ロードバイクにおいてホイールは走りの質を大きく左右する部分であり、正に駆動の要の存在です。
また、乗り手の体重を支える部分でもあるので、ホイールの硬さによって乗り心地に違いが出ます。
ロードバイクは乗り心地を重視したい場面もありますので、今回は乗り心地に特化してホイールを考えてみましょう。
ロードバイクの乗り心地は剛性がカギ
ロードバイクでは、ホイールに限らず「剛性」という言葉が良く使われます。
物質の変形しにくさを表す言葉で、変形しにくいものを剛性が高いと表現し、変形しやすいものを剛性が低いといいます。
一般的には剛性が高いものは硬いので変形しにくく、低いものは柔らかいので変形します。
フカフカのソファは人が座ればお尻の形に合わせてくぼんだりしますが、駅や公園にある木や鉄でできたベンチは座っても変形しませんよね。
また、ある程度勢いよく座ったときのことを想像していただくと、ソファは力を吸収するのでお尻にダメージはあまりありません。
これをホイールに置き換えて考えてみると、硬いホイールは変形しないので地面からの突き上げがダイレクトに伝わってきます。
一方、柔らかいホイールは、ソファの理論からも分かるように衝撃を吸収してくれるので、マイルドな乗り心地になります。
ただし、ご存知のように同じ車輪でも地面に直接触れているのはタイヤなので、乗り心地に関していえば、明らかにタイヤの方が影響は大きくなります。
ロードバイクのホイールで乗り心地を左右するのは「リム」
前項でロードバイクのホイール剛性が乗り心地に影響するという話をしましたが、ホイールの剛性を決めるのは、外周部分である「リム」によるところが大きいです。
リムが硬いか柔らかいかによって、スポークに掛かるテンションが変わってきます。
硬いリムなら、リム自体が乗り手からの加重を受け止めるので、スポークにテンションが掛からず、ホイールが全体的に変形しにくくなります。
一方、リムが柔らかいと加重を他に逸らすので、スポークにも力が掛かります。
何本も張られているからとはいえ、さすがにあの細いスポークに力が掛かれば、変形はしやすくなります。
リムの硬さはメーカーによって違いがあり、それがホイールの特徴にもなっています。
リムが硬いことで有名なのは、イタリアの専業メーカー「フルクラム」です。
特にリムにアルミ素材を使った製品には冠に「レーシング」と付けており、スピードや加速力を重視した作りになっています。
硬いホイールがなぜスピードや加速力に影響するかは、のちほど触れます。
一方、柔らかいことで有名なのが、日本が世界に誇るパーツメーカー「シマノ」です。
乗り心地がマイルドと言われる一方で、体重のある人ではたわみが気になるとも言われています。
ホイールのリムの高さでも乗り心地は変化する
ロードバイクのホイール剛性はリムの硬さとお話しましたが、リムの「高さ」でも剛性は違ってきます。
ホイールのカタログには必ずリムの高さが表記されており、ユーザーが購入を判断する上で重要な条件のひとつです。
リムを高くするにはそれだけ素材を多く使うので重くなりますから、剛性は高くなります。
また、前項でお話したように、リムで加重が受け止められれば、ホイール全体の剛性は上がります。
リムが高くなれば、それだけ受け止めるキャパが大きくなるということなので、変形しにくくなります。
さらには、リムを高くしてもホイール全体の大きさを変えるわけにはいかないので、必然的にスポークが短くなります。
同じ質量のものを長く伸ばせば細くなり、短くすれば太くなりますので、短いスポークは太く変形しにくくなります。
ただし、リムハイトを高くするには多くの素材が必要なため、アルミでは重くなりすぎます。
そのため、リムが高いホイールはカーボンに限られてきます。
カーボンを使ったホイールはただでさえ高額なのに加え、素材を多く使うことで一般ユーザーには手の届きにくい価格になってしまいます。
しかも、剛性が高いですから乗り心地もあまり良くないとなると、私のようなレース志向のないまったりライダーには縁遠いものになります。
ロードバイクの乗り心地は乗り手の感覚
