ロードバイクを扱うメーカーは欧米が中心ですが、日本にもオリンピックにまで駒を進めたことのある実績を持つブランドが存在します。
それが、ブリヂストン・アンカーであり、日本人のためのスポーツバイク作りをコンセプトとしています。
今回はそんなアンカーのロードバイクの中でも、2018年にフルモデルチェンジを果たした「RS8」をご紹介します。
アンカーのロードバイクは日本人向けに作られている
アンカーはブリヂストンサイクルの競技用自転車のブランドで、日本屈指のプロサイクリングチーム「チーム・ブリヂストンサイクル」に機材を提供する関係にもあります。
チームは1964年に発足したブリヂストンサイクルの自転車競技部が原点なので、50年以上の歴史を持つ老舗と言えるレベルです。
アンカーはロードバイクの他にも、MTB、シクロクロス、室内競技用のトラックレーサーなど、競技用の機材が多くラインナップされています。
そして、もう一つのアンカーの大きな特徴は、「日本人向け」というコンセプトです。
冒頭でも触れましたが、ロードバイクを製造するメーカーは欧米が中心になりますので、どうしても自国民に合わせたサイズ設定をする分、日本人ではサイズが厳しいことがあります。
最近は小さめなサイズに意識を向けているメーカーもありますが、単に小さくしただけですと、例えば腕の短い日本人には不自然なサイズ感になります。
したがって、今回の主役RS8も、当然そういったことに配慮したモデルになっています。
アンカーのロードバイクのモデル分け
アンカーのロードバイクは、用途別にモデル分けがされています。
レーシングモデルの「RS」はハイエンドモデルのRS9がチームにも採用されており、近年は全日本選手権を制しています。
ロングライドモデルの「RL」はレース色を敢えて抑え、ロングライドに必要な快適性や安定感を重視したモデルです。
そして、バルジ成形やスピニングバテッドなどの技術を駆使した、アンカーこだわりのクロモリフレーム「RNC」の3シリーズに大別されています。
この内、RSとRLシリーズにはカーボンフレームとアルミフレームがあり、シリーズ名の後に付く数字で9と8がカーボン、6と3がアルミになります。
数字は大きい方が上位グレードですので、今回取り上げる「RS8」はレーシングモデルのセカンドグレードになります。
製品はフレームセット(フレーム+フロントフォーク)と、メインコンポにシマノ・アルテグラを採用した「RS8 ELITE」、105を採用した「RS8 EQUIPE」の2種類の完成車が用意されています。
アンカー「RS8」とハイエンドモデル「RS9」の違い
アンカーのロードバイク「RS8」は、チーム・ブリヂストンサイクルのメインバイクでもある「RS9」の形状を引き継いだ、レースモデルのセカンドグレードです。
そのため、深めの前傾姿勢となる前三角に、反応のよさを重視したコンパクトな後ろ三角の、レーシングジオメトリになっています。
しかし、RS8はあくまでセカンドモデルとして、ユーザーの裾野を広げるという使命もありますので、RS9の硬く軽い素材では無く、耐久性があって、しなやかなカーボン素材が採用されています。
RS9はレースの決戦用という趣であり、軽くてキレキレの反応を見せますが、反面もろさもあり、輪行などには少し不安もあります。
その点でRS8はレースの練習や普段使いなど、過酷な状況も視野に入れられているので、衝撃に強く頑丈なので、神経質にならなくて済む扱いやすさがあります。
また、全体的に剛性が高いRS9は硬めの乗り心地ですが、素材の剛性が抑えられているRS8は柔らかいとまでは言いませんが、反応のよさと乗り心地の快適さのバランスが絶妙です。
アンカー・RS8フレームの特徴
アンカーのロードバイク「RS8」は2018年にモデルチェンジを行い、前項でも触れましたバランスの取れたモデルになっています。
これはサドルを真ん中として、前側の三角と後ろ側の三角の剛性に意図的に違いを出していることにあります。
結論から言うと、前側は剛性を高くして推進力を高め、後ろ側は前作と据え置きにして、しなりを持たせ、乗り心地のよさを重視しているということになります。
チューブが集中するBB付近をまち付きの形状にすることで、強度を上げながらねじれを防いでいます。
また、ダウンチューブも大口径化され不要なねじれを抑える仕様になり、フロントの剛性は前作よりも25%アップしています。
ただ、これで後ろ側の剛性まで上げてしまうと硬いフレームになり過ぎてしまうので、据え置きとされています。
それでも左右非対称のチェーンステイや、扁平させた細いシートステイがスピードの伸びをしっかりと後押ししてくれます。
アンカー・RS8はヒルクライム向きのロードバイク
前項ではアンカー・RS8のフレームの特徴についてお話ししましたが、そういった特徴のロードバイクは「ヒルクライム」という登坂競技に向いています。
ヒルクライムは山の上り坂に設けられたコースで行われる競技で、全長20~30㎞の比較的短い距離で行われます。
この競技で重要なのは軽量であることと、適度な剛性感です。
RS8についてはまだ触れていませんが、特筆するほどの軽さではないにせよ、ヒルクライムには支障ない重さかと思います。
また、ヒルクライムでは軽いギアにして、ペダルをクルクルと回すような乗り方になりますが、剛性が高く硬いフレームは脚に来ますので、少し抑え気味のRS8は最適です。
さらに、適度なしなやかさがあり、脚力が不足していてもフレームがそれを補ってくれるので、前に進む力が弱くなりません。
そして、ヒルクライムは勾配のキツイ場所ではダンシング(立ち漕ぎ)を多用します。
RS8は前項でお伝えしたように前側の剛性が高く、ハンドルに力を込めてもたわんだりしませんので、バイクを左右に振りやすくなります。
このような要素が揃っているので、アンカー・RS8はヒルクライム向きと言えます。
アンカー・RS8のホイールを考える
前項ではアンカー・RS8がヒルクライム向きのロードバイクとお話ししましたが、練習やレースなどで脚力が付き、登り方にも慣れてくると、ホイールに不満が出るかもしれません。
RS8の完成車に付属しているホイールはシマノ製で、グレードは高くありませんが、普通に走っている分には必要十分なものです。
しかし、外周部分(リム)の素材が柔らかめなので、上からの加重やペダルに力を込めるような漕ぎ方をした際には、たわんで変形する可能性があります。
そうなると、パワーロスをするので、ペダルを漕いでも中々前に進んでいかないことになります。
そして、RS8付属のホイールは平均よりは重めのホイールですので、軽さが有利に働くヒルクライムではやはり不利です。
そのため、ヒルクライム向きの軽量である程度の剛性が高いホイールに交換したいところです。
その際におすすめのメーカーは、「フルクラム」と「マビック」です。
共にリムが硬めで剛性を意識した作りですし、価格もそこまで高額ではありませんので、検討する際の参考にしてください。
セカンドモデルはハイエンドモデルを凌駕している面もある
今回は、アンカーのロードバイク「RS8」をご紹介しました。
軽くて硬いハイエンドモデルRS9と比べれば、少しレーシーさは控えめですが、その分扱いやすさや乗り心地はむしろRS8の方に軍配が上がります。
また、ヒルクライムは競技に限らず、ツーリング途中で山道を走るのも、普段の道で上り坂を登ることも広い意味ではヒルクライムですから、そういった環境での使用にも適した一台と言えます。