フルクラムはカンパニョーロの子会社で、ホイール専門メーカーです。
アルミリムホイールには、全て「レーシング」の冠が付き、レーシング5はその中でも、下から2番目のグレードです。
また、フルクラムのホイールは、フリーハブのラチェット音が大きいことでも有名です。
それも含めて、ハブのグリスアップが不可欠になります。
そこで今回は、レーシング5のメンテナンスをご紹介していきます。
フルクラムのレーシング5とは
フルクラムは、カンパニョーロがシマノユーザーにも、自社のホイールを使ってほしいと考え、作られたメーカーと言われています。
創設当初は、シマノのスプロケにしか対応してなかったほどで、シマノへのあからさまな媚売り戦略と揶揄されたそうです。
しかし現在では、そんなイメージは完全に払拭され、世界でも名だたるホイールメーカーになっています。
最近では、カンパの技術を踏襲しつつ独自色も出しており、カンパの子会社であることを知らずに、ユーザーになっている人も多いようです。
フルクラムのアルミホイールは、全て冠に「レーシング」が付き、下位グレードから順に、レーシング「7」・「5」・「クアトロ」・「3」・「ゼロ」になります。
クアトロはイタリア語で数字の「4」のことですが、なぜこれだけがイタリア語なのかは分かりません。
ただ、クアトロは他のホイールとは一線を画すリムハイト35mmのセミディープなので、名前も変えているのかもしれません。
ところで、今回取り上げるレーシング5は、シールドベアリングですね。
本来ならばノーメンテと言われているシールドベアリングですが、定期的にグリスアップした方が良いという話もあります。
フルクラム・レーシング5を選ぶ理由があるか?
フルクラムのレーシング5は、下から2番目のグレードです。
完成車に最初から付属されていれば仕方ないですが、好んでこのホイールに換装するかどうかは微妙です。
まずひとつに、スポークの組み方が上位モデルとは違います。
「2:1(ツートゥーワン)スポーク・レシオ」と呼ばれるスポークの組み方こそが、フルクラムの大きなメリットのひとつです。
具体的には、後輪のドライブ側に倍の数のスポークを配置することで、スポークテンションのバランスを良くする組み方です。
そのことで反応性が良くなり、加速性に優れたホイールになります。
ところが、レーシング7と5は採用していませんので、フルクラムを選ぶ意味がひとつ消えます。
ちなみに、親会社のカンパは、ローエンドモデルまで上位グレードの特殊なスポーク組が採用されています。
だとすれば、フルクラムもできたはずなので、そこは残念です。
また、前項でも触れましたが、ハブのベアリングの種類が違います。
シールドベアリングが悪いというわけではなく、フルクラムはレーシング3などに採用されている、カップ&コーンの方がレベルが高いです。
定期的にグリスアップして、使用していれば何の問題もないですが、レベルの差があるということです。
フルクラム・レーシング5をあえて選ぶのか?
