ロードバイクのタイヤの色は、言うまでも無いかもしれませんが圧倒的に「黒」が多いです。
黒には黒である理由があり、日本の場合、自動車やオートバイでは、黒色のタイヤ以外を公道で使うのは法律で禁じられています。
しかし、自転車では禁止されていませんので、カラータイヤも市販されています。
例えば、イタリアの老舗「ビアンキ」のロードバイク乗りには、象徴である「チェレステ」カラーのタイヤを求める声も多いです。
ロードバイクのタイヤはなぜ黒い?
今回はロードバイクにおけるカラータイヤの是非を考えていきますが、まず自転車のタイヤがなぜ黒いのかからご説明します。
タイヤの表面がゴムで出来ているのはご存知のことと思いますが、常に地面と接し摩耗している状態です。
輪ゴムなどの普通のゴムは生のゴムに硫黄などを混ぜて強度を高めていますが、それではタイヤのような過酷な環境には耐えられません。
そこで、タイヤに使用されるゴムには「カーボンブラック」という、黒い炭素の粒が配合されています。
カーボンブラックを混ぜることで飛躍的に強度が上がり、タイヤに使えるゴムになります。
このカーボンブラックは少しでも配合されると黒くなるため、カラータイヤには使用できません。
そのため、以前はカーボンブラックの配合されていないカラータイヤは強度面で落ちるとされ、危険性が指摘されていました。
しかし、現在はカーボンブラック無しでも、自転車用なら強度を保てるという考え方も広まってきています。
理由については後述しますが、今回のテーマであるチェレステなどのカラータイヤが、見直されていると言っても良いでしょう。
ロードバイクのタイヤは黒でなくてはいけないのか?
現在、多くのタイヤには、炭素と同じような性質を持つ「シリカ」という物質が配合されています。
タイヤに配合されている成分量としては、むしろカーボンブラックよりもシリカの割合の方が高いほどです。
カーボンブラックは強度や耐久性には非常に優れていますが、分子同士が強力に結びついているので摩擦が大きくなり、転がり抵抗が増えます。
そこで、転がり抵抗を低減させるためにシリカを加えるのですが、シリカにはカーボンの分子を変形させやすくする性質があるので摩擦が減ります。
また、シリカは炭素と同じような性質と言いました通り、ゴムの強度を上げる効果も中々のものがあります。
したがって、理論上はシリカを配合しておけばカーボンブラック無しでも運用は可能ということになります。
そのため、自動車やバイク程の強度がいらない自転車なら、カラータイヤでも大きな不安は無いことになります。
しかし、昔からのタイヤ=黒のイメージは強烈で、簡単に覆るものでは無いので、需要が少ないためメーカーもラインナップしないという図式です。
ビアンキのロードバイクユーザーなどは、タイヤも「チェレステ」カラーにしたいという要望が多いのですが、選択肢が少ないのが現状です。
チェレステとはどんな色?
ここまで「チェレステ」という言葉を数回出していますので、気になっている方もいらっしゃると思います。
チェレステは色の種類の一つであり、スポーツバイク乗りにはすっかり定着しているイタリアの「ビアンキ」を象徴する色です。
ほぼすべての車種のボディーカラーにチェレステがあり、様々な部分に挿し色として使われています。
水色に緑を混ぜたような鮮やかな色で、「職人さんがその年のミラノの青空を見て色を決めている」という話もあります。
それを裏付ける話として、ビアンキショップの店員さんは同じモデルでも毎年、色の違いがあると言っています。
それほどのこだわりを見せるビアンキですが、さすがに大量生産されていないカラータイヤを使用するのは難しいと見えます。
そもそも、これはビアンキに限ったことでは無く、ロードバイクの完成車のタイヤにカラータイヤを採用しているメーカーはほぼ皆無です。
チェレステカラーのロードバイク用タイヤ
ところで、市販のロードバイク用タイヤにチェレステカラーの物はあるのでしょうか?
