スポーツ自転車の中でも、現在のロードバイク用のホイールのレベルの高さは群を抜いています。
そのため、ひと昔前の狭いエンド幅のフレームに、現在の130mm幅のホイールを履かせたいという要望も多いようです。
そうなると、エンド幅を拡張する必要がありますが、果たして可能なのでしょうか?
また、反対に、広いエンド幅のフレームに、狭いホイールを装着することも十分あり得ます。
そこで今回は、エンド幅の拡縮について考えてみます。
エンド幅の変遷
まずは、エンド幅とは何ぞや、という話からしていきます。
エンド幅は、自転車のフレームにホイールが、はまる場所の寸法のことです。
前輪はフロントフォークのブレードの先、後輪は左右のシートスティのエンド部分です。
また、エンド幅は「オーバーロックナット寸法」という別名があるように、ホイールのハブの幅でもあります。
この寸法は、自転車の種類によって大体は決まっています。
前輪は、どの自転車もほぼ100mmです。
後輪は、ロードバイクが130mm(ディスクブレーキモデルは135mm)、MTBとクロスバイクは、135mmが現在の規格です。
エンド幅の歴史を振り返ってみると、かなり拡張しているのが分かります。
まずは、ホイールの都合ですが、横幅がある方が強度が増すということがあります。
ですから、悪路を走るMTBは、比較的早い段階から130mmだったと聞いています。
これは推測ですが、フロントも3速ですし、ホイールももっと耐久性を上げるという意味で、135mmまで広げたのではないかと思います。
一方、ロードバイクは舗装路の走行を前提としていますし、ホイールも耐久性よりは軽さと転がり重視です。
そのため、最初は120mmからスタートしています。
これが基本の考えで、あとは変速段数が上がることでスプロケットの幅を確保したり、クランクの幅も関係してきます。
エンド幅は拡張の方向にある
ロードバイクは、5速から6・7速になる段階で120mmから126mmに広がり、7速に限界説が出たところで130mmになっています。
ただ、これ以上拡張すると、チェーンが外側に行き過ぎてしまうので、130mmに留まっていると聞いています。
しかし、今後リア12速化もあり得ますし、ワイドリム化が進行していますので、やはりエンド幅は広がる可能性が高いように思います。
そもそもですが、エンド幅は言ってみれば、ただの規格に過ぎないのです。
何ミリであろうが、互換性があれば、何も気にすることはありません。
ロードバイクに、ロードバイク用ホイールを使用するならば、話題にすら上りません。
しかし、MTBをドロップハンドル化したいなど、スポーツ自転車の用途の多様化は、現代では既定路線とも言えます。
そのため、120mmのエンド幅の自転車は見たことがないので分かりませんが、126mmのエンド幅に130mmハブのホイールをはめるというのは、よく聞く話です。
エンド幅の拡張はフレームの弾力性の範囲で何とかなる?
「規格外のカスタマイズは自己責任で」…なんてことをよく耳にすると思いますが、自転車のエンド幅の拡張は正にその部類です。
126mmしかない幅に、130mmあるハブのホイールを入れるのは、誰がどう見たって無理筋です。
しかし、日本のメーカーならまだしも、海外のメーカーの中にはエンド幅が126mmと謳っていても、128mmだったりするわけです。
そのため、2mm差くらいなら勢いで「エイヤっ」とはめてしまえば、フレーム素材の弾力性の範囲内で収まってしまうという話はよく聞きます。
それで全く問題なく長年使っている人もいれば、フレームにヒビが入り破断したという人もいるようです。
特にアルミは、しならないので、無理をすると破断の危険性が高いと考えられます。
「現物合わせ」という、相手の都合にこちらが合わせるという意味の言葉があります。
無責任ではありますが、これに関しては、やってみてどうなるかは、フレーム次第としか言いようがありません。
エンド幅の拡張ができるフレームは?
