自転車のハブは、車輪の中央に付いている小さな部品ですが、実に重要な役割をいくつも持っています。
ただ正直に言って、趣味で自転車に乗っている人以外では、メンテナンスや交換などを行うことは、ほぼないでしょう。
しかし、メンテナンスや交換で性能アップが望めるなら、やってみて損はありません。
そこで今回は、自転車のハブにまつわる、あれこれを考えてみましょう。
自転車のハブは単体での交換に疑問が残る
自転車のホイール(車輪)は、タイヤをはめる部分である「リム」、骨組みである「スポーク」。
スポークをリムに支持する留め具「ニップル」、そして「ハブ」で構成されています。
市販されている「完組ホイール」は、その車輪が最高の性能を発揮できるように設計されており、それによってパーツの構成が決められています。
そのために、基本的にはハブやスポークだけの交換というのは、あまり推奨されていません。
故障や破損をして交換するのは仕方ありませんが、できれば最初のホイール選びから、それぞれのパーツの性能まで気にするのが、ベストな選択ということになります。
また、パーツの交換をするにしても、ホイールの場合は分解することになります。
当然ながら、分解したものは組み直す必要があるので、ホイールを手組みする技術がなければ、自力でのパーツ交換はできません。
そのため、ハブやその他のパーツを交換する場合は、自転車屋さんにお願いするのが自然の流れです。
自転車のハブの交換はスポークを伴う
特にスポーツ自転車は、ハブが単体で販売されているので、スポークの本数さえ合わせれば、理屈上ハブの交換は可能です。
しかし、市販されているハブは、手組みホイールの作成用で、首折れスポーク用のものが多いです。
そうなると、スポークの交換も余儀なくされるわけです。
首折れスポークは、ハブに引っかける方の先端が、折れ曲がっているスポークのことです。
首折れ部分に圧力が掛かるので、スポーク折れの危険が高いのと、ストレートスポークに比べて、剛性が低くなります。
そのため、性能を上げようとしてハブの交換をしたのに、かえってホイール全体の剛性が落ちてしまうという、本末転倒な結果になりかねません。
さらに言えば、カンパニョーロやフルクラムなどのメーカーは、独自のスポークの組み方をしています。
それを分解することは当然ながらリスキーですし、首折れスポークで再現しても、スポーク折れしやすくなるだけで、良いことは何もないと聞いています。
こうなると、ハブだけの交換は、やはり、あまりおすすめではないですね。
自転車のハブの交換を思い立ったらまずメンテ
ハブの交換を思い立つということは、今お使いの自転車のハブに、何らかの不満を持っているということだと思います。
その場合は、交換する前にハブのメンテナンスを考えてみましょう。
ハブは回転体のため、中には、軸とその軸の受けになるベアリングが内蔵されています。
このベアリングはメンテナンスが必要な「カップ&コーンベアリング」か、基本的にはメンテナンスの必要がない「シールドベアリング」のどちらかです。
自転車に採用されているベアリングは、ボールベアリングといって、小さな球状のベアリングです。
これを金属や樹脂などのシールで覆ったものを、直接圧入しているのがシールドベアリングです。
一方、中に圧入したカップの淵にボールベアリングを並べて、上からコーンと呼ばれる玉押しで蓋をするようにして取り付けられているのが、カップ&コーンです。
このベアリングが、ホイールをスムーズに回転するかのカギを握っているので、メンテナンスが必要なカップ&コーンの場合は、行ってみる価値があります。
自転車のハブのカギはベアリング
自転車のハブの交換の前に、メンテナンスを推奨しています。
ベアリングの種類をご紹介しましたが、特に確定した情報がなければ、どちらのベアリングが採用されているかは、現物を見ないと分からないはずです。
ちなみに、シマノは全てのホイールがカップ&コーンです。
カンパは「ゾンダ」よりも上位、フルクラムは「レーシング3」よりも上位グレードのホイールが、カップ&コーンです。
ハブの分解は、リアのギアである、カセットスプロケットを外すことから始まります。
作業自体は難しいものではありませんが、専用工具がないといけません。
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スプロケット先端のロックリングを外す工具と、スプロケットが回らないように固定する工具のセットです。
固定工具に付いているチェーンをローギアに引っかけて固定して、ロックリング外しを先端に装着して、反時計まわりに回せば外れます。
かなりきつく締めこまれているので、ケガをしないように気を付けてください。
自転車のハブのメンテナンス
自転車のハブからスプロケットを外すとお目見えするのが、「フリーボディ」です。
スプロケットの取り付け場所というだけではなく、惰性で動いているときにペダルが回らないようにする「ラチェット機構」が内蔵されています。
このフリーにもベアリングが内蔵されていますが、シールドベアリングですし、フリーの分解は推奨していないホイールメーカーも多いです。
先端のロックナットを外し、シャフト(軸)を抜いた際に、中に小さなボールが見えれば、カップ&コーン方式です。
もし、ない場合は、シールドベアリングなので、ベアリングはノータッチで良いです。
しかし、せっかく分解したのですから、内部の汚れやパーツの汚れををふき取り、シャフトにグリス(固形の潤滑油)を塗ってから戻しましょう。
カップ&コーンの場合は、ボールが1個ずつ単体で置かれているので、失くさないように、下にバッドなどを敷いてから取り出してください。
取り出したボールとシャフト、リング類を洗浄します。
あとは、ハブの内部に残っているカップの淵にグリスを塗ってから、ボールをひとつずつ置いていき、玉押しでフタをします。
このときに、先端の2枚のナットを使って、玉押し調整をします。
外側のナットを時計回り、内側のナットを反時計回りで締めますが、余り締めすぎると、ゴリゴリとした回転になります。
しかし、緩すぎると、今度はガタガタします。
それが、両方とも上手い具合に折り合いが付く場所を探して、調整してください。
これで、ハブの回転性能がよみがえってくるはずですが、ここまでのメンテナンスを行っても違和感がある場合は、交換を検討してください。
手組みホイールという選択
自転車のハブの交換は推奨されないものと申し上げましたが、故障やメンテナンスをしても、違和感がぬぐえない場合は致し方無いですね。
先述したように、スポークまで交換の可能性が高いのですが、まれにストレートスポーク用のハブもあります。
そのため、その辺の情報はプロに聞いたほうが良いので、まずは自転車屋さんに相談しましょう。
色々とアドバイスをしてくれるショップを見付けるのも、今後、自転車を本格的に趣味にしていこうと思えば、有意義です。
また、ハブの交換を考えるなら、自分で手組みのホイールを組んでみるのも、ひとつの手段です。
ハブとスポークだけではなく、リムも交換して、一からホイールを作っていくんですね。
完組みホイールには、かなわない部分が多々あると思いますが、予算を自分で決められるのがメリットでしょう。
また、予算だけを伝えて、あとはお店に任せるというプランもアリです。
ハブの交換は推奨できない
今回は自転車のハブの交換を考えてみましたが、ハブ単独での交換は難しいという結論にさせていただきました。
完組みホイールは専用の一体設計のため、何かひとつでも変わると、狂ってしまう可能性があるからです。
そのため、ハブの交換を考えるなら、いっそのこと、手組みのホイールを作成したほうが良いでしょう。
それも、あくまで、市販されている完組みホイールとの価格を考えた上でのことですね。