近年トレックはクロスバイクに力を注いでおり、それにユーザー人気が追いついて不動の地位を確立しつつあります。
2017年の定番2モデルの製品名変更により、その傾向にますます拍車が掛かっています。
その定番の内の「ds」シリーズは、サスペンション付きのクロスバイクとして一線を画す存在です。
中でもエントリーグレードの「8.3ds」は人気が高く、現在も後継機が定番化されてその流れをしっかり引き継いでいます。
トレックのクロスバイク「8.3ds」とは
クロスバイクはMTBとロードバイクの中間的な存在という位置付けですが、トレックの「ds」シリーズはかなりMTB寄りの仕様です。
dsは「dual suports(デュアルスポーツ)」の略であり、オンロード・オフロード兼用のスポーツバイクという意味です。
確かにMTBに比べれば軽量なフレームですし、前傾姿勢が取れる形状ではありますので、クロスバイクらしい軽快感はあります。
タイヤも一見ゴツゴツしていますが、センターリッジタイヤといって、MTBに使用されているブロックタイヤよりも転がりがよいタイヤが採用されています。
しかし、そうは言ってもさすがに38cというとママチャリ並みの太さですし、車重もクロスバイクにしては重めなので、ロードバイクに近い疾走感は難しいかもしれません。
したがって、クロスバイクにスピードを求める方は、別のシリーズの方がよいでしょう。
dsシリーズは「8.3ds」などの小数点表記から、2017年モデルで「ds2」という「モデル名+グレードを表す整数」という表記に変更されました。
今回のテーマである8.3dsの後継機はds2となっていますので、ds2のお話も同時にしていきます。
トレックのクロスバイク「8.3ds」最大の特徴はサスペンション
トレックのクロスバイク「8.3ds」は、dsシリーズの中では最下級となるエントリーモデルでした。
それでも、サスペンションにディスクブレーキという基本仕様は、上位グレードと変わりません。
そして、上位グレードの方が少し高額だったので、こちらに人気が集中していたという話を聞いています。
やはり他のクロスバイクと一線を画すのは、サスペンションということになり、後継機のds2にも引き続き搭載されています。
サスペンションは地面からの衝撃を吸収して、身体に伝わる振動を減衰させる効果があるので、MTBでは必須の機能です。
クロスバイクにおけるサスペンションは、歩道との段差や悪路での微振動に効果を発揮するもので、フワフワしたマイルドな乗り心地に貢献する物です。
そのため、舗装路では特に必要性を感じない場面も想定されており、サスペンションを稼働させない「ロックアウト」機能が付いています。
サスペンションは乗り心地に好き嫌いが出てしまうのですが、必要に応じて使い分けができますので、付属していて無駄に感じることはないでしょう。
8.3dsから「ds2」への進化は油圧式ディスクブレーキ
トレックのクロスバイク「8.3ds」は、エントリーモデルとしては7.9万円とそこそこの価格でした。
後継の「ds2」はリアが9速から8速になり、パーツもところどころにグレードダウンが見られますので、6.1万円と大幅に価格が下がりました。
それでもレベルアップした箇所があります。
8.3dsはワイヤーケーブルを動かして制動する機械式のディスクブレーキでしたが、ds2は上位グレードと同じ、油圧式になりました。
非常に安定した制動力がありますし、ワイヤーの取り回しを気にしなくて済みますので、ハンドルの操作性が上がります。
また、ワイヤーが引っ張られることがないのでパワーロスが少なく、小さな力で強い制動力が得られます。
その分スピードを上手くコントロールできるので、ds2のようにスポーツ性の強いクロスバイクには最適です。
さらには、一回しっかりとセッティングすれば、ブレーキパッドの寿命まではノーメンテでいける可能性があります。
しかし、異音などがしてしまうと対処は必要です。
これだけのメリットがある油圧式のディスクブレーキが、6万円台のクロスバイクに装備されているのは、特筆もののコスパの高さです。
トレックのクロスバイクのステージを引きあげた1台
8.3dsは、トレックのもう一つの定番シリーズである「fx」シリーズの、「7.4fx」と比較されることが多かったと記憶しています。
fxシリーズはどちらかというとオンロード(舗装路)メインで、ロードバイクに近い軽快感と疾走感が楽しめるタイプです。
7.4fxは8.3dsに比べ3㎏以上も軽量でしたし、タイヤも細めのスリックタイヤを採用していました。
スピード色の濃い仕様になってはいましたが、しっかりとした安定感や快適さも加味されていました。
サスペンションは付属していませんが、その代わりにカーボン製のフロントフォークになっていました。
そして、fxシリーズの上位機種にのみ装備されている衝撃吸収システム「IsoSpeed」は、街中の軽めの悪路であればほぼ振動がこないくらいのレベルです。
さすがにこれだけのバランスのよさですから当然人気が高く、今ではトレックのクロスバイクのステージを一段引き上げたとまで言われている存在です。
fxシリーズもdsシリーズと同じく2017モデルから製品名が変わり、7.4fxは後継の「fx3」になりました。
トレックのdsシリーズをおすすめしたいのはこんな方
前項でトレックの7.4fxを紹介しましたが、8.3dsとはコンセプトが違い過ぎるので、両者の比較は優劣の問題ではありません。
購入するユーザーさんの乗り方=用途で、向き不向きが出てくるということになります。
dsシリーズは普段の道中に荒れた路面が多い場合、泥道や林道などの本格的な悪路も走る場合におすすめです。
また、大げさではありますが、スピードや軽快さはママチャリレベルでもよいから、安定感や快適性を重視したい、という方にも最適です。
ハンドルがスポーツバイクにしては高いので、それほど極端な前傾姿勢にならず楽な姿勢で乗ることができるのも大きいです。
ただし、クロスバイクで走る距離を伸ばしたい、長時間走りたいとなると、正直不要と思える装備もあるので適性面から言えば不向きです。
また、デザイン的にMTBっぽくごつい感じなので、すっきりとした見た目の自転車が好きな方はfxのほうが賢明です。
8.3dsはタイヤを細くしてスピードアップを図ってもよい
筆者はタイヤを細くカスタマイズした、トレックの8.3dsに乗ったことがあります。
知人が所有していたのですが、前にMTBに乗っていたことがあったらしく、サスペンションにはこだわりたいということで8.3dsを購入したそうです。
しかし、購入して約3か月くらいだったと記憶していますが、タイヤを28cのスリックタイヤに交換していました。
その交換した後に乗せてもらったのですが、筆者は以前ノーマル仕様にも乗ったことがあるので、比較した印象をお話しておきます。
別物とまでは言いませんが、スピード感は正直かなりアップした感じでした。
特に信号待ちからの漕ぎ出しが軽く、もっさり感がなくなりました。
少し地面からの突き上げを感じるようになりましたが、それでもサスペンションのおかげでしょう。
一般的なクロスバイクに比べれば断然快適です。
筆者がロードバイクで細いタイヤに慣れていたということもありますが、少なくとも28cであれば安定感を欠くことなく、スピードアップできる印象でした。
個人的な体感に基づいていますのであくまでも参考程度にして頂きたいですが、スピード感が欲しい方はタイヤを細くすることも検討してみてください。
トレックのdsシリーズはオールラウンダーではない!
今回はトレックのクロスバイク「8.3ds」についてお話しました。
サスペンション付属のクロスバイクとして、トレックでも一線を画す存在であり、「ds2」になりさらに進化した感があります。
ただし、少し乗り手を選ぶバイクなので、目的や用途をじっくりと検討してから購入して頂きたいですね。