ロードバイクやMTBは元々がレースの機材として開発されていますので、メンテナンスありきの乗りものです。
そのメンテナンスでも、足回りは割と頻繁に行うと思いますが、忘れがちなのがハンドル周りです。
特にフロントフォークはフレームの一部と思っている人が多く、分解してオーバーホールすることなどできないと思われているようです。
そこで今回は、フロントフォークのオーバーホールの時期や方法について確認してみましょう。
自転車にも時期を見てのオーバーホールが必要
自動車には法律で定められている「車検」がありますし、任意ではありますが、半年点検や1年点検などを受けている人も多いでしょう。
特に車検は、通らなければその自動車に乗れなくなりますから、半ば強制的にオーバーホールが行われます。
しかし、自転車にはそういった制度がないので、全く整備されていなかったとしてもそれだけでおとがめを受けることはありません。
百歩譲って、ある程度までノーメンテナンスが最初から想定されているママチャリなら良いですが、スポーツ自転車はその限りではありません。
日々のメンテナンスは当然のことですが、総点検となるオーバーホールも時期を見て行わなければならないものです。
実際に販売店では購入してから半年、1年での点検を勧めていますし、メーカーもそれを見越しています。
メーカーによってはフレームの永久保証などをしているところもありますが、それも定期的に正規販売店でメンテナンスをしていることが大前提です。
今回は忘れがちだからこそ、この際一気にオーバーホールまでしていただきたい、フロントフォークについてお話していきます。
フロントフォークは分解してオーバーホールする
今回は、スポーツ自転車のフロントフォークのオーバーホールを、時期を見て自力で行う方向で話を進めていきます。
そのためにまずはフロントフォークを含む、ハンドル周りの構造から説明します。
フロントフォークはハンドルと前輪を繋ぐもので、ハンドルが自転車の舵取りを行うようにする役目があります。
脚に当たる「ブレード」を前輪のハブに支持して、胴体部分である「ステアリングコラム」をフレームのヘッドチューブに挿入します。
そして、ヘッドチューブから突き出たコラムに、「ステム」というパーツを通して固定をし、ステムの先にハンドルを装着します。
このようにハンドルから前輪までがひとつの流れで繋がっていますので、フロントフォークのオーバーホールは言ってみれば「分解」です。
また、MTBなどは衝撃吸収機能である「サスペンション」が取り付けられていますので、益々メンテナンスの必要性が高くなります。
フロントフォークのオーバーホールの時期は回転具合による
フロントフォークは自転車の舵取り役とお話しましたが、ハンドルの回転が渋くなってきたらオーバーホールの時期かもしれません。
自転車は至る所に回転体が内蔵されています。
動力に関わるクランクやペダル、ホイールのハブには回転軸(シャフト)と軸受けの「ベアリング」が内蔵されています。
ベアリングはシャフトを円滑に回転させる上で欠かせないもので、自転車には球状の「ボールベアリング」が使用されています。
ただ、このボールベアリングは単独では支持させられないので、金属製のカップに入れる必要があります。
ただ、ボールをカップに入れると走行中に擦れてお互いが摩耗してしまうので、そこに潤滑用を挿してあげる必要があります。
この潤滑油は「グリス」といって、高回転でも飛び散らないように粘度の高いものが使用されています。
しかし、完全に密封されているわけではないので、長い期間が経てば抜けてしまうこともあります。
そこで定期的にグリスを挿し直すことが必要になります。
フロントフォークのコラムはハンドルを回すための軸であり、大きな意味ではハンドルも回転体のひとつです。
そのために、フロントフォークにももちろんベアリングが内蔵されているので、グリスを挿し直す必要があるのです。
フロントフォークのオーバーホールの時期は?
前項でも少し触れましたが、フロントフォークは回転体の軸としての役割があるので、回転が渋くなったりするとオーバーホールの必要ありというところです。
時期に関しては決まっているわけではないですが、1年に1度くらいは行うようにしたいものです。
使用する工具は、サスペンションなしのフォークなら六角レンチのみで、あとは新しいグリスがあればOKです。
ちなみに、ハンドル周りのオーバーホールをショップにお願いすると、大手サイクルチェーンでは3,000円~4,000円となっています。
ベアリングの調整などもありますので、勉強のために一度くらいはお願いしても良いと思いますが、定期的にとなるとバカにならない金額ですね。
後述しますが、多くのパーツが関連してくるので作業は割と大掛かりになります。
しかし、順序立てて行えば難しい作業ではないので、自力で行えるようにしておきたいものです。
フロントフォークのオーバーホール手順①
それでは、フロントフォークのオーバーホール手順を説明していきますので、ぜひ時期を見て行ってみてください。
今回はサスペンションのない、スポーツ自転車に使用されている一般的なフォークについてお話します。
上から順番に分解していきますので、まずはステム上部のアンカーボルトを六角レンチで緩めます。
緩めたら付いているキャップをボルトごと抜き取ります。
次にブレーキが付いたままですと完全に分解ができませんので、外してしまいます。
こちらも六角レンチで外せます。
外したらブラブラさせておくわけにもいかないので、ハンドルに括っておきましょう。
続いて、ステム横の固定ボルトを緩めてステムをハンドルごと抜き取ります。
フォークにはリング状のパーツがいくつか残っていますので、それらを外します。
適当な順番で取り付けられているわけではないので、外した順番通りに並べておいてください。
この時点でフロントフォークを外す準備は完了ですが、車輪が付いたままですと引き抜いたときに転がったりして危険なので、車輪も外しましょう。
あとは、コラムの根元を持ってフレームを押さえながら下に引けば、フロントフォークがフレームから外れます。
フロントフォークのオーバーホール手順②
フロントフォークが外れたら、パーツ類の清掃とグリスの充填をしていきます。
もし、ボールベアリングが見えているようなら外して清掃が可能ですが、何かでフタがしてあるような状態の場合は注意が必要です。
それは「シールドベアリング」といって、ボールベアリングをグリスと共に受け皿に入れ、上からシールでフタをしているというものです。
水や汚れが混入せず、グリスも流れないので基本的にはノーメンテナンスとされています。
しかし、最近ではこのシールを剥がして清掃・グリスアップをすることが推奨されている向きがあります。
メーカーは非推奨の立場なので、何かあっても自己責任になりますが、あまりにも回転が渋い場合は行う価値がありそうです。
ただし、シールをはがさず清掃だけで留めておくなら、中のグリスが流れないようにベアリングは洗剤を使わずから拭きにしてください。
各所の清掃・グリスアップをしたら、下から順番にパーツを戻し組み直していきます。
ステムを戻す際はハンドルの角度に気を付けて、仮止めで確認しながら作業をします。
また、特にカーボン製のフォークの場合は、本締めのときにきつく締めすぎると破損してしまう可能性がありますので注意してください。
最後にアンカーボルトでベアリングの当たり具合を調整しますが、シールドベアリングの場合は不要です。
それ以外の場合は、ハンドルの回転が渋すぎず、ハンドルがガタ付かない場所を探して固定をします。
オーバーホールともなると時期を見る必要がありますが、当たり調整は気になったらすぐに行った方が良いですね。
フロントフォークのオーバーホールは自力で
今回は、フロントフォークのオーバーホールについて確認しました。
忘れがちになる箇所ですので、できれば行う時期を決めておくと良いと思います。
お店に依頼すると少し意外なほど工賃が掛かりますし、そこまで複雑な作業ではありませんので、ぜひ自力で頑張って見てください。