ロードバイクのホイールでのディープリムはどんな位置付け?

ロードバイクのレースなどで見かける、リムが高い「ディープリムホイール」はカッコいいですよね。

プロが使用しているので、当然、見た目だけではなく、機能面のメリットもあります。

しかし、ホビーライダーが使用するとなると、多くのデメリットも指摘されます。

今回は、ディープリムのメリット・デメリットを確認し、どんな用途に向いているのかを考えてみます。

ロードバイクのホイールは抵抗との戦い

ホイールの「リム」は外周部分のことで、タイヤがはまる場所です。

リムはホイール毎にサイズが異なり、顕著に特徴が表れるのが高さです。

~30mmまでが一般的な「ノーマルリム」、30~50mmが「セミディープリム」、50mm以上が「ディープリム」と定義されています。

ロードバイクはスピードが身上ですから、抵抗をいかにして低減させるかを考えます。

そして、様々な抵抗の中でも、80%以上を占めるのが空気抵抗です。

また、ロードバイクの空気抵抗の80%は人間に掛かる抵抗で、残りの20%が機材に掛かるものです。

空気抵抗は、風を受ける面積を減らすことで低減できますので、ロードバイクは前傾姿勢が基本になります。

そのため、フレーム形状だったり、ドロップハンドルを使用することで、何とか深い前傾姿勢を取ろうとしています。

一方、機材が受ける抵抗は、人間に比べれば随分と小さいです。

しかし、前傾姿勢を深くしたら、あとは自分がダイエットするくらいしか手がないので、機材でも何とかしようとするわけです。

ロードバイクにおいてディープリムホイールの最大のメリットは?

ロードバイクにおいて機材が受ける空気抵抗の半分は、ホイールが受けています。

ホイールには入り組むようにして、スポークが張り巡らされています。
スポークで空気が、かき混ぜられることによって、空気抵抗が大きくなります。

それを踏まえて、空気抵抗を最大限少なくするために開発されたのが、スポークレスのディスクホイールです。

スポークの部分を覆い、ほぼリムと一体化するので、前方からの風をスムーズに受け流すことができます。

しかし、当然ですが、横からの風は吹き抜けないので、全面で受け止めることになってしまいます。

そのため、屋外では風にあおられて、まともにハンドリングできない可能性が高いので、室内のトラック競技などで多く採用されます。

ディープリムホイールの原理原則は、ディスクホイールと同じです。

ホイールの大きさは決まっていますので、リムを高くすれば、その分スポークが短くなります。

そうなると、スポークが占める割合が減るので、空気抵抗が低減されるというわけです。

ディープリムホイールは硬くて強い!

