホイールに対する低評価が目立ちます。
リアクト400の価格は約17万円(税込)で、この価格帯の完成車に付属するホイールは高評価を得るのは難しいです。
ホイールほど価格と性能がきれいに比例するものもなく、安価な完成車には安価なホイール=低グレードとなるのは致し方のないところです。
そのため、購入してすぐに交換する方も少なくないですが、ロードバイクに慣れて相応の脚力もついてくると、おのずと交換したくなるものでもあります。
その際ですが、交換して効果を実感できなくては意味がありませんので、最低でもミドルグレード以上のホイールが望ましいかと思います。
重量にして1400~1550g前後、価格では5~9万円といったところをターゲットにすると、よいホイールが見つけやすいです。
筆者個人的には、リアクト400が硬めのフレームなので、ホイールも硬めでレーシーなものにこだわって組み合わせてみたいですね。
その意味では、フルクラムの「レーシング・3」と、マビックの「キシリウム・エリート」が双璧かと思います。
ホビーレースの会場でこれらのホイールを履いているバイクをよく見掛けるように、レースでの実績もありますので、自信を持っておすすめします。
メリダならアルミのエアロロードという選択も大いにあり!
今回は、メリダのエアロロード「リアクト400」を特集しました。
今では希少な存在になってきたアルミのエアロロードだけに、インプレ評価も様々です。
ただ、カーボンとアルミという決定的な素材の差は埋められませんが、リアクト400の空力性能は、メリダの高い成形技術により、カーボンモデルに限りなく近い位置まで来ているのは確かです。