Qファクターとはなんでしょうか?
ファクターとありますが、これは長さを表す呼び名です。
このQファクターは、シマノクランクでもカタログに項目がありますが、ショップや通販などでは記載されていないことが多いです。
しかし、Qファクターを知るとライディングにとって、重要な要素であることがわかります。
ライディングに違和感があるのに、何がおかしいのかわからないという方は、もしかするとこのQファクターに要因があるのかもしれません。
シマノクランクのQファクターって何?
Qファクターとは、クランクの左右の両端から測った距離のことです。
Qファクターとペダルの軸長で左右のペダル間隔が決まります。
この長さに名前があり、ペダルの間隔もセッティング項目の一つということを、知らなかった人もいるかもしれません。
しかし、このQファクターは身体とライディングスタイルにとって、重要な意味があります。
シマノのロードクランクのQファクターは、一部抜粋ですが、現行デュラエースが146mm、アルテグラが146.6mm、105が146mm、前アルテグラ・105トリプルは約155mmとなっています。
そして、MTBコンポーネントではXTRがダブル・シングル共に168mm、XTはダブル・シングル・トリプル全て176mm、ダウンヒルコンポーネントであるセイントが193mmになります。
チェーンステイの狭い、ロードバイクコンポーネントではQファクターは小さめで、タイヤが太く、チェーンステイの広いMTBコンポーネントは、クランクが干渉するのを避けるためQファクターは大きくなります。
また、マウンテンバイクは悪路を走るため、サドルから腰を上げ、ペダルの上に立つ動作を多くとるので、立ち上がったときの安定性を考えてもQファクターは大きくする必要もあるのでしょう。
Qファクターと身体の関係
Qファクターはクランクの左右の距離、その先にペダル軸長の長さが加わり、左右のペダル間隔になります。
平均的な体系の方は、現在のシマノクランクもQファクターを気にせずに乗れると思いますが、骨盤の広さや股関節、膝関節の可動域など個人差があります。
また、O脚やX脚など脚の形、足のサイズによって自転車に乗るときの最適な脚幅があります。
大半の方は、一般的に販売されているロードバイクのQファクターも許容範囲となり、特に不便なく乗れるでしょう。
しかし、極端に骨盤が狭い・広い、股関節から下の関節が硬いなどの要因があると、現行モデルのQファクターではペダリングに違和感が出たり、最悪は膝などの故障の原因になってしまう場合もあります。
Qファクターを変えることは難しいですが、シューズ選びやクリートの調整でもQファクターの問題が解消する場合がありますので、走っていて脚に違和感があった場合は試してみてください。
膝・股関節は左右にも稼働し誤差を吸収してくれるので、Qファクターの微調整はあまり必要ありませんが、吸収しきれない誤差となった場合に、ペダリングに影響が出たり怪我に繋がってしまったりします。
シマノクランクのQファクターは変えられる?
