スペシャライズドは今でこそ、ワールドツアーに参加するチームにロードバイクを提供するメーカーですが、評判を高めるきっかけはMTBでした。
世界初の量産型MTB「スタンプジャンパー」が大ヒットして、現在のMTBの礎となった、とも言われています。
ロードバイクに主流が移ったと思われる今でも、精力的にMTBの生産を続けていますので、今回はスペシャライズドのMTBについて見ていきましょう。
スペシャライズドは良くも悪くも評判が立つメーカー
スペシャライズドの創立は1974年ですが、わずか7年後の1981年に「STUMPJUMPER(スタンプジャンパー)」が発売されており、MTBへの素早い対応が伺えます。
このモデルは「新しい自転車の文化を作った」とまで評価され、アメリカを代表する博物館である「スミソニアン」の永久所蔵品に加えられることになったほどです。
また、スタンプジャンパーは日本の「アラヤ工業」によるOEM生産であったことも有名です。
アラヤはこのOEMで取得した技術を活かし、自社のMTBとして「マディフォックス」を生産・販売しました。
その後マディフォックスは国産MTBの主力モデルになったことから、結果としてスタンプジャンパーは日本のMTB界にも大きな影響を及ぼしたことになります。
スタンプジャンパーは現在(2018年)も販売が継続されており、ミドルグレードの定番として人気が高いモデルです。
ただ、スペシャライズドは良くも悪くも評判になるメーカーでもあります。
有名スポーツバイクメーカーでは考えられない、ディスカウントストアー向けの商品を展開しようとしたこともあります。
こういったことでも市場をハラハラさせる存在であり、革新的な技術を生み出す原動力も、こんな攻撃的な性格にあるのかもしれません。
スペシャライズドのMTBのこだわりが「29er」に見える
スペシャライズドはMTBの世界では老舗中の老舗だけあり、プロが使用するハイエンドモデルから、10万円を切る製品まで幅広いラインナップです。
中でもこだわりを感じるのは29インチのMTB、通称「29er」の豊富さです。
現在のMTBの世界ではレースでのオールマイティさや、普段使いでの小回り性などが受けて27.5インチが主流になっています。
そのひと世代前には、ロードバイクの700cにも通ずる29インチがスピード系のMTBとして、クロスカントリーのレースを中心に栄えた時代がありました。
「29er」という特別な呼称まであるほど、当時は大変評判が良く、一般市場でも街乗りMTBとして重宝されていました。
しかし、レースでは27.5インチ、街乗りではクロスバイクの台頭により一気に市場から後退してしまいました。
その状況の中でスペシャライズドは、プロ仕様の「S-Works」モデルにも29erを残す一方、エントリーグレードのライトなモデルにもラインナップさせるこだわりを見せています。
筆者は、街乗り車としてMTBを推奨する一人なので、これは嬉しい限りです。
ですから、29erはクロスバイクのライバルとしておすすめしています。
MTBの「フルサスペンション」と「ハードテイル」の違い
スペシャライズドのMTBはラインナップが豊富なので、上級者から初級者までユーザーさんの幅も広くなります。
スタンプジャンパーはMTBらしいMTBで、本格的な「山」専用車というイメージが当てはまります。
また、スタンプジャンパーはフロントサスペンションだけではなく、リアにも衝撃吸収の機構を持つ、「フルサスペンション」というタイプになります。
ゴツゴツした岩があるコースや、悪路でスピードが出る、という山の下りなどの環境では、フルサスペンションの効力が十分に発揮されます。
ですから、本格的にオフロードを極めていきたいという方は、フルサスペンションという選択もありです。
しかし、普段使いで街でも乗る、むしろ街乗りの比率のほうが高い、という方はフルサスペンションにこだわる必要はありません。
フロントサスペンションのみのタイプを「ハードテイル」と呼びますが、MTBではこちらの方がどちらかと言えばスタンダードで評判も良いです。
