スペシャライズドのクロスバイクは、2018年より「Sirrus(シラス)」シリーズのみの展開になりました。
スペシャライズドの本拠地アメリカでは、近年フィットネスやダイエットの手段として、スポーツバイクに注目が集まっています。
そのような事情がある中で、ラインナップを狭めてきたのは少々意外ではありますので、そこも含めて今回はシラスを検証してみましょう。
スペシャライズドのシラスはスポーツ性の強いクロスバイク
スペシャライズドのクロスバイク「シラス」は2002年が新登場ですので、かなり歴史のあるモデルです。
クロスバイクは、ロードバイクとMTBの中間的な存在と言われていますが、シラスは多少の変遷はあったにせよ、基本的にはロードバイク寄りの資質を持っています。
詳しい特徴は後述しますが、2018年モデルも徐々にオフロードに傾いてきた姿勢は見られるものの、他メーカーに比べれば舗装路のスピードで勝負したいという思惑が見えます。
これは、同じアメリカメーカーの「トレック」にも言えることですが、今のアメリカの社会事情と無関係ではないでしょう。
近年アメリカは「肥満」が社会問題になっており、ダイエットが積年の課題になっています。
そこで注目されているのがスポーツバイク、中でも価格的に割と手ごろなクロスバイクがターゲットになっています。
そのため、運動性を重視するタイプが増えてきており、必然的にロードバイクに寄る、ということです。
スペシャライズドのクロスバイク2018モデル!スポーティタイプに集約
スペシャライズドの2017年モデルには、「アリバイ」というクロスバイクがありました。
ノーパンクタイヤにリアキャリアと泥除けが標準装備されており、機能性重視の機種でした。
このアリバイが2018年にはラインナップされておらず、わずか1シーズンのみの展開に終わりました。
最初から2017年限定と考えられていた可能性もありますが、もし需要がなかった(販売が不調)のだとしたら、世界的にもスポーツ性の高いクロスバイクに傾いている、ということが言えますね。
シラスは前項でもお伝えしたように、割と当初からスポーティなタイプではありましたから、そこに集約させたのが、今のスペシャライズドの考え方なのかもしれません。
また、スペシャライズドには、街乗りとしてクロスバイク的な乗り方に対応できそうなMTBがあります。
詳細は別記事を参照して頂きたいですが、細身のフレームに大口径(29インチ)のホイール、可動域がそれほど大きくないサスペンション。
まるで、街乗りを意識しているかのような仕様のMTBが数種類ありますので、MTB寄りのクロスバイクは必要なしと判断されたのかもしれません。
スペシャライズドのシラス2018モデルの特徴
それではここからは、スペシャライズドのクロスバイクに対する考え方を知る上でも、2018年モデルの「シラス」シリーズを確認していきましょう。
2018年のシラスは全7種類、その内、最廉価モデルの2つを除く5つがディスクブレーキ仕様になっています。
ディスクブレーキはMTBでは以前から主流になっていますが、2017年のツール・ド・フランスで、史上初めてディスクブレーキ搭載のロードバイクがステージ優勝を果たしました。
この勢いも手伝って、ロードバイクにもディスクブレーキ車が増えてきているところですから、クロスバイクでもこの流れは当然かと思います。
シラスには制動力が強い上に、ブレーキケーブルがない分、ハンドルの取り回しが軽くなる「油圧式」を採用しています。
これが10万円以下のクロスバイクに導入されてきているのが驚きで、今後ますますディスクブレーキに舵が切られそうな予感がします。
また、タイヤが30~32cとなり、おおむねワンサイズずつ太くなりました。
ここは、スポーツ性能に向かい始めている中では、クロスバイクらしさを残す部分かと思われます。
しかし、ロードバイクでも近年は25cが一般的になり、従来よりも太くなったわけですから、そんなに違和感はありません。
シラス2018モデルの中で別格の一台!