結論から先に言いますと、「種類は少ないが探すのが困難なほどマイナーな感じでは無い」というところです。
例えばメジャーどころでは、「パナレーサー」の【カテゴリーS2 】がカラーバリエーションの多さで頭一つ抜けた存在です。
チェレステというカラーはありませんが、「グリーン」が近い存在です。
パナレーサーの中ではグレードが下位グループなので賛否両論はありますが、危険性を伝えるインプレは、ほぼ見られません。
ビアンキのバイクに合わせている人が多く、需要の高さを伺わせます。
また、世界的タイヤメーカーである「ブリヂストン」のスポーツバイクブランド「アンカー」にもカラータイヤがあります。
【EXTENZA BICOLORE (エクステンザ ビコローレ)】は、接地面全体では無く左右にライン的に着色されています。
こちらも危険性を伝えるインプレは見当たらず、乗り心地の良さを伝える物が多いです。
チェレステをサイドラインとして挿し色したタイヤもある
ロードバイク用のカラータイヤは、地面との接地面に着色されている物を指します。
接地面に色が付いていることで、以前はグリップ力が弱く滑りやすいと言われていました。
現在は先述通り、そこまでの性能差は無くなっていますが、カラータイヤに依然として否定的意見が多いのは確かです。
しかし、タイヤでインパクトを出したいという気持ちも分かりますし、ビアンキのロードバイクにチェレステを合わせたいと言う意見も納得できます。
そこでおすすめなのが、接地面では無くサイド部分にカラーラインの入ったタイヤです。
百歩譲ってカラータイヤが耐久性やグリップ力で劣るとしても、サイドならさほど影響はありません。
それを証拠に、多くの主要タイヤメーカーがサイドライン入りのタイヤを販売しています。
見た目の問題としても、ロードバイクを人に真正面から見られることは少なく、大抵は横から見られるので、サイドラインでも十分インパクトはあります。
ロードバイクのタイヤは安全面が最優先
ロードバイクは嗜好品の一つですから、見た目が重要なのは確かです。
見た目が気に入らないと所有欲が薄れ、結局、短期間で手放すことになり兼ねませんので、重要な要素であることは間違いありません。
そのため、ビアンキのロードバイクにチェレステのタイヤを合わせるというのは、とても大切な発想です。
しかし、タイヤに関しては見た目以上に安全面を重視しなければなりません。
走行中にタイヤにバーストなどの大きなトラブルがあれば、大惨事になるのは目に見えていますからね。
レース用のタイヤなどは、とにかく良く転がることが最優先で、言葉は悪いですが耐久性やパンク耐性は二の次です。
そういったタイヤを普段使いで使用すれば、少し異物が刺さったくらいでパンクしてしまうこともあります。
また、あっという間にすり減って滑りやすいタイヤになってしまうことも考えられます。
安価なタイヤは、何かを犠牲にしているから価格を安く出来ていると思った方が良いです。
安価なタイヤは評判を落とさないようにするため、耐久性やパンク耐性を重視しますが、特殊な技術はコスト的に採用できません。
したがって、極端にゴムを厚くしたりするしかないので、かなりのヘビー級になるのが一般的です。
そうなってくると犠牲になるのはスピード面ですが、それであれば安全面に支障はないのでまだ良いです。
しかし、グリップ力が低下すれば黙ってはいられません。
滑りやすいタイヤは何より危険ですし、ブレーキもまともに効かない可能性があります。
したがって、ロードバイクのタイヤは、ある程度のグレードの物がおすすめになります。
タイヤの安全性を色で判断する時代は終わった
今回はロードバイクのタイヤに付いて、主に色を中心に考えてみました。
以前よりもカラータイヤのレベルは上がっており、性能面も安全面も不安要素が少なくなっています。
したがって、カラータイヤだから危険という考え方は薄れつつあり、選択肢の一つにしても良い時代だと言えます。
そもそも、黒タイヤでもグレードが低ければ危険性は高いので、色の問題では無いかもしれません。