ピナレロは創業60年を超える老舗ブランドですから、その時代を彩った名作があります。
また、新陳代謝が激しく、モデルチェンジや名称変更が非常に多いので、いつの時代だったのか分かりづらくなることもあります。
「MARVEL(マーベル)」なども、一度廃盤となりながら復活をし、現在はまたラインナップにその名はありません。
今回は当時のインプレ情報などもさかのぼりながら、マーベルについてお話ししていきます。
初代のピナレロ・マーべルはいつの時代の機種か?
ピナレロのマーベルはデビュー年こそ定かではありませんが、インプレ情報に2005年まで生産されていたという記述を確認できました。
当時はまだカーボンフレームが全盛になる前で、2005年はピナレロの現在のフラッグシップ「DOGMA(ドグマ)」もマグネシウム合金製のフレームでした。
マーベルは名作中の名作と言われている「PRINCE(プリンス)SL」に次ぐ、ミドルグレードのアルミフレーム車で、シートステイにカーボンを配した「カーボンバック」の名残りである、ハイブリッドフレームでした。
2005年というとさすがにカーボンの全盛期も近付いてきた頃で、ピナレロでも2008年にプリンスがフルカーボンフレームとしてリニューアルされています。
そのため、カーボンバックの立場が厳しくなってきた頃ですので、マーベルが2005年に使命を終えたのは、ごく順当な流れではあったかと思います。
筆者は廃盤モデルを振り返る際に、中古販売店を確認してみますが、残念ながらこの当時のマーベルは確認できませんでした。
ピナレロ・マーベルは2014モデルで復活!
ピナレロのマーベルは前項でお伝えしたように、2005年でいったんその使命を終えました。
しかし、その8年後の2013年に発表、モデルイヤーとしては翌2014年からとなりますが、復活を果たします。
正式名称は「MARVEL(マーベル) 30.12 THINK2」で、フルカーボンのミドルグレードという位置付けになりました。
この当時は今でも語り草になっているほどのベストセラー「FP 3」が、「QUATTRO Carbon」→「FP QUATTRO」という流れで、次々とニューモデルになっていった時期です。
その流れを汲んで2013年で廃盤となった、FP QUATTROの後継機がマーベルです。
また、この頃はドグマがフルカーボンとなり、左右非対称の「アシンメトリックデザイン」をまとい、次から次へと世界の大レースで勝利を挙げていた時代でもあります。
その影響からドグマはどんどん高性能化していき、当時のインプレ情報でも多く指摘されていますが、アマチュアレーサーからは少し遠い存在になったため、カーボンのミドルグレード車が、一般市場全体を支えていた時期です。
こういったミドルグレードが特に大切な時代の、中心的存在となったのがマーベルでした。
ピナレロ・マーベル2014モデルのインプレ評価
ピナレロ・マーベルは2014モデルで復活を果たしましたが、当時のピナレロのラインナップを見ると、とにかく高弾性でガチガチに硬いカーボン素材を使用したモデルが多かったです。
特にハイエンドモデルのドグマは「65HM1K」などという、今なら伝統的に「硬め」のピナレロですら考えられないような高弾性素材で、インプレ評価でもさすがに硬すぎるという声が多かったと記憶しています。
その点でミドルグレードのマーベルは「30HM12K」という、しなやかで衝撃吸収性に長けた、標準弾性の素材を使用していました。
そのため、マイルドな乗り心地や、ペダルを長時間踏んでも疲れないという仕様であり、レースモデルながら長距離にも使える、オールラウンダーとして評価されていました。
また、FP QUATTROの後継機ではありますが、全く新しい金型で作られたモデルでしたので、当時の最新鋭の技術もふんだんに盛り込まれています。
これらの技術は現在にも引き継がれている大切なものなので、次項で詳しくご紹介します。
インプレで高く評価されたピナレロ・マーベルに搭載された技術
マーベルの復活に当たっては、フロントフォークに、ドグマと同様に空力性能を意識したテールフィン付きの「ONDA 2V」が採用されました。
ONDAはピナレロの象徴とも言える、クネクネとした形状のフォークやシートステイの総称ですが、上位モデルと同じ形状のものが採用されたことで、当時のインプレ情報でもピナレロがマーベルに掛けた期待が評価されていました。
また、マーベルの製品名にもなっている「THINK 2」も、それまではドグマにしか投入されなかった技術で、ミドルグレードとしては初めて採用されています。
THINK 2はシマノ「Di2」のような電動コンポにも、ケーブルの受けを交換するだけで対応できるフレームデザインで、将来のグレードアップを考えた場合には非常に画期的な技術です。
そして、少しづつ空力性能を意識して、カムテール形状や幅広のチューブが多くなってきたドグマとの差別化という意味では、丸形断面のシートポストを採用して、汎用性も高め、見た目にもクラシカルさを維持しています。
特にデザイン面では、多くのインプレ情報が、ピナレロの伝統を継承するモデルとして取り上げていました。
インプレ情報から推察するピナレロ・マーベルの廃盤要因
ピナレロ・マーベルは2015年で再び廃盤となり、わずか2シーズンの展開でした。
当時のサイクルマスコミのインプレ情報では、ドグマのセカンドグレードとして「プリンス」を復活させたことで、マーベルとの位置付けのかぶりが発生したのが、大きな要因と分析されていました。
また、マーベルと同じ金型を使用した弟分「RAZHA(ラザ)」が登場したことで、悪い言葉で言えば必要性がなくなっていったということでしょう。
しかし、今(2019モデル)のピナレロのラインナップは、ドグマが完全にエアロ形状となり、それに準ずる形でプリンスも、2019モデルからエアロロードになりました。
さらに、前年から残留となった「GAN」もエアロですから、上位~ミドルグレードまでは全てエアロ形状のバイクで埋め尽くされることになったのです。
そのため、今でも現役であるマーベルの弟分「ラザ」だけが、オールラウンドタイプのピナレロの伝統様式を守る形になりました。
このような偏りになった現状を考えると、個人的にはマーベルの存在が今でも必要だったのではないかと思います。
マーベルの遺伝子を継ぐ「ラザ」のインプレ評価
それでは最後に、ピナレロ・マーベルの遺伝子を今に伝える現役モデル「ラザ」をご紹介します。
2014年にデビューし、翌2015年にマーベルと同じ金型を使用するモデルになりました。
2019年には5シーズン目を迎えるわけですが、「ONDA 2V」や「THINKN 2」など、当時のマーベルから引き継いだ技術は、今もその形を変えることなく継続使用されています。
そして、現在のピナレロのカーボンフレームの中では、最もしなやかで柔らかめなカーボン素材が使用されています。
そのため、マーベルの特徴でもあった、レースモデルでありながらロングライドにも高い適性を示す部分も、インプレ評価でしっかりと認められています。
また、ラザはクラシカルだからこその差別化として、特別なカラーリングやイタリア空軍の識別マークがペイントされており、インプレ情報ではデザインも高く評価されています。
特にボディカラーの「イタリアンザフィーラブルー」は、ラメ入りで高級感漂うカラーリングなので、ぜひ現物を見て頂きたいですね。
そして、ラザには小柄な女性向けに専用設計された「EZ-fit」というサイズ設定もありますので、女性にも目を向けて頂きたいモデルです。
歴史にその名を残すモデル
今回は、ピナレロの「マーベル」を振り返りました。
2014年に復活した2代目は、2年というわずかな展開期間ではありましたが、大きな爪痕を残したミドルグレードの名作です。
非常に用途の幅が広く汎用性も高いので、どんな形でも手に入る機会があるのなら、検討に値するモデルかと思います。