フルクラムのレーシング5を見送る要因のもうひとつに、上のグレードに当たる「レーシング3」が優秀過ぎるという理由もあります。
上位モデルと同じ2:1スポークレシオを採用していますので、ここからいよいよ名前通りに、レーシーな仕様になってきます。
また、ベアリングの受けが特殊加工されているので、ハブの回転がスムーズになっています。
グリスアップや玉押し調整などは少し面倒ですが、その分、良く回るハブです。
総重量も最軽量クラスではありませんが、レーシング5よりは100g程度軽いです。
しかも、レーシング5はワイドリム化されています。
その分、リムに重量が加算されていますので、走りの軽さは100gの数字以上に段違いです。
価格はレーシング5よりも2万円ほど高いですが、これだけ性能に差があれば、それはレーシング3を勧めることになります。
実際にホイールの比較をしているサイトなどでも、初心者の方の最初のホイール交換におすすめなのは、圧倒的にレーシング3になっています。
レーシング5は、グレードアップの際に、飛び越されてしまう存在というわけです。
レーシング5のメンテナンスはハブのグリスアップが肝心
ここまでの話ですと、レーシング5に何の価値もないような印象を、持たれてしまったかもしれませんが、決してそんなことはないです。
あくまでも、フルクラムらしさがあるかどうかと、上位グレードと比較した場合の話です。
3万円前後の価格帯の製品で比べれば、決して見劣るものではありません。
そのため、完成車にレーシング5が付属されているからといって、明日にも交換しなければいけないようなことはありません。
しっかりとメンテナンスをすれば、それなりの走りはしてくれます。
ホイールのメンテナンスは、ハブ内部の清掃とグリスアップですね。
特にレーシング5は、シールドベアリングなので、ハブの分解は比較的簡単にできます。
しかし、ハブの分解清掃を行う前に、後輪はカセットスプロケットを取り外す必要があります。
これには専用の工具が必要になりますが、今後のことも考えて、購入しておきましょう。
【シマノ:ロックリング締付け工具 TL-LR15】
参考価格:¥1,700
カセットを固定しているロックリングを外すための道具です。
締め付け工具と書いてありますが、当然、外すときにも使えます。
【バイクハンド チェーン式フリーホイール外し YC-501A】
参考価格:¥800
カセットは固定しないと、クルクル回ってしまうので、先に付いているチェーンで固定する道具です。
あとは、モンキーレンチがあれば、カセットは外せます。
レーシング5のグリスアップ手順
フルクラム・レーシング5からカセットスプロケットを外すと、そこにフリーホイールがお目見えします。
ナットで固定されているので、レンチで時計回りにひねって外します。
シャフトは軽く叩けば、簡単に抜けます。
このときに、いくつかの部品が順番に取り付けてあるので、写真を撮るかメモっておくかすると、戻すときに困らないです。
フリーホイールを外すと、中にラチェット機構の歯車があります。
この部分から発生する音が、「ラチェット音」と呼ばれているものです。
構造上、音は鳴るのですが、もし大きな音がして不快だと思ったら、少し多めにグリスアップしておきましょう。
ただ、あまり多いと、爪が歯車に引っかからずに空転してしまうので、ほどほどにしておきます。
そして、その歯車の所にシールで覆われている部分があるのですが、これがハブのシールドベアリングです。
本来であれば、ベアリングを水やごみから保護するためにシールで覆っているわけですから、外してメンテナンスする必要はないです。
しかし、完全に密封できるわけでもなく、グリス抜けが発生していることもあるようなので、せっかくですからグリスアップしておきましょう。
シールは金属とゴムでできているので、曲げないように注意しながら、細いドライバーでこじ開けます。
中のベアリングをパーツクリーナーで清掃してから、グリスアップします。
レーシング5のフリーホイール内のグリスアップ
フルクラム・レーシング5のハブ内部のグリスアップは上記手順で終了ですが、外したフリーホイール側のメンテナンスも行います。
先端にラチェット機構の爪が付いているので、これを外します。
輪っか状の針金で固定されているので、壊さないように慎重に。
外すと、中にまたシールドベアリングがあります。
ここはハブよりもシールをはがすのが困難なので、もし無理だと思ったら、やめておきましょう。
あとは、爪にグリスを塗って再度組み付けて、シャフトにも少しグリスを塗って戻します。
シールドベアリングはカップ&コーン方式と違って、玉押し調整がいらないので、元通りにナットを締め付けるだけで完了です。
なお、前輪のハブはフリーホイールがないだけで、グリスアップの手順は同じです。
レーシング5を活かすためにもグリスアップしましょう
レーシング5は、決して粗悪なホイールではありません。
フルクラムの上位モデルが優秀過ぎて、存在がかすんでしまっているんですね。
ちゃんとメンテナンスをすれば、それなりの性能は発揮されますので、グリスアップや清掃を定期的に行ってください。