前項ではスペシャライズドの「シラス」について、2018年モデルの全体的な傾向をお話しました。
ここからは、個別の機種について確認していきます。
近年スペシャライズドでは、シラスの上位モデルにカーボンフレームを投入していますが、2018年も2種類がラインナップされています。
最上位モデルの「Men’s Sirrus Pro Carbon」は、クロスバイクとしては破格の29.7万円となります。
これはミドルグレードのロードバイク並みの価格であり、明らかに従来のクロスバイクの域は超えています。
何と言ってもその特徴が出ているのが、エンデュランスロードバイクのルーベに採用されている「Future Shock(フューチャーショック)」を搭載している点です。
これは、2017年にルーベがモデルチェンジした際の目玉の一つの機能であり、全く新しいタイプのサスペンションシステムです。
20㎜のトラベル量(沈み量)を持つスプリングが、フロントフォークのコラムに入っており、振動を減衰し衝撃を吸収してくれます。
また、シートポストも特殊な技術で振動をいなす仕様になっていますし、フレーム素材もルーベのミドルグレードと同じものが採用されています。
いわゆる、これはフラットハンドル版「ルーベ」であり、かなり本格的な「フラットバーロード」と考えてよいでしょう。
シラスのアルミフレーム+ディスクブレーキ車
前項でご紹介した機種は、クロスバイクとしてはかなり異色のモデルであり、ある意味マニアックです。
これは筆者個人の見解ですが、クロスバイクにはスポーツバイクにある垣根のようなものを、取り払う役目もあるはずです。
その意味では一つ下のグレードである「Men’s Sirrus Elite Carbon」も、マニアックとまで言えるほどではありませんが、かなり贅沢な仕様でハードルは高いと言えます。
そうなってくると、現実的な選択肢としては、アルミフレーム車ということになります。
「Men’s Sirrus Sport」はシラスの中でのミドルグレードであり、この下のグレードは2018年モデルではディスクブレーキ仕様ではありませんので、ここが分岐点となります。
フロントが2速のロードバイク仕様で、かなり重いギア比まで用意されており、機能性よりもスポーティさが優先されているモデルです。
また、8万円台前半という価格ながらフロントフォークがカーボン製であり、クロスバイクに必要な衝撃吸収性は十分です。
スペシャライズドの軽量アルミフレームの代表格とも言える「A1 SL」のアルミ合金製フレームであり、アルミロードバイクに負けないくらいの、シャキッとした反応のよさもあります。
さらに、自分が普段走る道中に砂利道などの悪路が多い場合や、天候に関わらず乗らなくてはならない通勤・通学などには、ディスクブレーキが強い味方になります。
ただし、コスパは納得なのですが、価格が少し高いのは事実ですので、他メーカーの機種も合わせて、検討する必要はあるでしょう。
Vブレーキ仕様でもれっきとしたシラスの一員
スペシャライズド・シラスの2018年モデルには、従来通りのVブレーキ仕様も残っています。(Sirrus Alloy – V-Brake)
ディスクブレーキとの比較で、制動面では少しだけ劣りますが、路面が乾いているコンディションであれば、それほど大差ではありません。
しかも、メンテナンスもディスクブレーキほど面倒ではありませんので、特にスポーツバイク初心者の方には、ありがたいことです。
フロントフォークがカーボン製ではなくなりますが、フレームの素材は上位グレードと変わりませんので、スポーツバイクの軽快感は十分に味わえます。
リア7速を不足、とする声もありますが、フロントが3速ですので街乗りのギア数としては十分ですし、高ギア比から低ギア比までバランスが取れています。
言葉は悪いかもしれませんが、クロスバイクとしての最低線はクリアしており、このレベルで6万円を切っていますので、コスパは高いと思います。
他メーカーとの比較も重要!
今回はスペシャライズドのクロスバイク「シラス」を確認しました。
2018年よりクロスバイクはシラスシリーズのみとなり、ますますスポーティ路線に向かっていく感じです。
決定打はディスクブレーキか否かということになりそうですが、自分が乗る用途をよく考えて、選択して頂きたいと思います。
また、どれを選ぶかは別として、今のクロスバイクのトレンドをより深く知る意味でも、他メーカーのものと比較することも大切でしょう。