ステムはロードバイクにおいて、ハンドルポジションを決める大きな要素のひとつです。
そのため、ステム交換は、かなり頻繁に行われるカスタマイズです。
アメリカの有名バイクブランド「スペシャライズド」には、角度を自由に変更できるステムがあります。
そこで今回は、スペシャライズドのステムを例に、ステム交換の効果についてお話していきます。
ステム交換の前にロードバイクのサイズ選びを考える
ロードバイクのサイズ選びの際には、「適応身長だけで選んではいけない」という話をよく聞くと思います。
これは、高さだけを基準に、適応身長を割り出しているところに問題があります。
もちろん、高さも重要な要素ですが、それ以上に、乗車ポジションを決めるのが重要になります。
ロードバイクは空気抵抗を低減するために、前傾姿勢が基本になります。
ただ、ひと口に前傾姿勢と言っても、人それぞれに好みの姿勢がありますし、用途によっても変わります。
また、同じ身長でも腕の長さや身体の柔らかさが違いますので、適応身長だけでサイズを決めるのは、危ういところがあります。
そこで、ジオメトリ表のトップチューブ長に注目します。
トップチューブの長さは、ハンドルとサドルの距離を表す数値で、長くなれば前傾姿勢が深くなります。
例えば、スペシャライズドのロードバイクなどは平均的な長さですが、同じメーカーでもレースやロングライドなど、仕様で違ってもきます。
また、購入後にステムでもポジションを変えることができるので、ステム交換は多く行われるカスタマイズです。
スペシャライズドのステム交換にあたっての確認ポイント
ハンドルを支持するステムは、突き出しの長さで、ハンドルポジションを遠くしたり近付けたりできます。
スペシャライズドのステムを見てみると、75(mm)・90・100・110・120と、5サイズの突き出し長が用意されています。
1~2cmでも前後の位置が変わると、随分違った印象を受けるものなので、これだけサイズがあれば、思い通りの位置にもってこれるでしょう。
また、ステムには角度が付いている上に、天地を反対にして取り付けられるものが多いので、これでもポジションの変更ができます。
特に、今回取り上げるスペシャライズドのステムは、角度を何段階かに調整できる優れものです。
あとは、クランプ径に注意してください。
ステムはハンドルを支持するとともに、フロントフォークを支持する役目もあります。
スペシャライズド製のステムは、ハンドルのクランプ径が31.8mmで、フォークのクランプ径は28.6mmです。
両方とも、ごく一般的なものなので適合しやすいと思いますが、ステム交換の際には、しっかりと測ってください。
ステム交換でポジションが大きく変化
ステムの突き出しの長さは、ポジションと共に、ハンドルの操作性にも影響が出ます。
ステムが短くなると、ハンドリングが不安定になるので、漕ぎ出しや坂の上りなど、低速のときにフラフラします。
そのため、長いトップチューブのフレームを選んで、ステム交換の際に短めの突き出しで距離を詰めるというやり方は、あまりおすすめしません。
スペシャライズドのステムは最長120mmですが、サイズ500~520前後であれば、90mm~100mmくらいが適正とされています。
しかし、これもあくまで目安であり、やはり大事なのは、自分の最適なポジションに合わせていくことです。
あとは角度ですが、これも乗車姿勢に関わってきますので、大切な要素です。
また、ロードバイクのアヘッドステムは、大幅にハンドルの高さを変えられないので、角度で高さを調節するのもひとつの方法です。
その点では、スペシャライズドの【COMP MULTI STEM】は、少し珍しい角度の上に、付属のシムで角度を数段階調整できます。
スペシャライズド【COMP MULTI STEM】の驚くべき特性!
スペシャライズドの【COMP MULTI STEM】は、角度に特徴がありますので、ステム交換でポジションを調整したい場合には面白い存在です。
一般的なステムは6度が多く、角度がキツイものでは、17度や35度があります。
しかし、こちらは4度・12度・17度と、珍しいラインナップになっています。
しかも、0度・2度・4度の3種類のシムが付属しており、それぞれ10段階に角度が調整できます。
17度のステムなら、±13~±21の範囲で、角度が変えられるということです。
ハンドルの角度は、フレームのヘッドアングルを参考にしながら決めていきますが、地面に対して水平(90度)になるのが基本です。
例えば、ヘッドアングルが73度のロードバイクの場合は、90-13=±17度のステムを使えば、地面と水平になります。
スペシャライズドのステムであれば、ここからシムで微調整ができます。
そのため、水平を基準に、自分なりに角度を上げ下げすると、ベストポジションが図りやすくなります。
スペシャライズドのステム交換における注意点
それでは、スペシャライズドの【COMP MULTI STEM】のステム交換について、注意事項を確認します。
まず、シムを噛ます場合は、角度が付いている分厚さが違うので、左右どちらかにオフセットします。
それを見越して、スペシャライズドのステムのトップキャップは、ネジ穴が縦長になっているので、可変が可能です。
角度が付いている分、水平でなくても、アジャストするようになっています。
しかし、ステムの下にコラムスペーサーを被せる分には大丈夫ですが、上に被せるとステムとの間に隙間ができてしまいます。
水分やホコリがヘッドチューブ内に侵入するのは好ましくありませんから、上手く隙間を埋めるように、自分でスペーサーを削って、もう1枚噛ませたほうが賢明です。
特に4度のシムは、かなりオフセットしますので、最初からスペーサーが必要と心得ておいてください。
また、ステムを取り付ける際は、トルクレンチを使用したほうが良いです。
特にカーボンのハンドルやフォークでは、強いトルクで締め込んでしまうと、カーボンが破断してしまう可能性があります。
他の部分の整備にも役立ちますので、スポーツ自転車が趣味という方は、1本持っておきましょう。
スペシャライズドのステムは取り付け位置に注意
ステム交換に伴い、その後必ず行うことになるのは、ベアリングの玉当たり調整です。
これをしないと、ガタが出たり、ハンドリングに違和感が残るので、必ず行うものです。
スペシャライズドのロードバイクで、特にカーボンフォークを採用している機種は、「プレッシャープラグ」を使用して、玉当たり調整を行います。
スペシャライズドは、プレッシャープラグがフォークコラムのかなり上部に付いています。
そして、そこにステムを合わせて取り付けないと、フォークコラムを破損する可能性があると、説明書には書かれています。
そのため、ハンドルを下げようとして、スペーサーの位置を変えるには、コラムをカットする必要があります。
プレッシャープラグ自体はとても親切な設計で、玉当たり調整もしやすいと評判なのですが、取り付け位置にはくれぐれも注意が必要です。
この話は、あくまでスペシャライズドのロードバイクの話です。
別メーカーのバイクにスペシャのステムを使う場合には、プラグを挿入してある位置が異なりますので、別途確認が必要です。
スペシャライズドのステムは秀逸!
今回は、スペシャライズドの【COMP MULTI STEM】を例に、ステム交換の話をしました。
ステムは小さいパーツですが、乗車ポジションを決める大切な要素のひとつです。
それだけに、【COMP MULTI STEM】のように、角度が10段階に変えられるのは魅力的です。
突き出しの長さと合わせれば、理想のポジションにかなり近付けるものと思います。