ロードバイクを使って行う競技のひとつに「ヒルクライム」があります。
山道や丘陵の登り坂に設定されたコースを走る競技ですが、ホイールが重要なカギを握っています。
レースの入門編として人気の高い競技なので、初心者の方がどんなホイールが良いのか迷うこともあるでしょう。
そこで今回は、ヒルクライムに適しているのは、どんなホイールなのかを考えていきます。
ロードバイクのヒルクライムとは?
ロードバイクの平地競技は、空気抵抗を低減する意味からも、集団走行になります。
集団の中での駆け引きがありますし、他者との接触の危険性もあるので、ある程度の経験が必要になります。
しかし、ヒルクライム競技は、脚力で大きな差が付くので、集団走行になりずらいのが特徴です。
差が付くということは、マイペースで走れるということにもなるので、レースの入門編として初心者に人気の競技です。
重力に逆らって登っていくので、筋力で高速域を維持する平地レースとは違い、小柄で軽量な選手が活躍しやすくなります。
機材にも同じことが言えるので、軽量が有利なのは確かです。
そのため、トップクラスのレースではカーボンフレーム車が大半ですし、ホイールもカーボンリムになります。
ただ、自転車を担いで坂を登るわけではないので、単に車体が軽いことだけがヒルクライムで勝つための要素ではありません。
ヒルクライムはホイール剛性が重要
自転車のホイールは、上から乗り手の体重が掛かるので、どうしても変形してしまいます。
変形するとホイールが横にたわんでしまうので、ペダルを漕いだ分の力が逃げて、エネルギーのロスになってしまいます。
特にロードバイクのヒルクライムでは、立ち漕ぎになることもあるくらい、力を込めてペダルを漕ぎます。
そうすると、余計にホイールがたわみ、漕いでも漕いでも力が伝わらず、前に進んでくれないことになります。
そのため、ヒルクライムには、なるべく変形しずらいホイールが適していることになります。
物質の変形しにくさを表す言葉が「剛性」ですが、フレームやホイールのインプレなどで、よく目にする言葉だと思います。
剛性が高いは、変形しにくいことを表し、剛性が低いは、変形しやすいことを表しています。
フカフカのソファーに座ると座った部分がくぼみますが、硬い木の椅子に座っても、くぼむことはありません。
そのため、木の椅子は剛性が高く、ソファーは剛性が低いということになります。
ホイールのリムが高くなるとヒルクライムでは
ロードバイクのホイールの全体の剛性は、ほとんどがタイヤをはめる部分である、リムで決まります。
リムの剛性は素材でも違いますが、最も分かりやすいのはリムの高さです。
リムを高くすると、縦剛性が高くなり、荷重に耐えられるようになります。
そうなると、スポークにもストレスが掛からないので、ホイールの全体剛性が高くなります。
この理屈からすると、リムが高いホイール(ディープリムと言います)は、ヒルクライム向きではないかと思われがちですが、そうはいきません。
ディープリムは、低速で走っていると、横風に弱いという特性があります。
また、ホイールの外周が大きくなるので、漕ぎ出しがとても重くなります。
坂の登りは当然低速ですし、漕ぎ出しが重くては、坂では前に進めず話になりません。
ディープリムはカーボン製が多く、それなりに軽量化は図られています。
そして、高速ではスピードの維持に長けていますので、プロレーサーの中には山岳ステージでも、ディープリムを使用する選手がいます。
しかし、プロの脚力あっての選択ですから、ホビーライダーのヒルクライムには不向きでしょう。
剛性はメーカーによって異なる
ここまでの話をまとめますと、ロードバイクのヒルクライム向きのホイールは、軽量で剛性が高いものが理想的ということになります。
それを踏まえて、まず重量を考えると、軽量ホイールはカーボンリムということになります。
フレームもそうですが、金属ではないカーボンのほうが、軽量になるのは当然です。
ただし、カーボンリムのホイールは、目が飛び出るほど高価です。
最低価格が10万円台後半だと思っておいてください。
そのため、これからヒルクライムレースを目指そうという方には、アルミリムの中で軽量のホイールを探してもらうのが現実的です。
次に剛性ですが、これはメーカーによって差があります。
レースを強く意識しているメーカーなら、剛性が高くて硬めのホイールになります。
一方、レースから普段使いまで、オールマイティに対応したいと考えているメーカーは、少し剛性が低めになります。
有名メーカーですと、親子関係にあるカンパニョーロとフルクラムは剛性が高く、シマノとマビックは剛性が低めです。
ヒルクライム向きロードバイク用ホイール①カーボンリム
それでは、ロードバイクのホイールの中で、ヒルクライム向きと評されるものを、いくつかご紹介します。
まずは、カーボンリムからです。
【フルクラム・レーシングゼロ・カーボン】希望小売価格:¥260,000
イタリアのホイール専業メーカー「フルクラム」は、カンパニョーロの子会社です。
それはさておき、フルクラムのレーシングシリーズは、アルミリムも含め、剛性の高さに定評があります。
特にレーシングゼロともなると、スポークがアルミなので、硬すぎて脚力不足の人はつらくなります。
そのため、ロードバイクに慣れて、脚力に自信がある人におすすめです。
とにかく踏んだら踏んだだけの応力が跳ね返ってくるので、軽く力を込めるだけでも素直に車輪が回る感覚と、絶賛されています。
価格から見ても、これからレースを目指す入門者向きではありませんが、将来のレース決戦用ホイールに考えてみてはどうでしょう?
重量は1,300g台半ばで、このクラスとしては最軽量とは言えませんが、申し分ないものです。
ヒルクライム向きロードバイク用ホイール②アルミリム
続いて、アルミリムのヒルクライム向きホイールをご紹介します。
【シマノ・WH-RS81 C24】参考価格:¥83,000
シマノはホイールの剛性が若干低めなので、ヒルクライム向きと評する人は少ないかもしれません。
しかし、最新モデルでは剛性がアップしたという話がありますので、あえて選んでみました。
シマノのアルミリムホイールは、この上に「デュラエース」グレードがありますが、このホイールはその上位モデルと同じリムを使用していると言われています。
リムの素地はアルミですが、カーボンでラミネートされているので、このクラスのホイールとしては1,500gと非常に軽量です。
【フルクラム・レーシング3】参考価格:¥76,000
個人的には、アルミリム最強のヒルクライムホイールと思っています。
剛性が高いのは先述通りですが、1,550g台ですから超軽量というわけではないのに、走りの軽さが実感できます。
ハブのレベルの高さも関係していると思いますが、坂ではグングン登っている感じが体感できます。
よく比較されるロードバイク用のホイールに、カンパニョーロの【ゾンダ】があります。
ゾンダもヒルクライム向きとされますが、剛性の高さを感じながら、しっかり踏み抜く必要があるヒルクライムには、レーシング3がより適しています。
ヒルクライムにおけるホイールの重要性
今回は、ヒルクライムレースに臨む上でのホイールの選択について考えてみました。
軽量かつ、剛性が高いホイールが最適となり、軽い走行感+パワーロスのないものが良いということになります。
剛性が高いホイールは、脚力が付いてくると踏み抜くのが楽しくなってくるといいますので、ぜひ試していただきたいと思います。