トレックのクロスバイク「Zektor(ゼクター)」は、フレーム形状はロードバイクに近いものですが、太いタイヤなどでMTB感もある、非常に興味深い1台です。
クロスバイクはロードバイクとMTBの中間的存在ですから、その意味ではクロスバイクらしさが強いとも言えます。
今回は、そんなゼクターの魅力に迫ってみましょう。
トレックのクロスバイク「ゼクター」の特徴
トレックの「Zektor(ゼクター)」は日本では2017年から販売されているモデルですが、ショップでも既に人気上位の機種になっています。
カテゴリーはクロスバイクですが、トレックの細かいジャンル分けでは「アーバン&コミューター」となっています。
アーバンは「都会的な」、コミューターは「通勤者」という意味ですので、都心のビル街を颯爽と駆け抜ける通勤用自転車といったイメージでしょう。
通勤・通学という目的で作られているので、天候や路面状況に左右されない仕様を意識している点が見られます。
また、長距離走行を視野に入れなければなりませんので、フレーム形状やタイヤに振動吸収性の高さがうかがえます。
ゼクターには2018年現在、「Zektor2」「Zektor3」の2グレードあり、コンポやブレーキのレベルが若干「3」の方が上回っています。
トレックのゼクターはディスクブレーキ搭載
それでは、トレックのクロスバイク「Zektor(ゼクター)」を詳しく見ていきましょう。
先述通り、コンセプトは通勤・通学用ですので、全天候型で、あらゆる路面状況に対応するという姿が見られます。
まずは、ディスクブレーキです。
MTBでは主流のブレーキになっていますが、自動車の前輪にも採用されているように強い制動力が特徴です。
通勤・通学には荷物を載せることが付きものですから、強い制動力は大きな味方になります。
また、車輪の外周で制動されるリムブレーキは、地面と近いので雨水や泥跳ねによって制動力が落ちます。
その点でディスクブレーキは車輪中央のハブで制動が行われるので、地面から遠く、跳ね上がってくる心配がありません。
また、ゼクターは「油圧式」のディスクブレーキなので、レバーを軽く引くことができます。
一般的なクロスバイクの「Vブレーキ」では指3~4本で掛けるフルブレーキを、指1本分で可能にするほどです。
さらに、油圧式のディスクブレーキはフルード(作動油)の寿命が長く、数年間交換しなくても使用できる場合があります。
通勤・通学は毎日のことですから、消耗品の持ちがよいのも大いに助かりますね。
ゼクターは「ホリゾンタルスタイル」のクロスバイク
通勤・通学路は人それぞれ様々で、もちろん舗装された平坦な道だけとは限りません。
どのクロスバイクもロードバイクに比べれば悪路を走行する想定はされていますが、特にトレックのゼクターはそこを意識しています。
まずフレーム形状が、「ホリゾンタルスタイル」になっている点です。
フレーム上端のトップチューブが、地面とほぼ水平に取り付けられているのがホリゾンタルの大きな特徴です。
ホリゾンタルスタイルはトップチューブが長くなる分、しっかりと振動を吸収できます。
振動を吸収してくれるということは、長時間乗っていても身体に疲労がたまりにくくなるので、ロングライド向きになります。
あとは、あまり注目されることは少ないのですが意外と重要なのが、飲料用のボトルが付けやすい点です。
自動車と違い、ハンドル付近に飲料を置いておくわけにはいきませんので、自転車の場合はダウンチューブにボトルケージを付けて、そこに飲料のボトルをはめ込みます。
そうなるとホリゾンタルスタイルの場合は、フレームの内側の三角形が大きいので、長いボトルでも出し入れがしやすいです。
特に夏場などは、道中での水分補給は不可欠とも言えますので、これは大切な要素です。
トレックのクロスバイクは全体的にタイヤが太め
クロスバイクの振動吸収性はフレームも重要な要素ですが、それ以上にタイヤが大きなカギを握ります。
タイヤは太くなればそれだけ中に入る空気量が増えて空気圧も下がりますので、クッション性が強まります。
クッション性が高くなれば地面からの衝撃を吸収してくれますので、乗り心地が良くなります
一方、ロードバイクなどの細いタイヤは空気量が少ない分、高圧になりますので、ガチガチに硬くなり逆に振動を伝えやすくなってしまいます。
その分、地面に対する抵抗は少なくなりタイヤがよく転がるので、スピードが出ます。
反対にクッション性があるタイヤは、地面に対しての抵抗力は強くなるので、転がりが悪くなりスピードは少し落ちます。
ですからこれは、自分の用途や目的によって適した太さがあるということで、優劣の問題ではありません。
トレックのゼクターは、しつこいようですが通勤・通学用に向いていて、スピードよりは乗り心地や安定感を重視するので、太めのタイヤが採用されています。
もっともこれは、トレックのクロスバイク全体の傾向であり、2018年より32c(32ミリ)以下の太さのタイヤは採用されなくなっています。
また、ゼクターのタイヤには、車のヘッドライトなどが当たると光る反射材が貼られています。
自動車と自転車の接触事故の原因で多いのは、車が自転車の存在に気付かないことです。
その点で、自分の存在を相手にアピールすることはとても重要なので、これは大変ありがたい機能です。
ゼクターのギア比は一般的なクロスバイクよりも重い
クロスバイクは他のスポーツバイク同様にギアが多段化されており、シーンによってスピードに変化を付けることができます。
一般的なクロスバイクはフロントが3速ですが、トレックのゼクターはロードバイク仕様になっているので2速です。
一番軽いギアを省いて2速にしていますので、重いギア比となり比較的スピードが出やすい仕様になっています。
しかし、その分リアに34Tという軽いギアが用意されているので、坂の上りで苦労するということはなさそうです。
ショップ系のブログには試乗してみた上での走行感が記載されていますが、ゼクターは時速40㎞/h程度までは楽に加速できるという評価です。
それであるならば、少しだけ軽いギアを犠牲にして、中間のギアを充実させた方がよりスポーティな走りが実現できます。
そのため、ゼクターのリアの歯数構成は「11-34T」ですが、よほど勾配のキツイ激坂でもない限り、「11-28T」くらいにして、よりスピード感を味わうのもよいかもしれません。
トレック・ゼクターはこんな方におすすめ
ここまでトレックのクロスバイク「ゼクター」に付いて確認してきましたが、最後にどんな人に向くのかを筆者の主観も交えてお話しておきます。
トレックがせっかく「アーバン&コミューター」としているので、通勤・通学に最適なことは言うまでもありません。
泥除けやキャリアを後付けできる台座もありますので、より快適に通勤して頂けます。
また、ところどころに長距離に向く仕様が見られますので、サイクリングや、100キロ程度のツーリングにも十分対応できます。
そして、将来的にはロードバイクに乗りたいという方の、スポーツバイク入門編としてもおすすめしたいですね。
クロスバイクとしての本分である機能性と安定感は失わずに、ここまでスポーティーさを出している機種も他にあまり例を見ません。
したがって、今後本格的にロードバイクを始める準備としても、十分に高い走行性がありますので、満足できるはずです。
ゼクターは用途が広い!
今回はトレックのクロスバイク「ゼクター」に付いてお話しました。
触れ込みは通勤・通学用ですが、特に用途を狭めることもなく、街乗りからツーリングまで幅広く使えるクロスバイクです。
見た目が昔ながらのホリゾンタルスタイルで、それもファンを引き付ける要素の一つです。
自分なりのカスタムもしやすい仕様ですので、色々と試してみるのも面白そうです。