アメリカの金属加工会社「イーストン」は、自転車のパーツも製造・販売しています。
ハンドル・ステム・サドルなどは、日本でも大きなシェアを持っていますが、ホイールとなるとマイナーなイメージです。
今回は、そんなイーストンのホイールについて、レビューやインプレの評価も参考にしながら確認してみます。
イーストンはフレーム用のチューブで高評価を受けてきた
イーストン・ジャパンのホームページを見てみると、自転車関係の記載は一切ありません。
イーストンのフラッグシップ商品は、野球の金属バットですので、イーストン・ジャパンは野球用具の扱いのみのようです。
自転車部門は「東商会」が日本の代理店を務めていますが、東商会は完成車ではカナダの「サーヴェロ」、パーツではイーストンの他に、台湾の「トーケン」なども扱っています。
イーストンは、根っこが金属のチューブ屋さんですので、他メーカーにフレームのチューブを供給しています。
イーストンの自転車部門の立ち上げには、フレームの魔術師とまで言われている「フェルト」の創始者ジム・フェルトが大きく関わっています。
彼の開発した高性能チューブが、世界中の名だたるブランドから高い評価を受けたことで、イーストンの名声も、より高まっていきました。
今回取り上げるホイールに関しては、日本では正直マイナーですが、悪い評価はあまりないようです。
イーストンのハイエンドモデルホイールの評価は?
では、イーストンのホイールを見ていきましょう。
イーストンは製品名に冠が付きますが、ECはカーボン素材、EAはアルミ素材を表します。
そして、その次にくる数字が、製品のグレードを表しています。
グレードは確認できた限りでは、50・70・90・100とあり、数字が大きいほど高グレードになります。
【EC90 AERO 55 チューブレスクリンチャー】
参考価格:フロント¥165,000 リア¥185,000
イーストホイールのハイエンドモデルです。
リムハイト55mmのエアロディープリムで、チューブラータイプもあります。
徹底した風洞実験を行ったという28mmのワイドリムが、優れたエアロダイナミクスを実現しているそうです。
40キロのタイムトライアルを想定した実験では、過去最高のタイムを出したホイールと比べ、14秒勝ったとも言われています。
自称なので、少し割り引いて考えても、価格相応の評価で良いと思います。
これが欠点だらけでは、フラッグシップモデルの名折れです。
剛性が強いというインプレが多いですが、エアロホイールですから硬いでしょうし、乗り心地だって両立しないのは当然です。
ソフトな乗り心地を求める人が、ディープリムを選ぶわけがないですからね。
イーストンの【EC90 AERO 55】ホイールにはライバルが多い
インプレでは、同じタイヤではないので一概には言えませんが、ホイールの転がりの良さを感じています。
そのため、イーストンのハブの性能の高さは間違いないところです。
「【EC90 AERO 55】はディープリムなので、漕ぎ出しの重さと加速までに時間が掛かるのは致し方なし。」
「ひとたび高速域に入ればスピードが維持できる、しかもハブの性能が良いので、余計に巡航時間が長くなる。」
「ワイドリムなので、横からの風には当然厳しいが、正面からはエアロ形状のため、風を切り裂けるので巡航性が高い。」
レビューの評価をまとめると、こんな感じです。
ただ、コスパを考えてしまうと、同じリムハイト50mm前後では、カンパの「BORA ONE」がかなり優位です。
重量が約300g軽いですね。
ディープリムの場合、「軽さが正義」というわけではないですが、ヒルクライムやスプリントには優位です。
ハブの性能も同等か、それ以上は確実なので、「君はマジョリティだね」と言われても、「BORA ONE」を選んでしまいそうです。
また、エアロ形状なら、トレックのパーツブランド「ボンドレガー」のディープりムもあります。
「Aeolus 5 TLR D3」は、ほぼEC90 AERO 55と同じ条件で、価格も大差ありません。
他のメーカーのロードに乗って、トレックの正規販売店で購入するかは別として、比較対象にはなります。
イーストンのアルミホイールの評価は?
さて、ディープリムは最初から選択肢にないという人も多いですよね。
イーストンのホイールは種類が少ないのですが、カーボンリムにはもうひとつ、リムハイト38mmの【EC90SL】があります。
技術も価格もほとんど変わらないので、特筆することはないですが、ライバルが増えることだけは間違いないです。
イーストンが金属チューブの加工をしているメーカーと考えると、アルミリムのホイールに期待が掛かるところです。
アルミリムは90と70の2グレードで、【EA90 SLX チューブレスクリンチャーホイール】がハイエンドモデルです。
リムハイト25mmで前後計1400gは、重量だけで判断するならば、かなり上位レベルです。
スポークの本数が少なめなので、メジャーどころでは、シマノと同じような構成と考えられます。
イースト自身がスプリント能力をアピールし、反対に高速巡航性に厳しい評価を下しています。
重量も考えると、ヒルクライムなどに向くホイールですが、イーストンのハブなら巡航性も自身の評価よりは高いと判断できます。
ただ、定価は前後計15万円で、ここはライバルだらけのゾーンです。
カンパの「シャマルウルトラ」、フルクラムの「レーシングゼロ」、シマノの「デュラエース」、枚挙にいとまがないです。
アルミならイーストンと言えるのか?
アルミリムのEA70グレードも見てみましょう。
ミドルグレードの位置付けなので、他メーカーではカンパの「ゾンダ」、フルクラム「レーシング3」、マビック「キシリウムエリート」です。
名前を見ただけでも、震え上がるくらいの強豪ぞろいです。
それだけに、イーストン独自の何かが欲しいところですが、ホームページ上の自身の評価も低いんですよね。
売る気がないのか、謙虚なのか分かりませんが、中位グレードのノーマルリムなので、オールマイティなのは当然です。
そのため、大体において平均点になっているのは理解できるのですが、それでは決め手に欠けます。
インプレの評価では、やや重量を感じるが、高速域での負荷が掛かるので、トレーニング向きとされています。
また、ホイールでは、重要な振れの少なさを褒める声もあります。
こういったところを、もっとイーストン自身がアピールしていけば良いのにと感じ、少し残念です。
しかし、個人的にはこのグレードでは、十分に満足できるホイールだと思います。
そのため、今回あまりポジティブな意見は出せなかったですが、このEA70グレードは、ライバルと戦えるホイールと判断させていただきます。
マイナーゆえの苦しさ
イーストンのホイールを確認してきましたが、価格相応のしっかりした物作りをしている印象でした。
ユーザーも大方その通りのインプレで、抜群の喜びを感じているわけではないが、大きな不満もないという評価です。
ですから、今回取り上げたホイールにカンパやシマノの名前が付いていれば、ヒットしているレベルなんだと思います。
アルミリムには、他メーカーには見られないリムのみの製品があります。
ユーザーが一から手組みしていくわけですが、リムに自信がなければ、単体で売り出すはずがないですよね。
ただ、スポークとハブの販売がないんです。
この辺りの詰めの甘さが、マイナーゆえの苦しさを感じます。
また、ホイールを自己採点しているのですが評価が低いです。
過大評価するよりはましですが、これでは購買意欲が出ないという採点もあります。
性能とは関係なく、そういった面でも損をしていると考えられます。
イーストンのホイールには見るべきものがある!
イーストンのホイールは奇をてらったようなことはせず、至ってシンプルに性能を表現していると感じました。
一概には言えませんが、自分の用途に合っていれば、使用して後悔するものではないでしょう。
コスパの高さは望めませんが、自転車の性能を落とすようなことはないと言っておきます。