今や世界のロードレースシーンを先頭でけん引していると言っても過言ではないのが、「スペシャライズド」です。
そんな中今回は、創業以来製造を続けている「アレー」に注目します。
プロレースに使用されることはありませんが、アルミの総合モデルとして様々な顔を見せてくれています。
しかし、組み合わされることが多かったコンポ、シマノ・クラリスとのコンビがほぼなくなったのは気になりますので、そこも検証してみましょう。
「アレー」はスペシャライズド最古参の現役ロードバイク
スペシャライズドの創業は1974年ですから、気が付けばもう45年近い歴史があり、老舗とまでは言えませんが、キャリアは中堅以上になってきています。
現在も製造が継続されている、世界初の量産型MTB「スタンプジャンパー」で世界への扉を開いたメーカーで、長らくMTBのイメージが強かったです。
ロードバイクでは1979年に今回の主役「アレー」の販売が始まっていますが、世界のレースシーンへの参加はなく、ツール・ド・フランス初参戦は2000年までずれ込みました。
しかし、短い間に凄まじい進化を遂げ、現在はトップクラスのしかも複数チームに機材を提供するブランドにまで成長しています。
その一方で、アレーなどのアルミフレームも汎用性が高く、リーズナブルな価格での販売が継続されています。
そして、最近はスペシャライズドを含むアメリカメーカーが仕掛けた「アルミフレーム再興」の流れが世界的に広がりを見せており、各メーカーのアルミ成形技術の争いが面白いことになっています。
スペシャライズドの技術については後述しますが、それに伴ってなのかアレーとは長年のお付き合いであった、シマノのリーズナブルなコンポ「シマノ・クラリス」との関係が2017年から希薄になりました。
ホイールが650Cのモデルである「Allez Jr.」の一部に使用される程度となり、メインコンポとする機種はありません。
シマノのロードバイク用コンポ「クラリス」を知ろう
前項でお話ししたシマノのクラリスですが、シマノのロードバイク用コンポの中では実質最下位グレードに当たります。
一応その下に「ターニー」というモデルもありますが、ロードバイクの完成車でメインコンポになることはまれなので、実質クラリスが一番下と見てよいでしょう。
最高グレードのデュラエースはフルコンポともなれば20万円以上する代物で、プロのライダーの御用達でもあります。
セカンドグレードの「アルテグラ」は、デュラエースの技術をもっと幅広いユーザーに届けるのが目的なので、素材などのグレードをコントロールしてデュラエースの半値以下で提供されています。
あとはリアの変速段数が上記2モデルと同じ11速の「105」、10速の「ティアグラ」、9速の「ソラ」と続き、今回の主役であるクラリスはリア8速になります。
クラリスはフルコンポで3万円程のセットになりますので、完成車では10万円を切るものに採用されていることが多いです。
その点では、スペシャライズド・アレーの完成車に10万円以下のものが少なくなったのも、関係が希薄になった要因の一つかもしれません。
クラリスのR2000番へのモデルチェンジの要点
シマノのコンポは最高グレードのデュラエースで培ったノウハウを下のグレードに徐々に落とし込んでいくというやり方ですので、どのモデルも定期的にリニューアルされます。
直近では2018年6月に105がR7000番へリニューアルされ、デュラエース、アルテグラに次いでディスクブレーキ仕様が加わりました。
クラリスも2017年にR2000番へのリニューアルが行われました。
大きな変更点は、「クランクの4アーム化」「フロントディレイラーのロングアーム化」、そして「ワイヤーケーブル類のハンドル内蔵」になります。
クランクの4アーム化はそれまで5アームが主流だったところ技術が向上し、剛性を落とさないまま4アームでもチェーンリングを支持できるようになったということです。
アームが1本減った分、軽量化が図れています。
フロントディレイラーのロングアーム化は、ワングレード上のソラで変速性能が向上したことを受けて踏襲されたものです。
そして、ワイヤーケーブルのハンドル内蔵も上位グレードから脈々と受け継がれてきた技術であり、昆虫の触角のように見えることから揶揄されてきたケーブルの取り回しも、これで全コンポがハンドル内蔵になりました。
