ロードバイク用のホイールは、各メーカーがしのぎを削り合う、群雄割拠の世界です。
世界4大メーカーと言われる中でも、成長が著しいのがフルクラムです。
特に、アルミリムホイールのハイエンドモデルである「フルクラムレーシングゼロ」は、アルミ最強とも言われています。
今回は、そんなフルクラムレーシングゼロをご紹介します。
カンパニョーロがフルクラムを立ち上げた理由
「フルクラム」は、ロードバイク乗りなら知らない人はいないであろう、あの世界的パーツメーカー「カンパニョーロ」の子会社です。
フルクラムは、ホイール専業メーカーですが、発足の経緯にはカンパニョーロの対シマノ向け戦略がありました。
ホイールのハブに装着されているフリーボディ(以下フリー)には、大きく分けて「シマノ用」「カンパ用」の2種類があります。
これは、フリーに取り付けられるリアギアのスプロケットの形が、シマノとカンパでは違うので、分別されています。
そのため、シマノ製のコンポのユーザーは、カンパのホイールは使用できませんでした。
そこで、カンパは、何とかシマノユーザーに自社のホイールを使って欲しいと考えました。
しかし、公然とシマノ用のフリーを自社のホイールに取り付けるわけにもいかなかったので、「フルクラム」を立ち上げることになりました。
それを証拠に、結成当初のフルクラムのホイールは、シマノ用のフリーのみの販売でした。
今でこそ、フルクラムにカンパ用のフリーもありますし、カンパにシマノ用のフリーもあります。
フルクラムは、当初「シマノへの媚売りメーカー」などと揶揄されましたが、今では親会社のカンパに肩を並べるほどの、人気メーカーに成長しています。
代表的なホイールは「フルクラムレーシングゼロ」で、特にアルミリムモデルは、クラス最強の呼び声もあります。
フルクラムのロードバイク用アルミホイール
「フルクラムレーシングゼロ」という名前でも分かるように、ロードバイク用のアルミリムホイールには、全て冠に「RACING(レーシング)」が付きます。
グレードの高い方から順に、「ゼロ」「3」「クワトロ」「5」「7」となります。
クワトロは、イタリア語で「4」ですから、基本的には全て冠+数字で表されています。
グレードで分けるとするならば、「7」と「5」が最下位クラス、「クワトロ」が下位クラス、「3」がミドルで「ゼロ」がハイエンドとなります。
「クワトロ」は、リムハイト35mmで、他と一線を画しているので、置いておくとします。
そうなると、「5」・「7」の下位モデルと「3」・「ゼロ」の中~上位モデルには、大きな差があります。
後述しますが、フルクラム独自のスポークの組み方は「3」と「ゼロ」(「クアトロ」)のみで、「5」・「7」には採用されていません。
また、「3」と「ゼロ」は、ベアリングがカップ&コーンですが、「5」・「7」(「クアトロ」)は、シールドベアリングです。
どちらが優れているかは別として、フルクラムのカップ&コーンのカップは、セラミック製のボールベアリングに対応できるようになっています。
「ゼロ」は、実際にセラミックボールですし、「3」もセラミックにグレードアップできるということです。
ロードバイク用ホイールフルクラムレーシングゼロのラインナップ
現在、フルクラムレーシングゼロの名の付いたロードバイク用ホイールは、全部で4種類あります。
ノーマルな「レーシングゼロ・C17」は、リム内径17mmと、流行りのワイドリム化が図られています。
「レーシングゼロ・コンペティション」は、クリンチャーとチューブレスタイヤの兼用リムを採用しています。
また、CULTというグリスのいらないベアリングなので、ホイールの回転力が一層強化されていると耳にします。
ただし、このベアリングだけで、ノーマルのレーシングゼロよりも4万円ほど高くなるので、ノーマルで十分という人も少なくありません。
「レーシングゼロ・ナイト」は、リムにプラズマ電解処理がされているので、カーボンのように黒いリムになります。
詳しい科学的なことは分かりませんが、専用のブレーキシューを使うことで、天候に左右されないブレーキングが可能になります。
