ピナレロの「DOGMA(ドグマ)」は押しも押されぬフラッグシップモデルであり、今世界で一番レースに勝つ機体と言っても過言ではありません。
そのことからも、高性能であることは間違いないですし、浮世離れという言葉を使いたくなるほど高額です。
そうなると、インプレの評価も気になるところですので、今回はドグマが世間からどういう評価をされているのかを確認してみます。
ピナレロ・ドグマシリーズ2019モデルのラインナップ
ピナレロ・ドグマのインプレ評価を確認する前に、現状確認をするということで、まずは2019年モデルをご紹介します。(価格は税込み)
【F10】参考価格:¥734,400(フレームセット)
ピナレロが機材を提供するワールドチーム、「チーム・スカイ」のメインバイクです。
完成車も限定で販売予定ですが、情報は公開されていません。
【F10 Xlight】参考価格:¥972,000(フレームセット)
F10をベースに、さらに60g車体を軽量化したモデルです。
ベースにはしていますが、専用の金型を別に用意しているので、この価格差になっています。
【F10 DISK】参考価格:¥756,000
F10のディスクブレーキモデルです。
【K10】参考価格:¥734,400(フレームセット)
F10ベースですが、パリ~ルーベなどの石畳レースや、長距離のグランフォンドに適したモデルです。
【K10-S DISK】参考価格:(eDSS サスペンション仕様)¥1,078,920 /(DSS サスペンション仕様)¥842,400
K10のディスクブレーキモデルで、リアサスペンションを搭載しています。
eDSSは、サスペンションを電子制御するシステムです。
ピナレロ・ドグマに合わせるパーツをインプレから探る
前項でお伝えしたように、ドグマは現在フレームセットの最低価格が73万円というもので、ピナレロはもとより世界中でも例を見ない高級フレームです。
ドグマに乗るチーム・スカイの選手が、ツール・ド・フランスを4連覇するなど、とにかくレースでも図抜けた実績がありますので、これも致し方ないかもしれません。
ほとんどがフレームセットのみの取扱いですので、パーツを自分で用意して完成形に組んでいく「バラ完」が前提です。
インプレ情報では、コンポやホイールを各々が思い思いに組んでいるので、参考になるかと思います。
ドグマはエアロロードのカテゴリーになりますので、パーツも空力性能を意識したものになっていますね。
ちなみに、コンポはシマノ・デュラエースのDi2、ホイールはカーボンのディープリム、この組み合わせが目立ちます。
それだけでF10でも120万円、Xlightなら150万円に近付きますが、ここにさらにハンドルやサドル、タイヤなども加わりますので、何とも恐ろしい世界です。
ピナレロ・ドグマのインプレに「硬い」という意見が少なめなのはなぜ?
ピナレロ・ドグマのインプレ情報のお話ですが、ユーザーさんの使用感としては硬いという意見もありますが、実は意外にもその意見は少ない方かと思います。
フラッグシップモデルは、プロの脚力に負けない剛性を確保しているフレームですから、ホビーライダーの皆さんの脚力で、硬いと感じるのは当然です。
ドグマは「1K」という1000本の糸が一束になっている繊維を使用しています。
1Kはフレームに使用される物では最も少ない本数なので、隙間が出来ないように細い糸を隙間なくぎっちりと編み込んでいるので、硬くなります。
しかも、以前は1㎝の物を倍の2cmに引き伸ばすために、60~65トンもの引っ張り力が必要なほどの、しなりのない高弾性な素材でした。
しかし、カーボンは高弾性になると強度が落ちるという性質があるので、破断してしまったり割れることもあります。
そういった危うさもあったので、ピナレロは先代のフラッグドグマF8に、弾性と強度を両立させた新素材を投入するに至りました。
硬めというインプレが減った理由は新素材の投入
先代のピナレロのフラッグシップモデル「ドグマF8」には、強度を重視した「T1100G」というカーボン素材が投入されることになりました。
今までの素材は弾性重視でしたが、強度重視になったことで耐久性が飛躍的に上がりました。
それでも、強度重視の素材としてはあり得ない程の高弾性で、プロの脚力にしっかりと応えるものではあります。
そして、前項でもお伝えしましたが、高弾性になると強度が下がるという裏返しで、強度が上がれば弾性は下がり、フレームにしなりが生まれます。
これが、ドグマのインプレ情報に「硬い」という意見が少なめという理由であり、ホビーライダーの脚力でもこなせる硬さになっているのかと思います。
筆者もF8ではありますが、知人に借りて数十キロ走らせてもらったことはあります。
硬さを感じないとまで言っては嘘になりますが、思った以上に脚への負担は少なく、無理なく加速してくれる印象でした。
もちろん、それはエアロ形状のおかげというところもありますが、素材によるところが大きいのでしょう。
F10はF8に比べフレームの味付けを微妙に変化させており、サドルを中心として前側はしなやかに、後ろ側はシャキッと(硬め)させています。
そのため、ハンドリングはピーキーさが薄まり操作性が良くなり、後ろは硬めになってねじれが抑えられる分、加速力が向上したと言われています。
チーム・スカイが証明するドグマのマルチな才能
ピナレロ・ドグマほどの高級バイクを所有している筋金入りの方は、レースの種類に応じたバイクを2~3台と所有している方も多いようです。
しかし、あるインプレ情報に書かれていた意見で、筆者も納得したものがありました。
それは、ドグマは一台で、平坦メインのロードやクリテリウム、そして登坂競技であるヒルクライムまでこなせるという意見です。
試乗したことのない筆者がなぜこの意見に共感したかというと、前出したチーム・スカイのレース成績です。
2018年のレースでは、3大ツールの中でも厳しい坂を登る山岳ステージの多い、「ジロ・デ・イタリア」でクリス・フルーム選手が総合優勝。
しかも、上り坂の勾配や長さに応じて通過順位がポイント換算される、「山岳賞」も獲得しています。
そして、これは全てドグマで走り抜いた結果です。
2018年はツール・ド・フランスでもグラント・トーマス選手が総合優勝を果たし、山岳ステージで2つの区間賞も獲得しています。
このように、ドグマは登れるエアロロードであることが証明されており、マルチな才能を見せているのです。
セカンドグレード「プリンス」の役割
ここまで、ピナレロのドグマについて、インプレ情報などから評価を確認してきました。
以前のガチガチに硬く、扱いにくさを感じざるを得ないピーキーさは薄まり、ホビーライダーに親近感がわくような優しさが加わった印象です。
しかし、価格だけはどうしても寄り添えない部分であり、越えられないハードルの高さがあります。
そこで用意されているのがセカンドグレードであり、2019年モデルからはその役割を「PRINCE(プリンス)」が担うことになります。
ドグマF10の技術を受け継ぎながら、フレーム素材と付属パーツを工夫して、価格を抑えているモデルです。
また、独自の技術も取り入れ、乗り心地やハンドリングのしやすさなどを加味して、レースだけではない楽しみ方もして欲しいというのが、ピナレロがプリンスに乗せたコンセプトです。
こういったセカンドモデルは、メーカー(ブランド)のユーザー層の裾野を広げる意味ではとても重要なので、妥協のないもの作りをしてくる分、我々ユーザーにとってはコスパの高い、お買い得感のあるモデルになります。
ハードルが少し下がったのかもしれない
今回は、ピナレロのフラッグシップモデル「ドグマ」についてお話ししました。
素材が新しくなったことが大きく、以前と比べしなやかで、扱いやすさも加味されているという印象が強いですね。
価格面は別ですが、少し親近感も出てきていますので、機会があれば試乗して確かめて頂ければと思います。