街中の段差や砂利道、防波堤の上の未舗装路など、街乗りで想定できる悪路ならフロントサスペンションだけでも、十分に衝撃を吸収してくれます。
MTB最初の一台にはアルミフレームを
MTBはハードな路面状況で乗ることが多いバイクなので、転倒や落車はつきものです。
それだけに、不慣れな内はその機会も多くなるので車体が丈夫な必要があります。
そうなるとフレーム素材は「アルミ」が最適で、街乗り車として考えても、金属の中では軽い部類のアルミが優秀です。
スペシャライズドにも、前出のスタンプジャンパーを始め、評判の良いアルミMTBが揃っています。
スタンプジャンパーは30万円台で、アルミフレームとしては上級モデルですが、「CAMBER(キャンバー)」であれば、20万円台前半でフルサスペンションモデルが手に入ります。
フルサスでは最廉価モデルですが、フロントサスペンションのストローク量(上下に動く幅)が130㎜ありますので、初級モデルとしては十二分の性能です。
しかも、フロント・リア共に、必要に応じてサスペンションの動きを止められる「ロックアウト」機能がありますので、スピードを出す走りにも対応します。
山道や悪路多めの走行が想定される方は、最初の一台として視野に入れたいですね。
スペシャライズドのMTB!アルミのハードテイル車の評判が良い
引き続き、評判の良いスペシャライズドのアルミMTBについてお話しますが、続いては「ハードテイル」車をご紹介します。
先述通りハードテイルは若干街乗り多めという方に向いたタイプで、初心者さんにも選んで頂きやすいです。
リアにもサスペンションが付いていると、独特な弾むような乗り味になり、好き嫌いが出ますが、ハードテイルはそこまで特異な感じはないと思います。
スペシャライズドでは、主流の27.5インチであれば「PITCH(ピッチ)」、29インチであれば「ROCKHOPPER(ロックホッパー)」がおすすめです。
ピッチはサスペンションのストローク量が80~100㎜と少ないですし、定番ほどの重いギアも積んでいません。
10万円を切る価格からしても、イメージとしてはクロスバイクに近いタイプです。
それだけに街乗りに適していますが、もちろんMTBとしての基本から外れているということはないので、MTBデビューにはもってこいです。
また、ロックホッパーは、ピッチにもっとスピードの要素を加味した「クロスカントリー」タイプのMTBです。
大口径の29インチでサスペンションのストローク量も少なめ、MTBの中では前傾姿勢が深めになるフレーム形状です。
クロスカントリーのレースを目指す方はもちろん、普段使いなら少し長距離が予想される通勤・通学にも向くタイプです。
スペシャライズドの女性用モデルは専用設計で評判が良い
スペシャライズドのMTBは、女性にもとても評判が良いです。
一般的な女性専用モデルは、ユニセックス(男女兼用)モデルと同じ形状で、少し小さめのサイズを用意し、ハンドルとサドルに女性専用品を使用するくらいです。
しかし、スペシャライズドはフレーム設計の段階から女性用モデルの専門家が携わっていきますので、女性専用の設計ということになります。
そのこだわりはラインナップにも表れており、S-Worksモデルから、初心者グレードまで全てにおいて女性専用車が用意されています。
スペシャライズドでは女性向けのライドイベントや写真コンテストなども充実しており、「女性にもっとスポーツバイクに乗ってもらいたい」という意志を感じます。
MTBはスポーツバイクの中でも少しクセがあってハードルが高い印象があるかもしれませんが、そこに一歩踏み込む際に、スペシャライズドは最適のメーカーかもしれません。
スペシャライズドのMTBへの真摯な取り組みが見えた
今回はスペシャライズドのMTBについて、お話しました。
MTBでは長い歴史を持つメーカーなので、そのこだわりが、良い評判に繋がっているのです。
フルサスペンションの機種がこれほど多いメーカーも中々ないですし、女性専用車に設計段階から専門家を入れるのも珍しいです。
初心者の方がスムーズに入っていけるモデルも充実していますので、最初の一台にぜひ、検討したいメーカーです。