スペシャライズドを代表するロードバイクである「ターマック」は、グランツールに投入されているレース機材でもあります。
2018年には11種もの完成車がラインナップされていますが、グレードはもちろんのこと、形状も世代をまたがっていますので詳しく見ていく必要がありそうです。
そこで今回は、そんなスペシャライズドのターマックを確認してみましょう。
スペシャライズドのロードバイクの種類とグレード
スペシャライズドのロードバイクは、カーボンフレームとアルミフレームに大別されます。
カーボンは、総合レーシングモデルの「ターマック」、エアロロードの「ヴェンジ」、エンデュランスモデルの「ルーベ」が代表的です。
そして、アルミはスペシャライズドの創業当初から販売が継続されている「アレー」が中心になります。
それぞれのモデルには、上から順にプロ仕様の「S-Works」・「Expert」・「Comp」「Elite」・「Sports」という名前でグレード分けがされています。
このグレード分けは完成車以外でも、サドルやタイヤなどにも採用されているスペシャライズド独自のものです。
中でもターマックはほぼ全てのグレードに完成車があるので価格の差が大きく、S-Worksは100万円を超える一方、最廉価モデルは20万円を切ります。
また、それぞれが別のタイミングでモデルチェンジされているので、フレーム形状が微妙に変わってきます。
スペシャライズドのロードバイク「S-Works」ターマックのここが凄い!
スペシャライズドのターマックは「山のターマック」という異名があるように、ヒルクライム性能が高いロードバイクであることでも有名です。
2017年のツール・ド・フランスにおいて、登りのスプリントとなった第3ステージを優勝したのが、スロバキアの英雄ペテル・サガンでした。
そのサガンが乗っていたのが、2017年モデルからフレーム形状が刷新されたS-Worksターマックです。
プロがレースで勝利したのと同じジオメトリのものが市販されるのも凄いことですが、一般ユーザーにとって最も大きいのはこのターマックが男女同一フレームになったことです。
スポーツバイクの女性モデルは、男性(兼用)モデルのサイズを小さくしただけのものもある中で、スペシャライズドは設計から専属スタッフが携わっています。
いわゆる女性の体型や身体の柔らかさを考慮したジオメトリを開発していくのですが、その経緯がありながら、今回あえて男女同一ジオメトリを採用してきた点が大いに注目されています。
ヘッドチューブからクランクの付け根までの長さを表す「リーチ」と、フレームの高さを表す「スタック」では、男女に大きな差は見られないということ。
また、身長の高い女性と低い男性が同じサイズに乗っても問題がないという検証結果から、同一フレームが生み出されました。
プロ選手仕様のロードバイクが具現化されたターマック「Expert」
前項でご紹介したターマックの新しいS-Worksモデルは、最新の男女共用ジオメトリに加え、最高級のカーボン素材を使用した正に究極のレースモデルです。
それだけに完成車でも5㎏台ではないかとも言われており(スペシャライズドは重量未公表)、一般ユーザーには次元の違うモデルです。
しかし、ロードバイクの世界はレースモデルがトレンドになり、その技術が一般ユーザー向けのモデルに落とし込まれていくものですから、注目しておいて損はないのです。
それが早速に具現化されているのが「Expert」グレードで、S-Worksと同じ最新のフレーム形状が採用になりました。
約43万円という価格ですが、ペテル・サガンのようなトッププロが使用したものと同じジオメトリのものが半値以下で手に入ると考えれば、驚くほどの高額でもないと判断できます。
2017年にモデルチェンジされたシマノ・アルテグラのフルコンポに、自社製の高級リムとDTスイスのハブで組まれたホイールもポイントが高いです。
ターマックはひと世代前のフレームも世界を制している!
ここまでご紹介したS-WorksとExpertが、2017年でフレーム形状が刷新されたモデルであり、現在のスペシャライズド・ターマックの最新フレームになります。
Expertの一つ下のグレードになる「Comp」は、モデルチェンジされる前の上位グレードのフレーム形状を踏襲しています。
もちろんこれもサガンを始めとするトップレーサーが、グランツールで使用した経緯のあるロードバイクです。
CompはExpertに比べカーボンの素材がワンランクグレードダウンして、ホイールのハブがDTスイス製から「フォーミュラー」製になるというのが大きな違いです。
ただし、ホビーライダークラスであればどこまでこの変化が分かるのか、という話であり、ひと世代前のフレームということさえ受け入れられれば、こちらを選んでもそんなに遜色はありません。
ただし、さらに一つ下の「Elite」になってきますと、フレームがもうひと世代前になりますし、カーボンの素材もS-Worksからは3グレードダウンしますので、さすがに別物と考えた方がよさそうです。
ターマックの中でも特にコスパの高いモデル
前項の最後にお伝えした「Elite」からは世代がさらにさかのぼりますが、それとて2012年デビューのフレーム形状ですから、古めかしさなどは皆無です。
それでもEliteは価格的に見て若干不利で、そこまで行くならあと5~6万円奮発してCompにした方がよいかというところです。
その点ではEliteと同じカーボン素材とフレーム形状ながら、20万円台前半の「Sports」に魅力を感じます。
コンポがシマノ・105メインとなり、クランクやブレーキにコストダウンは見られますが、この価格でリア11速なら、コスパはターマックの中で最も高いと言っても過言ではありません。
筆者の個人的見解ですが、スペシャライズドは少なくともロードバイクに関して、コスパを重視した物作りをするメーカーとは思えません。
その中にあってこのターマックのSportsは、ややコスパを意識したところが見られます。
また、タイヤが最近の完成車では珍しい23c(23mm)であり、ヒルクライムの入門機としても最適の設定です。
なお、最廉価モデルのターマック・MENはリア10速の仕様で価格が約19万円です。
フレーム形状と素材のグレードはSportsと同じですので、ギアの数がリア10速で十分というならこちらを選んでもよいでしょう。
スペシャライズドがターマックをさらに軽量化した理由とは
ターマックは先述通り山登りに強い特性を持っており、とにかく軽量です。
ロードバイクには「軽さは正義」と言う言葉がありますが、スペシャライズドの中ではターマックがその言葉に当てはまります。
その意識が強い証として、全11種類中9種が軽量のキャリパーブレーキモデルです。
その他の主力モデルはルーベが全10種類ディスクブレーキ、ヴェンジもキャリパーモデルはわずか1種類です。
はっきり言ってディスクブレーキ仕様に舵を切り出しているスペシャライズドの中では、ターマックがキャリパー最後の砦なのです。
また、これはあくまでも筆者の推測ですが、近年同じアメリカメーカーである「トレック」が「世界最軽量」を謳って「エモンダ」というモデルを投入しました。
両者は同じアメリカメーカーであり、創業時期もほぼ同じということで、長い間のライバル関係にあります。
そのトレックに世界最軽量を名乗られれば、スペシャライズドは黙っていられないということになり、2017年モデルで更なる軽量化を図ったと思われます。
ペテル・サガンは車体があまりにも軽量過ぎてUCIワールドツアーの規定値を下回ってしまうため、特殊な塗装をして重量を増やしたという話もあります。
軽いロードバイクを求めるなら「ターマック」
今回は、スペシャライズドの主力ロードバイクの「ターマック」についてお話しました。
3世代に渡るフレーム形状が存在しますので、それぞれに特徴があり価格だけでは決められない難しさがあります。
それでも、軽量というコンセプトは共通しており、一部を除いてキャリパーブレーキ仕様ということも決め手の一つかと思います。