乱立する規格、混迷極めるホイールの互換性!鍵は「ハブ径」

つい先日、カンパニョーロから12段変速のコンポが発表され、ますますパーツ選択の幅が広がっています。

しかしそれ故に、様々な規格が乱立してそれぞれの互換性を理解するのは困難を極めます。

そこでこの記事では、初心者の方がホイールを改造したいと思うけど、互換性がよく分からない、といった場合について、ハブ径の観点から注目して解説していきます。

ハブ径って何?確認の仕方とホイールの互換性

「ハブ径」とは、車及びバイクのホイールの中心にある穴の直径の事ですが、自転車で単に「ハブ径」と言うと、オーバーロックナット寸法を指します。

オーバーロックナット寸法は、ハブの外から外の長さで、ホイールのカタログ等では、「OLD 130mm」のようにアルファベット3文字で省略して記されています。

この寸法により、ホイールの互換性が判断できます。

ハブ径130mmのホイールが取り付けられた自転車は、特殊な事情がなければ、同じくハブ径130mmのホイールと交換が可能であると判断できます。

今現在、購入可能なスポーツタイプの自転車のハブ径をまとめてみました。

ロードバイク(リア)

・130mm(8~11段)
・135mm(ディスクブレーキ)
・142mm(ディスクブレーキ)

クロスバイク(リア)

・130mm
・135mm

MTB(リア)

・142~148mm

ピスト及びトラック(リア)

・120mm

以上のように、ハブ径は自転車のタイプによってまちまちである事が分かります。

なお、(リア)と書いた理由は、フロントのハブ径は、ロードバイク、クロスバイク、ピスト及びトラックで共通であるからです。

これらのバイクは全て、フロントは100mmのハブ径です。

次の章から自転車のタイプごとに、それぞれの互換性を確認していきます。

選択肢が多いのが長所のロードバイクホイールのハブ径

現行モデルのロードバイクは、ホイールのハブ径はフロント100mm、リア130mmです。

ロードバイクのメーカーが違っても、このハブ径は変わりません。

ハブ径130mmのホイールは、現在様々なメーカーから販売されており、選択肢が非常に多い為、自分の乗り方に合ったホイールを見つける事ができます。

また、スプロケットに専用のスペーサーを入れれば、11段変速用のホイールを10段変速のコンポーネントのロードバイクで使用する事が可能です。

少し前のモデルのロードバイクを中古で購入したり、または譲り受けた場合、コンポ―ネントが10段変速である事も少なくないでしょう。

通常のパーツであれば、10段変速と11段変速の間には互換性はありませんが、ホイールの場合はスペーサーを使用すれば、コンポーネントの総入れ替えをせずとも、最新のホイールが取り付けられる事になります。

だだし、逆のケースで、10段変速用のホイールを11段変速のコンポーネントに使用する事はできません。

これは、フリーボディの幅が異なる為です。

また、実家の物置から古いロードバイクが見つかったり、フリマアプリやオークションでクラシックなロードバイクを購入する事もあるかと思います。

古いロードバイクの場合、ハブ径は120mm及び126mmで、現行モデルのホイールとの互換性はありません。

具体例として、WH-9100のリアホイールを、7段変速のコンポーネントが取り付けられているロードバイクに使おうと思った場合、ハブ径が4mmも異なる為に取り付けができません。

このように全てに互換性があるわけではありません。

また、フロントホイールは変速段数に関わらず、ハブ径は全て100mmです。

そのため、フロントホイールなら、6段変速のコンポ―ネントが付いているロードバイクでも、11段変速用コンポ―ネントの取り付ける事は、問題なく行えます。

クロスバイクホイールのハブ径は悩ましい

クロスバイクのリアホイールのハブ径は、130mmか135mmの二通りあります。

これは、クロスバイクにはロードバイク寄りの物と、MTB寄りの物があった名残です。

ハブ径130mmのホイールが取り付けられているクロスバイクには、ロードバイクのホイールが使用できます。

それにより、ロードバイク同様、ホイールの選択肢が多いです。

クロスバイクを購入する際、今後は改造も楽しみたいと考えているのであれば、ハブ径130mmのホイールが使用されているクロスバイクを選ぶとよいかもしれません。

次に、ハブ径135mmのクロスバイクのホイールですが、今現在、その選択肢は非常に限られています。

と言うのも、ロードバイクにはハブ径135mmのホイールは存在しません。

MTBバイクからの流用も、ブレーキの違いやホイールサイズ、リム幅の関係からほぼ不可能でしょう。

135mmのハブ径のクロスバイクは、過去のMTBの規格に由来します。

つまり、135mmのハブ径は、変化の激しいMTB規格に置き去りにされてしまったのです。

しかし、135mmと130mmでその差が5mmだけなら、両側から2.5mmずつ強めに締め付ければ135mmのホイールの代わりに130mmのホイールを取り付けられるのでは、と思う方もいることでしょう。

しかしながら、残念な事にそれは不可能です。

なぜなら、締め付ける際に均等に2.5mmずつとはならず、必ずどちら側かに偏りが発生します。

そうすると、偏った側にフレームの変形する力が集中し、そこでフレームが破断する事態に繋がります。

仮に取り付けられたとしても、本来の固定力を発揮できない為に、走行中にホイールが外れる事も起こりうるでしょう。

130mmのハブ径の物を、135mmに延長するパーツも存在しますが、こういったパーツを使うと、本来あるべき性能や設計された安全性が発揮できない可能性があるので、できる限り使用は避けたほうがよいでしょう。