ちなみに、カンパニョーロの「シャマル・ミレ」やマビックの「キシリウムプロ・エグザリット」も同じ処理がされています。
ただし、これもノーマルより3万円以上高くなります。
あとは、「レーシングゼロ・カーボン」でカーボンリムのホイールになります。
フルクラムレーシングゼロの特徴
フルクラムのロードバイク用ホイールは全体的に剛性が高く、硬めの乗り心地が特徴です。
中でもフルクラムレーシングゼロは、アルミスポークを採用しているので相当な硬さです。
アルミリムのホイールは剛性もそうですが、コストの問題もあり、ほとんどがスチール製のスポークを採用しています。
アルミとスチールではアルミの方が硬く、荷重があっても、たわみが少ないので、硬いホイールに仕上がります。
また、たわまないホイールは、ペダルを漕いだ力がロスなく、ストレートに動力になります。
さらに、フルクラムレーシングゼロは、「2:1 ツー・トゥー・ワン スポーク・レシオ」という、独自のスポーク組みの技術を採用しています。
後輪の駆動部分であるフリー側に、反対側の2倍のスポークを配するというものです。
その分、漕いだら漕いだだけ、前に進むような反応の良さが生まれます。
また、パワーロスが少ないホイールは巡航性が高いので、平坦な舗装路では、とても有利になります。
しかし、硬いということはクッション性がありませんので、地面からの振動をダイレクトに伝えます。
そのため、乗り心地はあまり良くありませんので、ロングライドでは少し疲れが出るかもしれません。
フルクラムレーシングゼロはどんなロードバイク乗りに向くホイール?
前項で挙げたフルクラムレーシングゼロの特徴を踏まえ、どんな人やシーンに向くホイールなのか考えてみましょう。
まず、脚力がある人でないとキツイと言われるのですが、これはどこまでの程度かが難しく、何とも言えないところです。
ただし、自分が貧脚や非力と自負しているような人は、避けたほうが良いかもしれません。
このクラスのホイールの中では、剛性が高いのは事実です。
そのため、ホイールのたわみが気になるという人に向くのは、間違いありません。
また、ロードバイクのヒルクライムに向くホイールとも言えます。
全体の重量は超軽量とまでは言えないですが、リムはかなり軽いほうですので、坂の上りには優位です。
さらに、これだけの剛性の強さがあれば、ダンシングなどでペダルにトルクを掛ける乗り方にも、十分応えてくれます。
ヒルクライムでなくても、下り坂ではセラミックベアリングの回転力の恩恵が感じられるので、山が趣味な人にも向くと思います。
フルクラムレーシングゼロにはデメリットもある
フルクラムレーシングゼロが適しているシーンを考えていますが、癖の強いホイールなので、不向きな状況も考えなければいけません。
例えば、周りの景色を見ながら、まったりと長い距離を走るようなホビーライドには、強いて選ぶ理由が見当たりません。
地面からの振動は、それなりに伝わってきますし、柔らかいホイールに比べれば、脚にくるのは確かです。
そういった乗り方をする人は、もう少し剛性が低く、柔らかめの乗り心地を求めたほうが幸せです。
また、これは走りに直接関係することではありませんが、レーシングゼロ=高価というのは、知れ渡っています。
そのため、盗難の危険性が高くなります。
特に、通勤や街乗りで自転車を停めてから、長い間その場を離れるような場合は危険です。
厳重に防犯対策をしていると思っていても、ロードバイク専門に狙ってくるような人は、対策の上を行く可能性があります。
レーシングゼロに限ったデメリットではありませんが、高級品という意識はしておきたいですね。
フルクラムレーシングゼロは一度は試したいホイール
今回は、フルクラムレーシングゼロのご紹介をしました。
改めて確認をしましたが、反応が良くて速いホイールであるという印象は、変わりません。
しかも、ワイドリム化によってタイヤの剛性まで上がるので、異次元の加速力が期待できそうです。
硬さに拍車が掛かるのは、必ずしも歓迎とは言えませんが、一度は体感していただきたいホイールですね。