ロードバイクの超軽量タイヤはサイドカットに弱いって本当?

本格的にロードバイクに乗っている人であれば、トレーニング中やツーリング中に、一度や二度はサイドカットでタイヤをダメにしてしまったことがあるのではないでしょうか?

サイドカットによるパンクは普通のパンクとは違い、インナーチューブ(チューブラーの場合はタイヤそのもの)が一気に破裂して、「パァンッ!」と大きな音が出ます。

また、タイヤの空気圧が一気にゼロになってしまうせいで、急にホイールがグリップを失い、転倒などの事故にもつながる一大事です。

今回は、そんなサイドカットをいかにして防ぐか、また、そうなってしまったときにどうすべきかを考えてみましょう。

他車種よりロードバイクのタイヤがサイドカットしやすい理由

ロードバイクというのは、何にも増して「スピード」が重視されています。

トップスピードで伸びることももちろん大事ですが、特にマシンで差がつくのが「加速力」です。

トップスピードは、フレームやハンドル周りも含めたマシン自体の軽さがものを言います。

しかし、「加速力」ではホイール、中でもハブから遠い部分を軽くすることで大きな差が出ます。

具体的にはリムとタイヤ、インナーチューブです。

カタログでも通販サイトでも、必ず「重量」の表示があるほど、皆さんのこだわりポイントです。

そのため、ロードバイクのタイヤは他車種のタイヤに比べると、圧倒的に軽く作られています。

その軽さはどうやって生み出されているのでしょうか?

答えはタイヤの厚さです。

路面に接するトレッド部分の厚みは、パンクするリスクを考えたら薄くはできません。

すると必然的に、薄くできるのはサイドウォールやビート部分です。

これがロードバイクがサイドカットを起こしやすい原因になっています。

ロードバイクは、もともと舗装・整備された道路を走ることを想定して作られている自転車ですから、ものに触れないサイドウォールはサイドカットを起こさない前提です。

しかし、実際に街中を走行していると、タイヤのサイドウォールはあちこちにぶつかり、引っかかり、運が悪いとサイドカットを起こしてしまいます。

サイドカットしやすいタイヤとしにくいタイヤの違いはなに?

同じロードバイクのタイヤであっても、サイドカットしやすいタイヤと、しにくいタイヤがあります。

それは、サイドウォール部分の厚さによる差です。

ゴムが厚ければそれだけ入力への耐性は強くなります。

また、サイドウォール部分の厚さは、タイヤの中のケーシング(タイヤ内部の繊維)の品質や量によっても違ってきます。

繊維の本数を表す単位を「TPI」と言います。

この値が高いタイヤは、ゴムの厚さで強度を出すのではなく、繊維の量でタイヤの強度を出しているため、軽くてしなやかになります。

しかし、その分サイドウォールは薄くなり、サイドカットしやすくなってしまいます。

反対にこの値が低いタイヤは、繊維の量や品質よりもゴム自体の固さで強度を持たせているため、サイドウォールは厚くなりタイヤ自体が固く、また重くなりますが、パンク耐性は上がっています。

そして、一般的にこのTPIの値とお値段は比例関係にあります。

つまり、価格の高いタイヤほど、TPI値が高く軽くてしなやかでサイドウォールが薄くなっている分、サイドカットのリスクを抱えているということです。

そして、それがそのまま、サイドカットしやすいタイヤか、しにくいタイヤかを分けることになります。

ロードバイクのタイヤを購入するときのポイントとは?