このようなリニューアルが行われましたが、先述通り2017年からスペシャライズド・アレーの完成車との関係が希薄になったので、アレーはメインコンポとして新型クラリスを搭載したことはないわけです。
スペシャライズド・アレーの前モデルを新クラリスでカスタム
前項でお伝えしましたように、新型クラリスR2000はスペシャライズドのアレーにはほぼ採用されていません。
しかし、2016年まではアレーにクラリスの使用がありましたので、今も乗っている方は多いかと思います。
その場合にはまだクラリスもモデルチェンジ前ですし、上記のような改善がされていないので、交換することで効果を得られる可能性は高いです。
例えば2016年モデルの「アレー E5」はほぼクラリスのフルコンポですので、前出したクランクやSTIレバーをR2000に交換することで効果は得られるはずです。
ちなみに、コンポで変速段数を上げるカスタムは費用と手間がかなり掛かってしまいます。
しかも、シマノで言えばクラリスから9速のソラに交換したところで、正直グレードアップ感は低く、最低でも10速のティアグラくらいまで上げないと効果が実感できません。
そうなると、ほぼ全て交換することになりますのでハードルが高く、下手をするとカスタムの費用で新車が買えてしまうなどという本末転倒なことが起こりかねません。
そのため、長く乗っていきたいということであれば、新クラリスのパーツを使ってカスタムしていくのが最善かと思います。
スペシャライズド・アレーのレベル向上でクラリスとの調和にずれが生じた!
前項では、シマノ・クラリスとスペシャライズド・アレーの関係についてお話ししましたが、先述通りこの組み合わせは少なくとも2018年モデルには存在しません。
これは筆者の個人的な見解ですが、スペシャライズドのアルミフレームのレベルが上がり、さすがに10万円以下で提供するのが難しくなってきていると推測できます。
そうなると、クラリスでは正直役不足感が出ますので、コンポのグレードも上げざるを得ないということになっているのだと考えています。
2018年モデルの最廉価は「アレーSport」の108,000円で、メインコンポは「ソラ」になります。
前項でクラリスとソラは性能にそれほどの差はないと申しましたが、リアが8速と9速という違いは、見た目のインパクトでは大きいです。
また、この両者は似たり寄ったりという表現をされますが、最下級グレードとブービーグレードという言葉の響きは、以外にも大きな差を感じさせるということなんですね。
ロードバイクはまずフレームありきで考える
最後になりますが、ロードバイクの完成車を選ぶ際のポイントをお話ししておきます。
スペシャライズドのアレーを参考にしますと、前項で取り上げた2018年の最廉価モデル「アレーSport」と上から2番目のグレードである「アレーElite」は全く同じフレームが採用されています。
それでいて価格に5万円以上の差がありますので、これは組み合わされているパーツの差ということになります。
確かにEliteはリア11速105がメインコンポですし、回転力に定評のある「DTスイス」のホイールではありますので、この差額はおかしいことではないです。
しかし、パーツは後からいくらでも交換ができますので、この場合はむしろSportが5万円以上安い金額で上位モデルと同じフレームであることを評価すべきと筆者は考えます。
しかも、この差額を後から自分の好きなパーツのカスタムに充てるとすれば、何も最初から5万円上乗せして、多少上のグレードに手を出す必要もないという考えもあります。
そのため、ロードバイクは金額に左右されるのではなく、まずはフレームに注目をして、どのグレードまで同じものを採用しているのかを確認することが大切です。
したがって、たとえコンポが最低グレードのクラリスであっても、さほど重要な要素と考えず、フレームありきで見ればよいのです。
クラリスとの関係はアレーのレベルが上がったことによる発展的な解消!
今回はスペシャライズドのアルミロードバイク「アレー」と、シマノのロードバイク用コンポ「クラリス」の関係性を考えてみました。
本文中でもお伝えしましたが、この組み合わせは事実上消滅しており、アレーのレベルが上がり、クラリスでは似つかわしくなくなってきたと推測されます。
ただし、クラリスはモデルチェンジによって確実に進化していますので、決して悪いコンポではないです。