アルミのロードバイクがレースシーンを離れて久しいですが、メイン素材として活躍していた時期も長くありました。
その時代にピナレロが誕生させたのが、ハイブリッドフレーム「カーボンバック」で、世界を席巻した存在でした。
そのカーボンバック誕生から20年、その生き残りであったピナレロの「NEOR(ネオール)」が、2018モデルをもって廃盤となります。
そこで、今回はネオールと共に、カーボンバックの歴史も振り返ってみます。
ピナレロ・ネオール2018モデルは「カーボンバック」最後の生き残り!
今回は2018モデルをもって廃盤となるピナレロの「ネオール」をご紹介しますので、まず「カーボンバック」のお話からしていきましょう。
カーボンバックは、1998年にピナレロが世界で初めて発表した、シートステイにカーボンシートを使用したアルミフレーム車のことです。
フルカーボン車も世に出ている時代ではありましたが、特に市場モデルは今では考えられない程の高額で、普及というレベルまではまだ遠い存在でした。
そのため、多くのサイクリストがカーボンの乗り味を知らなかった時代であり、車体の一部であってもカーボンが使用されているということで、大いに注目が集まりました。
ピナレロがこのあと節目ごとに登場させることになる「PRINCE(プリンス)」の初代が、カーボンバックのデビューとなります。
フルアルミよりも軽量で、快適性まで備えたカーボンバックは、世界のレースでも数々の勝利を重ね、ピナレロのレーシングブランドとしての地位を確固たるものにしました。
これを見た他のメーカー、ブランドも追随してカーボンバックを採用し、2000年代初頭はハイブリッドフレームの天下となりました。
ピナレロのフレームの変遷!2000年初頭~ネオールのデビューまで
ピナレロのカーボンバックのアルミフレームは、その後もONDAが初めて導入された「プリンスSL」や、初代「MARVEL(マーベル)」などに受け継がれ、2018モデルのネオールまで継続されてきました。
しかし、時代は流れていくもので、この間にピナレロは、現在の不動のフラッグシップ「DOGMA(ドグマ)」を、マグネシウム合金製として登場させています。
また、2008年にはついにフルカーボンとなったプリンスをフラッグシップに据え、カーボン全盛期への対応を匂わせます。
そして、2010年ついにピナレロはドグマをカーボン化したことで、レースの世界から金属フレームを完全に撤退させます。
この後もカーボンバックは、毎シーズン1モデルのみではありましたが、「FP1」「FP UNO」などの機種が継続され、2014年モデルからネオールがその継承モデルとなりました。
しかし、ネオールがデビューした2014モデルには、ピナレロのラインナップに20万円台のフルカーボンロードが登場しており、価格差はまだ6万円ほどありましたが、以前に比べればその差も大分小さくなってきました。
ピナレロ・ネオールが2018年に幕を下ろす布石は2015シーズン!
今回は、ピナレロのハイブリッドアルミフレーム車「ネオール」が、2018モデルをもって歴史にピリオドを打つということで、カーボンバックの歴史も振り返っています。
前項でお伝えしたネオールのデビューシーズンである2014モデルには、アルミロードがネオールしかありませんでした。
先ほど価格に少し触れましたが、当時10万円台のロードバイクはネオールだけで、既に高級ブランドとして認知されていたピナレロの中では、価格的にまだ優位性がありました。
しかし、翌2015シーズン、世界的にもアルミフレームに再興の流れがあるのを受け、ピナレロも長らく扱いの無かったフルアルミ(フォークはカーボン)フレーム車、「PRIMA(プリマ)」を登場させます。
シマノ・ソラを組み合わせた完成車は144,720円(税込)、もちろん最廉価モデルになります。
一方ネオールは、ティアグラと105のミックスコンポで214,920円(税込)、前シーズンよりコンポのグレードを上げたことから価格も3万円近くアップしました。
前項でも触れましたが、これでフルカーボン車との価格差もまた迫ることになりましたので、結果論ではありますが、この2015シーズンがカーボンバック終焉の第一歩となってしまったようです。
アルミフレームのレベルアップが2018年でのネオールの終焉を招いたか?
2015シーズンで登場したフルアルミロードのプリマは2019モデルも継続され、5シーズン目に入ります。
新陳代謝が激しくモデルチェンジを繰り返す傾向にあるピナレロにしては珍しく、登場以来ほとんど形状を変えることなく今日に至っています。
それが人気の証明でもあり、辛い評価を下すインプレ情報などでは、同時にネオールの衰退も表すと言われています。
カーボンバック最大のメリットは、衝撃吸収性の高さがもたらす快適な乗り心地です。
カーボンバックが開発された当初のアルミフレームは、非常に剛性が高く硬いものでした。
そのため、当たりが強めで、地面からの振動や衝撃がビンビン伝わってくる、乗り心地は二の次というフレームでした。
そこに、快適な乗り心地という概念を持ち込んだのがカーボンバックであり、一世を風靡したのも快適性によるものです。
しかし、近年はアルミの成形技術が進化し、剛性をそれほど落とさずとも衝撃吸収性を高める仕様のフレームが、多くのメーカーで作られています。
ピナレロのプリマももちろんその中の一台であり、そうなればカーボンバックの意義は薄れますので、ネオールが2018モデルをもって終了するのも、致し方ないことなのかもしれません。
ピナレロ・ネオールが型落ちになっていたら「買い」か?
ここまでお伝えしている通り、ピナレロのネオールは2018モデルをもってラインナップから外れます。
しかし、店舗によってはざいごが残っている可能性もあります。
しかも、既に2019モデルの販売も始まっているため、2018モデルは型落ちのセール品として扱われている店舗もあります。
価格の優位性がなくなってきていただけに、値引き販売がされているのであれば、見直したい存在ではないでしょうか?
確かに最近のアルミフレームのレベルは高く、お伝えした通り衝撃吸収性に長けていますので、乗り心地を犠牲にしているフレームはほぼ皆無と言ってもよいくらいです。
しかし、根本的な素材による違いは覆せるものではなく、カーボンのしなやかさにはかなわないのです。
そのため、カーボンバックにはフルアルミには体感が難しいレベルの快適性があり、そこに優位性が十分にあります。
したがって、少しでも安く、フルアルミフレームに近い価格になっているのなら、筆者はお買い得ではないかと思う次第です。
ピナレロ・ネオール2018モデルのスペック
それでは最後に、ピナレロ・ネオールについて、型落ちや中古市場などで、今後目にする機会もあるはずなので、2018モデルのスペックをご紹介しておきます。
フレーム形状は、トップチューブが地面と平行に真っ直ぐ伸びている「ホリゾンタルスタイル」(46サイズ以下はスローピングスタイル)で、これも衝撃吸収の高さに一役買っています。
ピナレロ伝統のONDAのフォークとシートステイは、往年の名作「FP」シリーズから継承されたもので、抜群の安定性と振動の除去力の高さがあります。
コンポはリア10速のシマノ・ティアグラのフルコンポで、ホイールもシマノ製になります。
また、この価格帯のフレームに付属することの少ない、フィジークのサドルもポイントが高いですね。
定価は225,720円(税込)、店舗によってまちまちですが、型落ちは20%オフが平均と言うところですので、10万円台に突入していればお買い得かと思います。
今後は最後のカーボンバックとして歴史に名を残すのかもしれない
今回は、ピナレロのカーボンバックアルミロード「ネオール」のお話をしました。
残念ながら、20年に渡る歴史を誇ったカーボンバックの最終モデルになってしまいましたが、まだ購入のチャンスはあります。
もし見かけた際は、今回の記事を参考に検討頂ければ幸いです。