トレックのクロスバイクはスポーツ性が強い機種が多いですが、クロスバイク全体的に見れば、ママチャリの延長線上にいる存在でもあります。
そのため、機能性も重視されている分、慣れてくるとスピードに物足りなさを感じてきます。
そうなると改造も考えたくなるわけですが、クロスバイクのスピードアップは可能なんでしょうか?
今回はそこに特化して、クロスバイクの改造を考えてみます。
クロスバイクの改造はスピードアップ目的が多い
クロスバイクの改造についての記事やインプレを読んでいると、多くの方はスピードアップ目的であることが分かります。
クロスバイクはスポーツバイクの入門編的存在なので、ママチャリと比較されることも少なくありません。
その意味では、ママチャリとは比べものにならないほど車体が軽く、重いギアを装備していますのでスピードは段違いです。
個人の脚力の違いもありますが、平均時速で約10キロ、差があると考えてよいでしょう。
しかし、クロスバイクはスピードに限界があります。
クロスバイクで走っている時に、颯爽とロードバイクに追い抜かされた経験はありませんか?
そんな時に上には上がいることを痛感し、スピードが欲しいと思うようになることもあるわけです。
例えば、トレックのクロスバイク「FX」シリーズは、いかにも今流行りのロードバイクの形状をしています。
一見すればロードバイクと遜色ないスピードが得られるようですが、実際にはそうはいきません。
そこで次項からは、「何がロードバイクと違うのか?」「クロスバイクにはどのような改造が向いているのか」ということをテーマに、お話させて頂きます。
クロスバイクとロードバイクの決定的違いとは
まずクロスバイクとロードバイクの違いからお話していきますが、決定的と言えるのは重量です。
トレックのロードバイクとクロスバイクの最高級モデル同志を比較しますと、実に4㎏以上もロードバイクの方が軽くなります。
軽い物の方が空気抵抗が少ない分加速力に優れますので、スピードは出るようになります。
そして、この重量差で大きなウエイトを占めるのが「ホイール」です。
ホイールの回転力によってスピードが決まりますので、当然、軽量で回転しやすい方がスピードは上がります。
ホイールは重量が軽くなればなるほど高い技術が必要なので、その分、コストが掛かります。
そのため、全体の価格が低めのクロスバイクには、ホイールにコストを掛けられませんので、軽い物は使用できません。
上記の最高級モデルでも、ホイールだけで1㎏以上の重量差があります。
したがって、クロスバイクをスピードアップ目的で改造したい場合は、この重いホイールを何とかしたいわけです。
クロスバイクのホイールをグレードアップさせる可能性は?
前項ではクロスバイクのスピードアップには、ホイールの改造をしたいという話をしました。
しかし、いきなり覆すようで恐縮ですが、クロスバイク用の軽量ホイールは、ほぼこの世には存在しません。
と言いますのも、クロスバイクのホイールはトレックもそうですがほとんどが手組みホイールであり、手組みは構造上、軽量にはできないからです。
ホイールにはパーツ全てが専用設計の「完組み」と、既存パーツの寄せ集めである「手組み」があります。
専用設計の完組みは、軽量でもしっかりと剛性が確保できる設計になっているので、より軽くすることが可能です。
一方、手組みはパーツの連動性がないので、軽量なものだけで組み合わせてしまうと、グニャグニャになり、車輪として成立しないレベルになってしまいます。
そのため、ある程度重量のあるリム(外周部分)に、スポークの本数を多めにして剛性を維持するので、どうしても重量が嵩んでしまいます。
こういった経緯もありクロスバイク専用のホイールはレベルの上げようがないので、改造も難しくなります。
同じ外径なので、理論上はロードバイク用の完組みホイールが使用できるのですが、「エンド幅」の問題で多少細工をしないとそのままでは使用できません。
いずれにしてもクロスバイクにとってホイールの改造は、とてもハードルの高いものになります。
トレックのクロスバイクはタイヤの改造でスピードアップ!
