ロードバイクを製造しているメーカーが、どこの国のメーカーなのか悩むときがありませんか?
設計はヨーロッパだけど、製造はアジアなんてケースも多く、一体どこが発祥で、どこに本拠地があるのか分からないメーカーもあります。
scottも、そんなメーカーのひとつで、近年は韓国の貿易会社の子会社になったと聞いています。
今回は、そんなscottを取り上げてみます。
scottはスイス本拠も韓国企業の子会社
scottは純然たる自転車メーカーではなく、世界的にはどちらかと言えば、スキー用品メーカーとして名が通っています。
scottは、1958年アメリカのエド・スコットにより、スキー用のストックメーカーとして創業されます。
1978年に設立された「SCOTT EUROPE SA」が、ヨーロッパ本部としてスイスに置かれ、現在はスイスに本拠があるメーカーで認識されています。
昔は、車体に「SCOTT USA」のロゴがありましたので、アメリカで生産(設計)していた時代もあるようです。
2011年に「SCOTT NORTH ASIA」を韓国・ソウルに。
2013年には「株式会社スコットジャパン」が設立され、アジアへの本格進出の基盤が築かれていきます。
その余波なのか分かりませんが、現在は韓国の永元貿易に買収されており、2015年より子会社になっています。
ロードバイクはツール・ド・フランンスの総合優勝を果たしたこともあるほど、高性能で名高いものがあります。
特に世界で初めて、重量1kgを切るカーボンフレームを開発したのは、あまりにも有名です。
scottはスイスの国を代表するメーカー
ここでは、現在の自転車メーカー、特にロードバイクの世界地図を確認してみましょう。
主たるメーカーが集まっている地域は、北米・ヨーロッパ・台湾と見て良さそうです。
まず、アメリカを中心とする北米ですが、何と言っても世界規模のメーカーと言えば「トレック」です。
ツール・ド・フランスを何勝もしているように、レース機材としての圧倒的強さを見せる、アメリカNo.1メーカーです。
北米産で他に日本にユーザーが多いのは、「スペシャライズド」「キャノンデール」です。
次にヨーロッパですが、中心は老舗が揃うイタリアメーカーです。
世界最古の自転車メーカーと言われる「ビアンキ」。
自転車の教科書とまで言われるフレームを、長年に渡り製造している「チネリ」。
ヨーロッパのレースシーンで、数々の記録を打ち立て続ける「コルナゴ」。
名車揃いと評判の「デローザ」など、多くのメーカーが集結しています。
その他では、世界最古参の老舗であるイギリスの「ラレー」、今回取り上げるスイスの国を代表する「scott」、新進気鋭のドイツメーカー「フェルト」などが挙げられます。
最後は自転車大国台湾ですが、世界中のメーカーの委託生産を請け負っているのが「ジャイアント」と「メリダ」です。
ジャイアントは、名実ともに世界一のメーカーと言え、コスパの高さは他の追随を許しません。
メリダは、特にアメリカメーカーのOEM生産で名を馳せてきました。
しかし近年は、自社ブランドでグランツールに参戦するプロチームに、機材を提供するまでに成長しているメーカーです。
scottのロードバイクは世界各国で人気!
では、ここからはscottについてお話していきます。
激戦区ヨーロッパで30年以上に渡り、ロードレースの機材として使用されている実績がありますので、世界各国で、ユーザーのかなり多いメーカーです。
scottのロードバイクは、世界最軽量を達成したこともあり、とにかく軽いです。
【ADDICT RC PRO】は、究極のレーサー仕様で総重量6.48キロ、このままではワールドツワーの重量制限で参戦不可です。
さすがに100万円を超えるので、私のようなホビーライダーには縁遠いです。
サードグレードの【ADDICT RC 20】が同じ技術を踏襲しており、シマノ・アルテグラをフルコンポで組んであります。
総重量7.35キロで39万円しますが、本格レーサー仕様が手に入るとなれば、致し方なしでしょうか?
