ロードバイクのインプレ情報を見ていると、ハードルの高さを感じさせるメーカー、ブランドがあるもので、ピナレロはその傾向が強いように感じます。
フレームセットだけで100万円もするような機種もあるので致し方ないところですが、実はピナレロにも低い価格帯のバイクが存在します。
しかも、「ANGLIRU(アングリル)」などは、レースに特化しない広い用途も考えられるモデルです。
そんなピナレロのアングリルをご紹介します。
ピナレロ・アングリルは「グランフォンド」モデル
ピナレロのロードバイクは、「レーシングモデル」と「グランフォンド」モデルにカテゴリー分けがされています。
レーシングは総合的なオールラウンドのレースモデルであり、ツール・ド・フランスで個人総合4連覇中、「チーム・スカイ」のメインバイクになっているモデルもあります。
グランフォンドは100㎞以上のコースを走る自転車のマラソンのような競技でタイムを競いますが、勝負に固執せずロングライドを楽しむ人も多いレースです。
「アングリル」はそのグランフォンドのカテゴリーに属するバイクで、ピナレロの中で一番レース色が薄いモデルと言ってもよいでしょう。
また、レーシングモデルの「ラザ」と並び、ピナレロのカーボンフレームでは最も価格が安いバイクになります。(約26万円、詳細はのちほど)
究極のスピードというよりは、安定感や快適性が重視されているモデルであり、コンセプトは「いかにして長い距離を気持ちよく走れるか」です。
それはインプレの情報にも表れており、「ピナレロらしくない」「イメージが変わった」など、想像していたレーシーなものとは違うことを感じさせるようです。
ピナレロのロードバイク①上位モデル
ここでは、アングリルの詳細に移る前に、ピナレロのロードバイク全体について触れておきます。
フラッグシップモデルの「DOGUMA(ドグマ)」は、前項でもお伝えしましたがワールドチーム「チーム・スカイ」のエースバイクです。
特に「F10」は、2018年ツール・ド・フランスに加え、ピナレロの本拠イタリアのビッグレース「ジロ・デ・イタリア」も制し、直後に記念モデルが販売されるなど大いに盛り上がりを見せています。
ちなみに価格ですが、最高グレードの「Xlight」や、電子制御のサスペンションが付属している「K10 eDSS」などは、フレームセットだけで100万円前後の代物です。
ドグマに次ぐのは、2019で自身5回目のフルモデルチェンジを迎える「PRINCE(プリンス)」です。
ドグマF10の技術を受け継いだエアロロードですが、ホビーライダーに寄り添うハンドリングのしやすさや、乗り心地も加味された、ピナレロが一歩野に下りてきたイメージのモデルです。
それでも、シマノ・デュラエース搭載の「FX」は100万円を超えますので、価格的にはまだハードルが高いですね。
あくまでも価格だけの話ですが、他のメーカーであればこのプリンスの価格帯がフラッグシップモデルであることが多いです。
すなわち、ピナレロはドグマが飛び抜けているということで、インプレ情報がハードルの高さを伝えるのは、ドグマの凄まじいまでの性能と価格が主原因ということなのでしょう。
ピナレロのロードバイク②手頃なモデルもある
前項ではフラッグシップである「ドグマ」と、セカンドグレードの「プリンス」についてお伝えしました。
価格ではここまでが飛び抜けており、ここからは他メーカーと比較してもそこまで驚かないところに収まってきます。
エアロロードではミドルグレード扱いになる「GAN(ガン)」は、ドグマの前モデル「F8」の直系です。
生粋のエアロロードでありながら、プリンス同様やさしめの味付けもされていますし、あまり難しい技術は投入されずも、シンプルに空力性能を向上することが考えられています。
その分、シマノ・105搭載モデルであれば30万円前後という価格が実現できており、筆者個人的にはレーシングモデルのいち押しです。
そして、レーシングモデルは「RAZHA(ラザ)」が最廉価となりますが、このラザはエアロ形状に特化しておらず、ピナレロが隆盛をきわめ始めた20~25年前のフォルムを彷彿とさせるクラシック感もあります。