それでは、ロードバイクのタイヤを購入するときのポイントについて、パンクの目線で考えていきましょう。

ロードバイクのレースで使用されるコースというのは、サイドカットをはじめ、パンクのリスクが減らされるように努力されていることが多いです。

そのため、サイドウォールが薄くても、軽さ重視でタイヤをチョイスすることが可能です。

もし、レース用に考えるのであれば、軽さ重視のタイヤを選ぶのも良いでしょう。

しかし、普段のトレーニングやファンライドの場合、走るのはリスクが排除されていない一般道です。

普段から脚を回していれば分かるかと思いますが、一般道にはロードバイクのタイヤが落ち込んでしまうようなものがたくさん存在しています。

例えばアスファルトの溝やグレーチング(網目になった金属製のU字溝のふた)などは、特にタイヤがすっぽりはまってしまう幅で、サイドウォールが触れやすいところです。

それに、これらの「落とし穴」には、一瞬でタイヤのサイドウォールを切り裂きかねない石や金属片が突き出していることが多々あります。

それがサイドカットが起こる一番の要因です。

そのため、タイヤを購入するときには、まず「どういうシーンで使うタイヤなのか」を考えてみましょう。

レースの時に本気で走るタイヤならば、サイドウォールが薄くても軽くてしなやかなタイヤを選択するのが良いでしょう。

また、普段使いやツーリングなど、速度を求めないのであれば耐久性のあるタイヤを選択するのが良いです。

そういう使い分け一つでリスクは回避できます。

道路を走行中にサイドカットしてしまったときの緊急対処法

できればそんなことにはなりたくない、ロードバイクタイヤのサイドカットですが、残念ながら、タイヤを使う以上、100パーセントの回避はできません。

では、サイドカットの憂き目に遭ってしまった場合はどうしたら良いかについて、お伝えします。

一番手っ取り早いのは、タイヤとインナーチューブを交換してしまうことですが、ここでは、交換用のタイヤを持ち合わせていないことの方が圧倒的に多いですよね。

まず、応急処置グッズとして売り出されている補修シートを使う方法です。

複数のメーカーから、サイドカットを含むタイヤの損傷を一時的に補修するシートが売り出されています。

使い方は簡単で、ホイールからタイヤを外したら、タイヤの内側から湿布と同じ要領で貼り付けるだけです。

このシートは布ガムテープと同じように格子状に非伸縮性の繊維が編み込まれており、それをタイヤに貼り付けることによって、裂け目をそれ以上大きくしない働きをします。

「だったら、布ガムテープでいいじゃないか。」

そう考える人もいるようですが、実は、補修シートも手に入らないときには、布ガムテープで代用することもできます。

とは言え、ガムテープは引っ張りの向きによっては伸びてしまうことがあるので、テープ内の繊維が裂け目に対して垂直・平行方向になるように貼り付ける必要があります。

もっとも、補修シートも布ガムテープも、あくまで「一時的な」緊急対処にすぎません。

あくまでタイヤ自体は「壊れて」いるわけですから、近場の自転車屋までを乗り切ったら、タイヤを交換するようにしましょう。

サイドカットでパンクしたらタイヤチューブは即交換しべし!

ロードバイクでの走行中に起こるガラス片を踏んでのパンクや、段差を乗り越えた時にやってしまうスネークバイトなどでは、チューブに開く穴はせいぜい1~2mm程度です。

しかし、サイドカットによる破裂の場合、ほとんどの場合は1cm近く、あるいはそれ以上の裂け目ができてしまいます。

このサイズの穴の場合は、パッチによる修理は止めた方が良さそうです。

パンクの補修パッチは、パッチ自体とタイヤチューブが接着されることによってパンク穴をふさぎます。

しかし、穴が大きい場合、空気を入れた時のタイヤ膨張による引っ張りに堪えられず、パッチがはがれてしまうことがあります。

そうなってしまうと、また作業はやり直しになってしまいます。

また、パッチ修理を繰り返したタイヤチューブは膨らみが均等でないばかりか、パッチや接着剤自体の重さによってホイールの回転の滑らかさにも支障が出てきます。

パッチを複数枚貼ったり、タイヤチューブを切ったものを使ってパンクを補修する、なんていう話を聞くこともありますが、これらの理由により全くお勧めできない方法です。

そうすると、サイドカットでパンクしたらタイヤチューブは交換する、というのが前提になります。

タイヤチューブは、それほど重いものでもありませんし、場所をとるものでもありませんから、ロングライドの時には何本か持っておきましょう。

タイヤを簡単にサイドカットさせないロードバイクの選び方

サイドカットによるパンクでせっかくのツーリングやトレーニングを台無しにしないために、簡単にサイドカットさせないロードバイクを作ることを心がけましょう。

一番の近道は、タイヤを価格ではなく「性能」で判断して購入することです。

特にファンライド層だと、事前情報なしにタイヤ売り場に行き「これ、カッコいいじゃん!」と商品を選んでしまう人は多いのではないでしょうか?

しかし、それでは「とんだクセ者」をつかまされてしまいかねません。

今は、インターネットなどで簡単にタイヤの断面図を見たり、スペックや特長を確認することができます。

必ず自分の乗り方(トレーニングか、レースか、など)に見合った「性能」を持ったタイヤを調べてからショップに行き、目的のタイヤを選ぶようにしましょう。

また、日々のメンテナンスも大切です。

サイドカットと言えば「道路の溝にはまって…」が原因としては一般的ですが、「ブレーキシューがタイヤを削ってしまって…」も十分に起こりえる話です。

カンチブレーキはシューとホイールとのクリアランスが狭いので、ホイールを付け替えた後は、必ずシューの当たり位置の確認が必要です。

これらのことに注意するだけで、ずいぶんとサイドカットによるパンクのリスクを減らすことができます。

普段の乗り方一つでタイヤのサイドカットは防ぐことができる

サイドカットによるタイヤのパンクは、ロードバイクの乗り方を変えるだけでも防止できます。

高校の自転車競技部の練習などではよく目にする光景ですが、先頭を走るライダーが、ひび割れや段差などの路面の状況や、対向車などの情報を大きな声で後続に伝えています。

要は、前や進行方向だけでなく、足元にも注意を払うという「当たり前」なことですね。

ただ、その当たり前がとても大切だったりします。

はじめにお伝えしたとおり、サイドカットによるパンクは一瞬で空気が抜けるため、大変危険です。

うっかりで落車や事故に遭わないよう、「当たり前」を大切にしましょう。