前項で「クロスバイクはホイールの改造が難しい」とお伝えしましたが、同じ車輪を形成するタイヤも、スピードとはもちろん無関係ではありません。
タイヤはホイールの外径に合わせる必要がありますので、大きさは変えられませんが幅(太さ)は変えられます。
しかもホイールとは違いロードバイク用も制約なしで使用できますので、軽量で高性能なタイヤを履くことが可能です。
トレックのクロスバイクのタイヤは、2018年モデルより全て32c(32ミリ)以上になりました。
これはママチャリよりもわずかに細い程度なので、車体が安定しますし、太いタイヤはクッション性があるので乗り心地がマイルドで快適です。
しかし、その反面、重量が嵩みますので空気抵抗が大きくなり、スピードは抑えられます。
したがって、スピードアップ目的の改造はタイヤを細くすることになります。
現在のクロスバイクの主流は28c、ロードバイクは25cです。
耐パンク性に優れたタイヤであれば25cでもパンクしやすくなるということはありませんが、安定性とのバランスを考えれば28cがよいかと思います。
トレックのクロスバイクでドロップハンドルへの改造は?
今回はクロスバイクとロードバイクの違いから、クロスバイクのスピードアップを目的とした改造の可能性について考えています。
クロスバイクとロードバイクのスピード差は、乗車姿勢の違いにも表れています。
自転車の空気抵抗の80%以上は乗り手に掛かると言われます。
それをいくらかでも低減させるために、身体に風が当たる面積を減らそうとするのが前傾姿勢です。
スポーツバイクはハンドルよりもサドルを高い位置に持ってくることにより、おのずと前傾姿勢になるように設計されています。
そして、ハンドルとサドルの位置を遠ざけることで、さらに前傾姿勢を深めることができます。
その代表例がロードバイクのドロップハンドルです。
通常事に握るブラケット部分はフラットバーよりもだいぶ前に突き出ていますし、下ハンはかなり低い位置になりますので、相当に前傾は深くなります。
ですから、このハンドルをクロスバイクに利用して、スピードアップを図ろうという考え方もあります。
しかし、クロスバイクをドロップハンドル化するのは、想像以上に難しいことです。
シフトやブレーキレバーを専用の物に交換しなければなりませんし、トレックのクロスバイクでもブレーキ本体はほぼ交換です。
シフトとの組み合わせによっては、フロントディレイラーの交換まで考えられます。
費用も手間もかかり過ぎる改造のため、簡単におすすめとは言えません。
トレックのクロスバイクのハンドル改造はこれがおすすめ
クロスバイクのドロップハンドル化はコストや手間の面で安易におすすめはできませんが、得られる効果は捨てがたいところです。
そこでご提案させて頂きたいのは、疑似ドロップハンドル化が可能な「バーエンドバー」です。
フラットハンドルに前に突き出る形になるように取り付けて、持ち手を前方に持ってくることができるアイテムです。
また、水平方向ではない持ち手があることで疲労の分散ができるので、手の疲れを軽減する効果もあります。
トレックのクロスバイクにはハンドルの端に衝撃吸収材が埋め込まれている、特殊なハンドルを使用した機種もあります。
その場合は、「バーエンド」というアイテム名にこだわることもありませんので、トライアスロンの「DHバー」のように、ハンドル中央に付けても差し支えありません。
製品自体も安価ですし、工具1本あれば取り付け可能ですので、手軽な改造としておすすめです。
まずは最小限の手間で済む改造から行ってみる
今回は、クロスバイクのスピードアップを目的とした改造について考えてきました。
車輪がスピードに与える影響が大きいのでホイール交換を考えたいのですが、今回お話した諸事情でお分かりのように、難しい面があります。
そこで、タイヤを細くすることをご提案しました。
また、ハンドルもドロップハンドルにするのは大掛かり過ぎますので、簡易的な改造であるバーエンドバーをおすすめしました。
いずれも、最小限の手間で効果は絶大なので、ぜひお試しいただければ幸いです。