前項でも触れましたが、自転車のエンド幅の拡張が可能かどうかは、フレームの素材にも大きく関係してくるようです。
カーボンフレームでエンド幅126mmというのは、あまり聞いたことがないので、アルミかクロモリに代表されるスチールということになります。
以前に、専用工具のあるお店に拡張を依頼したという記事を見たことがあります。
そのお店はエンド幅の拡張をカスタムのメニュー表に載せていたとのことなので、日常茶飯事であったと推測できます。
そのお店に依頼したユーザーさんは、クロモリフレームだったらしいのですが、店主は「アルミは無理」と、はっきり言っていたそうです。
前項でアルミフレームが破断したという話もお伝えしましたので、どうやらエンド幅の拡張は、弾性のあるスチールフレームに限ると考えて良さそうです。
しかし、今後ロードバイクでエンド幅135mmが主流になったら、私も含めてですが、アルミフレームユーザーはどうしたら良いのか少し心配ですね。
ホイールの幅を拡張させるためには?
ここまでは、自転車のエンド幅の拡張を考えてきました。
エンド幅よりも幅が広いホイールを運用することは、クロモリなどのスチールフレームであれば可能という結論にさせていただきます。
さて、話は変わりますが、需要が多いのは、むしろ逆のケースではないでしょうか。
広いエンド幅のフレームに、狭い幅のホイールをはめるケースです。
自転車の種類の話でいえば、MTBやクロスバイクに、ロードバイク用のホイールを履かせるということです。
ロードバイクのホイールは、軽量で回転性能に優れており種類も豊富、スポーツ自転車のホイールとしては群を抜いてレベルが高いです。
そのため、他の自転車でも運用したいと思うのは、至極当然のことです。
そこで問題になってくるのが、エンド幅の違いをどう埋めるかということです。
最も安全で手堅い策は、135mm幅のハブとロードバイク用のリムで、新しいホイールを作り出すことです。
これをすれば、ほぼ何も問題なく運用することができます。
リムやハブはピンきりなので、費用は詳しく提示できませんが、3万円も出せば良いレベルのホイールが組み上がると思います。
市販ホイールのエンド幅拡張
新しいホイールを手組するという方法が最も手堅いのは事実ですが、市販のホイールを流用したいという需要も、もちろんあると思います。
そうなると、5mmの幅を埋めるために、ハブに細工をして拡張させるという作業が必要になります。
上記の理屈で言えば、クロモリなどのスチールであれば、エンド幅を狭めて良いという話になります。
しかし、スチール素材には反発力があるので、常に元に戻ろうとする力が働いていると思って良いはずです。
いわゆる、広げたものは閉じようとしますし、閉じたものは広がろうとします。
エンド幅を閉じて狭くしてしまうと、反発力で広がってしまったときに、脱輪する可能性があるわけです。
そのため、ハブに細工をするのが賢明かなと思いますね。
130mmのハブを135mm幅に対応させるには、シャフト(軸)を交換して、反フリー側に5mmのスペーサーで隙間を埋めるという方法がひとつです。
しかし、反フリー側だけにスペーサーを入れるため、センターが狂います。
そうなると、スポークのテンションを調整して、リムをセンター出ししなければなりません。
専用の振れ取り台がないと、正確な作業ができませんし、技術と経験が必要なので、簡単ではありません。
もうひとつは、ハブの両側に2.5mmのスペーサーを入れる方法です。
センターは狂いませんが、スプロケットの位置が変わるので、ディレイラーが動ける範囲に収まるかが問題になります。
これに関しては、どちらも賛否両論ありますが、仮にひとつくらい使えないギア比が発生しても良いなら、2.5mmの方法が手っ取り早いです。
センター出しはお手のものなんていう猛者は、当然5mmの方を選択することになります。
エンド幅はさらに広がる可能性も
今回は、エンド幅の拡張と縮小についても考えてみました。
今後、エンド幅は、さらに広がる可能性が指摘されています。
個人的に、ロードバイクが126mmから130mmに変わった当時のことを知らないのですが、スムーズに切り替わって欲しいものです。