ピナレロのロードバイクの歴史そのものと言っても過言ではない名車「PRINCE(プリンス)」が、2019モデルにおいて、フルモデルチェンジを果たします。
そこで今回は、登場以来5度目のモデルチェンジとなるプリンスが、一体どんな機種なのかご紹介します。
また、プリンスの歴史も振り返り、ピナレロの革新的な技術の数々もお伝えしていきます。
ピナレロのロードバイクの流れ
ピナレロのプリンスですが、2019モデルでは現在のフラッグシップモデル「DOGMA(ドグマ)F10」の技術を受け継いだ、ピナレロ全体のセカンドグレードという位置付けになります。
大口径のヘッドチューブに始まり、カムテール形状のダウンチューブ、薄く扁平させたトップチューブに、バターナイフのようなシートポスト。
トップチューブが地面と平行に真っ直ぐ伸びているホリゾンタルスタイルでもあり、生粋のエアロロードバイクになりました。
ピナレロは2015年にドグマF8を登場させて以来、新時代に突入した感があり、「GAN(ガン)」、「ドグマF10」、「プリンス」と、その後に新たに導入してきたバイクは、全てエアロ形状です。
この間も、2018年までツール・ド・フランス(以下ツール)4連覇、ジロ・デ・イタリアで久しぶりの総合優勝を飾るなど、ピナレロのバイクに乗る選手が世界中で大活躍しています。
これは、常にレースと共に歩んできたピナレロが、今勝てる機体としてエアロロードを選び、プリンスもその流れに乗っている、ということになるかと思います。
ピナレロ伝統のロードバイク「プリンス」の歴史~アルミフレーム時代~
ピナレロのプリンスですが、ラインナップに20年以上名前を残しており、現存するロードバイクでは最も歴史があります。
初登場は1997年で、試作機がいきなりツールを優勝し翌年に市場デビューを果たしました。
アルミフレームのシートステイのみをカーボン製にする、「カーボンバック」という世界初の技術が投入されました。
そして、今では当たり前ともなった、ヘッドパーツをチューブに内蔵する「インテグラルヘッド」も世界で初採用されています。
レースでの実績もさることながら、まだフルカーボン車が普及していない時代のため、市場でも莫大な人気となり、ピナレロを世界屈指のブランドにした功労者となりました。
2000年代に入り、プリンスは現在のピナレロの象徴と言ってもよい、あのクネクネとした「ONDA」のフロントフォークを初採用するに当たり、「PRINCE SL」へとモデルチェンジされます。
そして、この間にピナレロはフルカーボン車や「ドグマ」を発表しています。
この時代に、現在の礎を築いたと言っても過言ではありません。
ピナレロ伝統のロードバイク「プリンス」の歴史~時代はカーボンへ~
ピナレロの名ロードバイク「プリンス」の歴史を振り返っていますが、いよいよカーボンフレームの時代に突入します。
2008年には、現在も素材の提供者としてその関係が続いている、日本屈指の繊維メーカー「東レ」のカーボンを使用した「PRINCE CARBON」となります。
それまでのフルカーボン車「PARIS CARBON」に変わってチームに採用され、2008年のツールでは、初日に「アレハンドロ・バルベルデ」がステージ優勝を果たします。
バルベルデが乗った赤と黄色のスペインカラーは市場でも人気となり、プリンスの名を一層高める原動力になりました。
このあとは、ドグマがフラッグシップモデルとなり、プリンスは市場から一時姿を消した時期もあります。
しかし、2015年ピナレロの伝統を守るべく、ドグマ65.1と同じ金型を使ったモデルとして復活します。
既にピナレロが全体的にエアロロードに舵を切り始めた時でしたから、伝統の造形としてコアなファンが付いていた、と筆者は記憶しています。
そして、2019モデルで、自身5度目となるフルモデルチェンジを果たしました。
モデルチェンジによってプリンスに課せられた使命
前項までピナレロ・プリンスの歴史を振り返ってきましたが、常にその時代においての新技術のお披露目や、伝統を守るという使命を託されているのが、プリンスという存在です。