ホローテック2以降のシマノクランクのQファクターは、固定されており調整はできません。
グレードや変速数によってQファクターが変わるので、Qファクターを変えるにはグレードから選ぶしかありません。
しかし、Qファクター調整と近い意味を持つのが、ペダル軸長とクリート位置です。
クリート位置を外にすれば間隔を狭めることができます。
しかし、ペダル間隔だけではなく足の特性によっても最適な位置があるので、極端に動かすのは推奨しません。
ペダル軸長はメーカー、モデルによって異なるので、ペダル間隔を狭めたければ軸長の短いものを、広げたければ軸長の長いものを選ぶことになります。
また、ペダル軸長・クリート位置で調整するときは、Qファクターが変わっているわけではないので、クリートをセットしたときに踵などがクランクに干渉しないか注意してください。
ペダル間隔を広げるのであれば、スペーサーなどで軸長を伸ばすこともできます。
ホローテック2のような2ピース構造のクランクセットは、Qファクターを手軽に変える手段はありませんが、Qファクターを意識することによってライディングフォームに変化をもたらすこともできるでしょう。
キッズライダーにも重要なQファクター
Qファクターの影響を特に受けるのがキッズライダーです。
サイクルスポーツではジュニア・キッズ用のパーツが極端に少なく、一般に売られているパーツを流用することも少なくありません。
現在はシティサイクルなどで使用されていて、以前はシマノでも主力だったスクエアテーパーのクランク、ボトムブラケットはQファクターの小さいものもあり、キッズにも乗りやすくなっています。
しかし、ロングライドやスプリントもするスポーツサイクルには、スクエアテーパーはわずかしか残っていません。
キッズや、骨盤の狭い方が一般的なQファクターの車体に乗ると、膝やつま先が開き、ガニ股でペダリングをするような状態の、あまりよくないとされるライディングフォームになってしまいます。
そこを気づかずに矯正すると、膝や股関節の故障に繋がることもあります。
サイクルスポーツでのジュニア以下の人口は多くはありませんが、少ないからといって合わない車体で無理をさせていいわけではありません。
ペダリングの様子がおかしい場合は、原因がQファクターである可能性もあるので、無理をさせずキッズ用のパーツを使いましょう。
現在もスクエアテーパーを使用して、Qファクターを調整することができるので試してください。
ライディングスタイルとシマノクランクの関係
人が立っているときは、Qファクターという概念はありませんが、ここで仮にQファクターを設定してみましょう。
人が歩く状態を基準とし、力のかけ具合が通常の状態として考えます。
立って作業をするとき、力を入れるとき、身体を安定させたいときなどは、脚の幅を広げるため、Qファクターは大きくなります。
このように考え、ロードバイクに当てはめれば、高ケイデンスで回すときはQファクターは小さく、トルクをかけて踏むときや車体を安定させたいときは、Qファクターは大きいほうが安定するでしょう。
体型の違いにおいては、シマノであれば165~180で2.5mm刻みのクランク長や、クリートのセッティングなど他の要素も出てきます。
しかし、自分のライディングスタイル、またはどのようなライディングを目標にするのかを考える際は、Qファクターを考えるとよいと思います。
ロングライドを安定して楽しみたい、一定の出力を続けたいなどの場合は、Qファクター・ペダル間隔を小さめに。
そして、スプリントで力を発揮したい、悪路を走りたい、車体を大きく左右に振るようなダンシングをするなら大きめになります。
Qファクターを考えたセッティング
トップクラスのスプリンターであるマーク・カヴェンディッシュ選手は、ペダル軸にスペーサーを付け軸長を10~15mm伸ばして使用しており、最多勝の年はシマノコンポーネントを使用していました。
体格やフォームと、感覚によって出されたセッティングは彼独自のものですが、200km以上をロスなく走り、最後に限界に達するスプリントをするために必要なペダル間隔なのでしょう。
スプリント時のフォームを見ると、上半身は安定し前輪のハブまで身体は突き出しています。
そして、車体を大きく横に振りゴールに飛び込みます。
このように車体を大きく左右に動かすライディングでは、Qファクターが大きいほうが安定します。
逆に、シッティングで長距離を一定のスピードで走るときは、Qファクターが大きいと脚の回転の妨げになりロスが多くなるので、Qファクターは小さいほうが安定します。
ロードバイクのセッティングは、あらゆる要素に合わせることが必要となるということです。
自分の考えるライディングスタイルにクランク長やQファクターも考慮して考えると、今まで以上のパフォーマンスを発揮できるようになるかもしれません。
Qファクターを見直して快適なライディングを!
シマノクランクのQファクターは、大半のライダーが不具合なくライディングできるように考えられています。
しかし、万能なものではなく、誰にでも合うものではありません。
現在はQファクターを調整することは難しいですが、人の身体がそれぞれであるようにQファクターもその人に最適なものがあります。
セッティングに行き詰ってしまったら、Qファクターを見直すことでヒントを掴めるかもしれません。
そのときは、Qファクターのチェックとあわせてトータルバランスを考え、見直してみましょう。