ロードバイクホイールの剛性を中心に考えていますが、乗り心地というのは乗り手の感覚なので、千差万別と言っても過言ではありません。
例えば、体重100kgの人と50kgの人では、同じ剛性のホイールでも受け止め方がまるで違うはずです。
50kgの人が「硬くて仕方がない」と思うホイールは、100kgの人にとってみれば「たわみがなくて良い」となるかもしれません。
また、ホイールの硬さは走りの質にも違いが出ます。
硬いホイールは変形しない分パワーをロスしませんので、ペダルを漕いだ力がダイレクトに動力になります。
その分加速力に優れますし、小さな力でスピードを維持できるようになるので、一定のスピードで走り続ける「巡航」には有利になります。
しかし、遊びがないのでペダルを漕ぐ感覚は重くなりますし、力が逃げないので脚に大きな負担が掛かります。
変形するホイールは、逆にパワーロスをするので加速力は劣りますが、力を上手く逃がしてくれるので長時間走っても脚への負担が少ないです。
そのため、硬いホイールは乗り心地は犠牲にしても、とにかく速く走りたい人や体重が重い人向きです。
一方、柔らかいホイールはスピードはなくても良いので、まったり長時間乗りたい人向きとなります。
もちろん、フレームやタイヤなど他のものとの組み合わせもありますが、ホイール単体で考えるならそういうことになります。
乗り心地がマイルドと言われているホイールだが…
前項でお話したように、ロードバイクにどう乗るか=用途や、個人の体型や脚力によって適したホイールがあるということになります。
それでは、ここからは具体的なホイールを紹介しながら、ホイールにどんな適性があるのか確認してみましょう。
なお、今回はアルミリムホイールのみ紹介させていただきます。
【シマノ:WH-R9100 C24 Dura Ace(デュラエース)】
リムの高さ24mmのノーマルハイトのホイールで、アルミリムですがカーボンでラミネートされています。
その分かなり軽量になっており、アルミでは最軽量クラスです。
シマノ特有のリムの柔らかさに加え、このあと紹介する他メーカーのものに加えて後輪のスポーク本数が少ないので、剛性が低いようには思えます。
シマノは評価されている通り、確かにミドルグレードクラスまでは乗り心地はマイルドですが、リムの柔らかさが気になる人もいるでしょう。
しかし、これは「デュラエース」ですから列記としたレースモデルであり、十分な剛性も確保されています。
しかも軽量なので、特にヒルクライムなどの瞬発スピードが要求されるレースに最適です。
乗り心地では対極にある2つのホイール
ロードバイク用ホイールの紹介を続けます。
【カンパニョーロ:ZONDA(ゾンダ)】
「オールラウンドプレイヤー」という言葉が、最もしっくりくる定番中の定番ホイールです。
ペダルを漕ぐ感覚の軽さ、加速力、マイルドな乗り心地、巡航性、どれをとっても平均点以上という印象です。
秀でた特徴がないともいえますが、初心者の方の初めてのホイール交換で推奨されることが最も多いのは頷けます。
【フルクラム:RACING ZERO(レーシングゼロ)】
このホイールを一言で表現するなら「硬い」です。
とにかく、全てはスピードのために設計されているホイールです。
フルクラムは先述通りリムが硬めですし、ノーマルハイトではありますが、後輪はやや高めの30mmです。
加えてたわみの少ないアルミスポークが採用されているので、とにかく剛性が高くなる要素が満載です。
しかも、フルクラム独自のスポークの組み方で、素晴らしい反応を引き出すようになっていますので、異次元の加速力が体感できます。
「アルミリム最強」と評する人が多いのも、決して大げさではないと思います。
乗り心地の感覚には個人差がある
今回は、ロードバイクの乗り心地について、ホイールがもたらす影響を考えてみました。
地面に近いところで仕事をしていますので、影響がないわけではありませんが、乗り心地は個人の感覚の違いもあります。
そのため、一般的な評価に左右され過ぎずに、乗った感覚で選んだ方が満足度は高いはずです。