フロントはロードバイクと同じく、ハブ径は100mmで統一されています。

こちらであれば、ロードバイクのホイールでもなんら問題なく取り付けできます。

シンプルだから迷わないピストバイクホイール!ハブ径は一種類

ピストバイクのハブ径は、フロント100mm、リア120mmです。

この規格は、古いピストバイクから変わっていません。

今後も変わる事はないと思われます。

通常は古い自転車と新しい自転車の間には、規格の移り変わり等の事情により、互換性があるパーツは滅多にありません。

しかし、ピストバイクの場合は、規格の移り変わりがほとんどなかった為に、古いパーツでも問題なく取り付けができます。

これは、古い資産を生かす事ができる数少ないケースです。

ピストバイクのホイールは、ロードバイクのホイールよりも安価に購入できます。

さらにディスクホイールや、バトンホイールなどのちょっと特殊なホイールも多く販売されています。

ハブ径も120mmの一種類しかない為に、互換性で迷う必要がありません。

これらの事から、ピストバイクは気軽にカスタマイズが可能であると分かります。

シクロとMTB規格は煩わしい

ここまでは、キャリパーブレーキを使用するハブについて話しを進めてきましたので、ディスクブレーキを使用するハブについては触れてきませんでした。

ここからはディスクブレーキを使用する、MTBやシクロクロスバイクについて話しを進めていきます。

まずは、シクロクロスバイクから解説します。

シクロクロスバイクには、カンチブレーキタイプとディスクブレーキタイプの二種類があります。

そして、それぞれのホイールで異なったハブ径のホイールを使用しています。

そのため、同じシクロクロスバイクでも、ディスクブレーキタイプからカンチブレーキタイプへのホイールの流用は不可能です。

ですが、カンチブレーキタイプのシクロクロスバイクには、通常のロードバイクホイールが使用できます。

カンチブレーキタイプのホイールのハブ径は、フロント側100mm、リア側が130mmです。

これは、通常のロードバイクのハブ径と同じです。

しかし、カンチブレーキのシクロクロスバイクは、現在主流から外れてしまいました。

メーカーから販売されるモデルは、ほぼ全てディスクブレーキモデルになっています。

ディスクブレーキのシクロクロスバイクのホイールは、リア135mmです。

一見するとクロスバイクと同じだと思ってしまいますが、ディスクブレーキの取り付け台座の有無や、後述しますがホイールの取り付け方法の点で、両者に互換性はありません。

次にMTBについてですが、MTBのハブ径は142~148mmとバラツキがあります。

ですから、同じMTBホイールでも、ホイールのハブ径によって取り付けができない物があるという事です。

MTBはハブ径の規格も、ホイールのサイズも独特ですので、他のタイプの自転車にホイールを流用する事は、難しいでしょう。

今後の主流?勢いを増すスルーアクスル採用ホイール

この記事を読まれる方はきっと、新しくホイールの購入を考えている方だと思います。

そこで最後の章では、今後のロードバイクホイールの展望について話しをします。

最近ロードバイクには、シクロクロスバイクのようなディスクブレーキが付いたモデルを見かける事があるかと思います。

このディスクロードは今現在、ロードバイクメーカー各社が、もっとも力を注いているカテゴリーです。

ディスクロードは、ホイールを「スルーアクスル」という方法で固定しています。

これはディスクブレーキのシクロクロスバイクやMTBと同じ固定方法です。

スルーアクスルについて簡単にご説明します。

従来のクイックレバーの場合は、フレームの切り欠けに、ハブの一部をはめ込む形で固定していました。

しかしスルーアクスルは、フレームに空いた穴にシャフトを通し、ハブをフレーム間で串刺しにする格好で固定します。

これにより、従来の固定方法よりも剛性と固定力を高める事ができます。

重要な点は、今までのホイールとは根本的に固定方法が異なるという事です。

そして、今後スルーアスクルが主流になれば、今までのホイールの資産を生かす事が難しくなってきます。

今、ディスクロードのハブ径の主流は135mmと142mmです。

しかし、つい先日に、カンパニョーロの12段変速化が発表されました。

ロードバイクの過去の規格を見ると分かりますが、変速段数が増えるとそれに伴い、ハブ径も広がってきました。

この事から、今後も変化が続く事が予想されます。

つまり、今はまだ、この規格自体が混乱の中にあると言えます。

これから新しいホイールを購入しようと思った時に、「今後の先細りが予想されるが、今は沢山の資産が利用できる従来規格のホイール」か、「今後の発展に期待でき、将来的な資産ともなりうるが、メーカーの都合次第で、時代のあだ花に終わる可能性もある、新規格のホイール」か、そのどちらが自分に必要なのか、慎重に見極める必要があります。

移り行く自転車規格の最中で

MTBやシクロクロスバイクは、規格の移り替わりが激しいので、ホイールの互換性に関しては難しい部分があります。

その波がついに、保守的なロードバイクに押し寄せてきました。

それによりクロスバイクもそのあおりを受ける事でしょう。

結局はどの自転車の規格も不変ではなく、時代と共に移り変わっていきます。

ですが、ホイールのハブ径などの基本的な知識については変わる事はないでしょう。

今後、どのような規格が出てこようとも、基本的な知識を身に付けていれば、移り行く規格や流行などに惑わされずに、自分が本当に必要な物を見分けられるようになってきます。