ディープリムホイールのメリットで、空気抵抗の軽減に次ぐのは、高速巡航がしやすい点です。

ディープリムは外周部分が重いので、スピードに乗るのに時間が掛かりますが、落ちるのにも時間が掛かります。

これは、スピードに乗るまでに、大きなエネルギーを必要としますので、デメリットにも成り得ます。

しかし、高速で走っている場合は、中々速度が落ちないのでメリットになります。

巡航速度が上がるにつれて、ノーマルハイトのホイールよりも空気抵抗が減るというデータも出ており、高速域では、より有利になります。

高速巡航がカギになるトライアスロンやタイムトライアルでは、重量増を覚悟の上で、ディープリムを使用する選手が多いのは、このためです。

また、ディプーリムは先述通り、スポークが短くなります。

スポークが短くなると、縦方向の荷重に強くなり、ホイールが変形しにくくなります。

物質の変形しにくさを「剛性」と言いますが、スポーツ自転車では良く使われる言葉なので、聞いたことがある人も多いかと思います。

変形しにくい=剛性が高いと表現しますので、ディープリムは剛性が高いホイールということになります。

剛性が高いとクッション性がなく硬いので、乗り心地は悪くなります。

しかし、たわまない分パワーロスがないので、ペダルを踏めば踏んだだけ、ホイールに力が伝わります。

プロレーサーくらいの脚力でパワーロスをしなければ、一体何キロ出るのか恐ろしくなります。

ロードバイクにおけるディープリムホイールのデメリット

ここまで、ディープリムホイールのメリットを挙げてきましたが、どちらかと言えば、レースでの使用にメリットが多いと感じます。

例えば、横風に弱くても、自動車や歩行者のいないレースコースなら、問題は少ないでしょう。

しかし、ビュンビュンと車が走る公道を考えた場合に、横風にあおられたらどうなるかは、火を見るより明らかです。

特に前輪は、ロードバイクのハンドリングに大きく影響しますので、突風などであおられれば、制御不能になる可能性もあります。

また、ディープリムは外周部分が重いのが高速巡航ではメリットでしたが、単純に重量が重くなることは、漕ぎ出しや坂の上りでは不利になります。

ストップ&ゴーが多い街中では、漕ぎ出しの重さは致命的と言えますし、坂でキツいのは言うまでもありません。

そして、重量がかさむので、ディープリムはカーボンの使用が基本です。

そうなれば、フレーム同様で当然、高価になります。

カーボンリムのホイールは、10万円台後半が最低ラインの世界ですから、ディープリムともなると、目が飛び出るほど高価になります。

ディープリムのデメリットは、

・横風に弱いので公道の走行が危険
・漕ぎ出しや登り坂ではペダルが重くなりすぎる
・高価

この辺りを考慮に入れて、使用を考えなくてはなりません。

ディープリムホイールに対する適正

ここからは、前項までのことを踏まえ、どんな人またはどんな用途でロードバイクに乗る人に、ディープリムが向くのかを考えていきます。

まず、剛性面から考えると大柄で体重の重い人は、ディープリムの恩恵があると思われます。

剛性が低めのホイールは、体重が70kg前後の私でも、本当にたわみを感じますので、剛性の高さは魅力です。

また、脚力に自信が付いてきたら、ディープリムに挑戦してみても良いと思います。

剛性が高く、重量のあるホイールですから、脚力がものを言うのは当然です。

そして、贅沢すぎますが、これからレースを目指して脚力を付けていきたい方も、一考の価値ありです。

用途面から考えると、目的地までは輪行して運び、平地で高速巡航を楽しむといったツーリングに最適です。

しかし、通勤・通学やちょっとしたサイクリングが趣味という方は、不向きと断言させていただきます。

デメリットが顕著過ぎて、何のメリットも感じられず、後悔することは必至です。

ディープリムホイールの価格

さて、いざロードバイクでディープリムホイールを使用すると考えたときに、大きな壁になるのは、やはり価格でしょう。

参考までに、有名メーカーのディープリムホイールをご紹介します。(価格は前後セット)

【カンパニョーロ:ボーラワンC50/クリンチャー】参考価格:¥283,000

【イーストン:EC90 AERO55】参考価格:¥378,000

【ボントレガー:アイオロス5 TLR D3 CL】参考価格:¥370,000

カーボンリムの高価なものを意図的に選んだのではなく、これが相場と思ってもらって良いです。

ご紹介したのは、リムハイトが50mm前後ですが、80mmクラスになると正直浮世離れした価格です。

そこで、もう少し手ごろな価格でディープリムを体感したいという方に、おすすめのアルミリムホイールをご紹介します。

【カンパニョーロ:シロッコ】参考価格:¥48,000

【フルクラム:レーシング・クアトロ】参考価格:¥56,000

リムハイト35mmのセミディープホイールです。

ディープリムへの第一歩という位置付けで、練習用ホイールに使用している人も多いです。

ディープリムホイールは決戦用

今回は、ディープリムホイールについて考えてみました。

かなり癖の強いホイールなので、乗る人や用途を限定してくるものです。

また、高価なので、レースの決戦用ホイールという位置付けでもあります。

そのため、まずは今回ご紹介したアルミリムのセミディープホイールから、試してみることをおすすめします。