また、ADDICTには、ジオメトリがアップライドな姿勢を基本にした、エンデュランスモデルがあります。
ジオメトリ表に図解入りで、レース仕様車との比較が掲載されています。
確かに、ハンドルとサドルの距離が近いですし、角度も立ち気味になっています。
フレームが別のカーボン素材なので、比べようがないですが、こちらはハイエンドモデルの【ADDICT 10】で30万円を切ります。
新型アルテグラのほぼフルコンポ(カセットスプロケットのみ105)で、この価格はコスパが高いです。
scottを代表するロードバイク【FOIL】シリーズ
scottを代表するロードバイクのひとつが、世界各国のユーザー垂涎もののエアロロードの【FOIL】です。
「戦闘機」とまで評す専門家がいるくらい、エアロダイナミクスに優れた1台です。
こちらもレース機材としての位置付けのため、ハイエンドモデルの【FOIL RC】は約80万円です。
しかし、ADDICTに比べると、まだ少しオールマイティさを残しており、エンドユーザー向けになっている部分もあります。
エアロロード特有のガチガチの乗り味にならないように、縦方向の弾性を向上させる改良を加えています。
具体的には、シートステイを薄くしたことで、荒れた路面でのなめらかな走行が可能になっています。
また、フォークコラムを大口径化したことにより、ねじれ剛性を高めると共に、弾力性もアップしています。
シートポストもエアロロードにしては細身にして、快適性を重視しています。
そのため、エンデュランスモデルとまでは言えませんが、オールラウンダーに近いジオメトリに変貌しています。
コスパは微妙ですが、乗りやすさを加味したエアロロードです。
scottのロードバイクにはアルミの名車【SPEEDSTER】もある
カーボンフレームのイメージが強いscottですが、アルミフレームにも世界各国で人気の【SPEEDSTER】シリーズがあります。
アルミのエアロロードバイクは剛性が強くなりすぎてしまい、乗り心地は二の次ということも珍しくありません。
しかし、SPEEDSTERはカーボン車同様に、翼断面の後ろ端を切り落としたような「カムテール」形状のダウンチューブを採用しています。
この技術により、エアロ効果はキープしたまま剛性とのバランスを取り、硬すぎない乗り心地や軽量化にも成功しています。
SPEEDSTERは名前から、いかにも速そうでレーシーなイメージですが、ジオメトリは長距離向きのエンデュランスモデルです。
その他にも、ワイヤーがフレーム内蔵型になっていたり、タイヤ幅32cまで対応可能なクリアランスを確保しています。
そのため、スポーツ自転車初挑戦の人でも優しい設計になっています。
特にシマノ・105搭載の【SPEEDSTER 10】は、約15万円とコスパも大変高いです。
アルミエアロに乗りたい人は、ぜひ検討してみてください。
scottのメインはMTB?
scottは世界各国に拠点を持っており、しかも貿易会社が親会社ですから、流通網がしっかりしていることは言うまでもありません。
そのため、とにかく豊富なラインナップが揃っています。
今回はロードバイクに焦点を絞りましたが、実はロードバイク以上に、MTBの品揃えが豊富で多彩なのです。
2017年のラインナップは、11モデルで全47種に渡ります。
特筆すべきは29インチモデル、いわゆる「29er」の多さです。
現在はレースの世界での27.5インチ(650B)の台頭により、エンドユーザーの市場も完全に27.5インチ全盛です。
大手でも27.5インチしか扱っていないメーカーもある中、scottの品揃えは明らかに一線を画しています。
29er専用モデル【SCALE】シリーズは、クロスカントリーのレース仕様車として、長年フラッグシップモデルに君臨しています。
個人的な推測ですが、街乗り車としての需要もある29erへのこだわりで、用途が被るクロスバイクの製造をしていないのかもしれません。
scottは心配ない!
今回は、scottのロードバイクを中心に見てきました。
韓国企業への買収でネットでは、かなりネガティブな反応をしているようですが、品質の高さは相変わらずです。
政治的背景は抜きにして、テレビもスマホも、今や韓国の技術力は無視できない時代です。
ましてscottは、韓国の企業にOEMしているわけでもないので、過大な心配はしなくて良いでしょう。