そして、このラザと姉妹機的な存在になるのがアングリルで、こちらもスッキリめのフォルムがインプレ評価でも好印象となっています。
ピナレロ・アングリルのフレームに対するインプレ評価
それでは、ピナレロのアングリルについて詳しく見ていきましょう。
冒頭でも触れましたが、アングリルはレース色が薄めで、ロングライドを楽しむモデルになっています。
フレーム形状は上体を起こして胸を開き呼吸を楽にする、アップライドな姿勢が意識されています。
ハンドルとサドルが「高く、近い」の関係にありますので、上体が起きますし、車高が高い分、ハンドルを高く設定することが出来ます。
また、サドルとの距離が近いことにより、ハンドルを支持するステムの突き出しを長くできるので、ハンドリングがマイルドで操作がしやすいというインプレ評価が多いです。
そして、ロングライドは疲労を溜めないことが重要ですが、疲労の元となる地面からの振動や段差などの衝撃を吸収することにも長けています。
フロントフォークはピナレロの象徴でもある「ONDA(オンダ)」のカーボンフォークで、クネクネと波打つ流線形が抜群の衝撃吸収性を発揮しています。
後ろ部分はもっと独創的で、シートステイの中央部分が大きく弓なりにしなっている「センチュリーライド」がバネのような役割となり、衝撃をいなし、振動を除去してくれます。
ピナレロ全体を知るショップ店員さんのインプレ情報では、1、2を争う乗り心地の良さとしているものもあるほどです。
アングリルにはインプレ評価の高い新シマノ・105が搭載される
ピナレロのアングリルには、2019年モデルから新シマノ・105「R7000」の搭載が決まっています。
早めに入手したユーザーさんのインプレ情報では、操作性の向上や、スッキリしたデザインが高評価を受けています。
アングリルは残念ながらクランクだけはダウングレード品になりますが、ロングライドでは重要な要素である、ブレーキが掛けやすくなったことに注目したいですね。
新105のSTIレバーは手とのフィット感を高めることが意識されており、全体的には少しコンパクトになりました。
そして、さらにブラケットポジションからブレーキレバーに指が掛かりやすい仕様にもなりましたので、ロングライド終盤で握力が低下してきても、しっかりとブレーキを掛けることができます。
また、前後の変速機(ディレイラー)も空力性能を考慮し無駄が省かれシンプルになったことで、トラブルの軽減も期待できます。
さらに、リアディレイラーのキャパシティが増えたので、より軽めのギアを持てるようになりました。
アングリルの標準装備は11-28Tですが、軽い方で30Tまで対応可能ですので、もう一段軽いギアを持てるのはロングライドの強い味方になりそうです。
ピナレロ・アングリルの試乗インプレまとめ
それでは最後に、ユーザーさんの使用感や試乗時のインプレについてまとめてお伝えします。
既にお伝えした部分もありますが、乗り心地の良さを伝えるものが多いです。
柔らかいというよりも、適度に路面の状況は伝わってくる感じですが、不快な突き上げまではいかないというところです。
これは、衝撃吸収一辺倒ではないという証明でもあり、アングリルはレース屋のピナレロらしく、ロングライドに適したモデルにしては反応がよく、硬めのフレームです。
それでもセンチュリーライドシートステイやオンダフォークの恩恵で、衝撃吸収性は高いので、不快な突き上げは来ないということです。
筆者も以前に知人のアングリルを借りて30㎞ほど走ったことがありますが、スピードに乗ってからの伸びがとても気持ち良かったことを覚えています。
また、上り坂で重心が後ろに下がった時にフレームが踏ん張ってくれるので、シッティングでもペダルが漕ぎやすかったです。
このように、アングリルは剛性のバランスがよく、根っこは快適性重視ですが、推進力も十分にあるので、多くの人を満足させるモデルと言えます。
快適性と推進力のバランスが絶妙
今回は、ピナレロのアングリルをご紹介しました。
ピナレロの中ではレース志向が薄く、長距離を快適に走るというモデルです。
しかし、そこはさすがにピナレロというところで、前に進む力強さは失われていませんので、グランフォンドなどのイベントでも十分に力を発揮してくれるはずです。