そのプリンスの5代目となる今回のモデルは、ドグマF10の特徴を受け継ぎながら、扱いやすさや乗り心地にも配慮し、裾野を広げるという使命があるのではないでしょうか。
ドグマはキレキレの反応に怖いくらいの加速力、ピーキー過ぎるハンドリングと、とことんプロ仕様のロードバイクのため、誰もが満足に扱える機体ではありません。
プリンスはそういったドグマの持つモンスター性というか、怪物的な部分を少し控え、幅広い層に受け入れられる仕様にしながら、レースモデルとしての威厳は守っているイメージです。
実際にドグマに比べ少し剛性の抑えられた素材を使用しており、特にノーマルモデルは「しなやかさ」さえ感じる乗り心地と評されています。
価格面は別として新プリンスは、「ドグマにハードルの高さを感じているユーザーにこそ乗ってもらいたい」という意志が感じられるモデルになっています。
ピナレロ・プリンスの特徴
2019モデルのプリンスには、上位グレードの「FX」とノーマルの2グレードが用意されています。
FXは、よりドグマの直系という意味合いを強く持っており、「T900 3Kカーボン」という、ドグマに次ぐハイモジュールなカーボン素材を使用しています。
前項でも少し触れたように、若干剛性は控えめですが、フレーム重量は1㎏を切る940gで、完成車にはシマノ・デュラエースのDi2を採用しています。
さらにはカーボンのセミディープリムホイールを採用し、すぐにでもレースに出れる仕様になっています。
一方ノーマルグレードは、ピナレロのロードバイクユーザーの裾野を広げる役目を担ったモデルになっています。
しなやかで、耐久性にも優れた「T700 12Kカーボン」を使用しており、その衝撃吸収性や快適性の高さから、インプレで「ロングライド向きのエアロロード」と評価したテストライダーもいるほどです。
実際に筆者もノーマルグレードに試乗しました。
漕ぎ出しや低速域では、エアロロードらしさでもある重さや不安定さを感じましたが、スピードに乗ってくると快適な伸びが感じられましたので、長い距離を十分にこなせる印象を持ちました。
ピナレロ・プリンスのラインナップ
それでは最後に、ピナレロのロードバイク、新・プリンスのラインナップをまとめておきます。
★PRINCE(プリンス)FX
フレーム重量:940g(53サイズ)
サイズ:44SL(スローピングスタイル)、46.5SL、50、51.5、53、54、55、56、57.5、59.5、62
・参考価格
【シマノ・デュラエース Di2完成車】¥1,047,600(税込)
【シマノ・アルテグラ完成車】¥570,240(税込)
【フレームセット】¥491,400(税込)
★PRINCE(プリンス)
フレーム重量:960g(53サイズ)
サイズ:44SL、46.5SL、50、51.5、53、54、55、56、57.5、59.5、62
※105仕様の完成車には、女性向きモデル「EZ-fit」の42.5サイズがあります。
・参考価格
【カンパニョーロ・POTENZA完成車】¥469,800(税込)
【シマノ・アルテグラ完成車】¥469,800(税抜)
【シマノ・105完成車】¥415,800(税込)
【フレームセット】¥297,000(税込)
★PRINCE(プリンス)DISK(ノーマルグレードのディスクブレーキ仕様)
フレーム重量:980g(53サイズ)
サイズ:44SL、46.5SL、50、51.5、53、54、55、56、57.5、59.5、62
・参考価格
【シマノ・アルテグラ完成車】¥516,240(税込)
【フレームセット】¥295,000(税込)
プリンスは人を選ばないエアロロード!
今回は、2019モデルでフルモデルチェンジを果たした、ピナレロの「プリンス」をご紹介しました。
ドグマF10の形状と技術を踏襲したモデルですが、優しい味付けもされ、幅広いユーザー層に向けられたロードバイクになっています。
本編でもお話ししましたが、ドグマにハードルの高さを感じている方、そしてエアロロードに苦手意識があるような方に、ぜひ乗ってみて頂きたいですね。