スポーツバイクのブレーキは機種によって主流が違いますが、ロードバイクは従来型のリムブレーキとディスクブレーキで割れている現状で、今が分岐点に差し掛かっている所です。
ピナレロも正にその地点で、徐々にではありますがディスクブレーキ仕様の機種が増えてきた印象です。
2019モデルでは廃盤になりましたが、GAN(ガン)にもディスクブレーキモデルがありましたので振り返ってみます。
ピナレロに乗るチームはディスクブレーキに積極的ではない?
まずお伝えしておかなくてはならないのは、今回お話しするガンのディスクブレーキモデル「GAN DISK(ガン・ディスク)」は、2018モデルをもって廃盤になることです。
そのため、今後入手が難しくなる可能性が高いです。
しかし、店舗によっては在庫がある可能性もあるため、問い合わせをしてみるのもいいでしょう。
ロードバイクはレースの機材としての側面が強く、特にピナレロのように世界トップクラスのチームのサプライヤー(機材提供)にもなりますと、チームの意向が反映されるので、市場モデルにもその影響が出やすくなります。
ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアなどのビッグレースを含む、ワールドツアーを主催する「UCI(国際自転車競技連合)」が、ロードレースにディスクブレーキを解禁したのは2015年です。
試験運用を経て、2017年に本格始動の予定でしたが、2016年シーズン当初のレースである選手が負った大きな裂傷をディスクブレーキが原因と主張したことにより、一時凍結されます。
その後2017年に試験運用が再開され、2018年7月にUCIは本格使用を認めることになります。
この流れを受けて、各メーカー、ブランドは動いているわけですが、本格解禁となった2018年のツール・ド・フランスでピナレロが機材を提供する「チーム・スカイ」は、ディスクブレーキモデルを使用しませんでした。
今後の動向次第ではありますが、この流れが続くようですと、ピナレロにはこれ以上ディスクブレーキモデルが増えない可能性もあります。
ピナレロに乗るプロにはディスクブレーキモデルを使用しない理由がある
前項ではレースの世界ではディスクブレーキの使用に対して、まだ流れが決まっていないというお話をしました。
ピナレロが2018年のツール・ド・フランスでディスクブレーキモデルを使用しなかったのは、特別な規格である「スルーアクスル」が原因の一つと言われています。
スルーアクスルはホイールをフレームに固定する一つの方法で、従来の「クイックリリース」に比べ、ホイールの脱着に手間が掛かります。
ツール・ド・フランスでは、パヴェ(石畳)のコースや山岳ステージなどで不整地を走ることも多く、タイヤのパンクも大いにあり得ます。
そこで、ホイール交換に時間を掛けていては当然勝負に関わりますから、使用しないというスタンスを貫いたそうです。
とは言え、これはトッププロ選手対象の話であり、今回の主役であるガンもレースモデルですが、アマチュアライダー向けモデルなのでまた別の考え方があります。
そこで次項からは、ディスクブレーキ+ロードバイクのメリットを確認していきます。
ピナレロ・ガンディスクを選ぶメリット
それではここから、ディスクブレーキ搭載のロードバイクのメリットを確認していきます。
ピナレロ・ガンのデビュー時のラインナップは4機種、その内ディスクブレーキの装備は1機種でした。
その他のモデルは「キャリパーブレーキ」という、従来型のリムブレーキが装備されています。
ディスクブレーキのメリットは、キャリパーブレーキのデメリットを打ち消すものと考えるとよりハッキリしますので、両者を比較しながら話を進めていきます。
まずディスクブレーキはキャリパーに比べ、構造的に制動力が強くなります。
少し大げさな例えですが、緊急時やきつい下り坂などで強いブレーキングを必要とする場合、キャリパーは指3~4本を掛けてレバーを引きますが、ディスクは指一本で同程度の制動力が得られると言われています。
また、ディスクブレーキは、地面から遠いホイール中央で制動動作が起こりますので、ブレーキが泥や水をかぶりにくく、制動力がいつも一定です。
しかし、キャリパーブレーキはホイールの外周で制動動作が起きるので、ブレーキやホイールに汚れや水分が付着しやすく、制動力が落ちてしまいます。
アマチュアライダーでは、上記の2点が特に大きなメリットとなります。
ピナレロ・ガンディスクは頑丈な作りになっている
ピナレロ・ガンディスクのようなディスクブレーキ仕様のロードバイクは、フレームやホイールが、リムブレーキモデルよりも頑丈で、剛性も高くなります。
これはディスクブレーキの制動力の強さに耐え得るためですが、先ほどプロの話をした項で「スルーアクスル」という固定方法をお伝えしましたが、これも強度を出すための技術です。
そのため、体重が重い方や、脚力に自信のある方は、ノーマルグレードのガンですと、たわみがあってフワフワしてしまう可能性もありますので、ガンディスクの方がおすすめです。
そして、リムブレーキは文字通りホイールの外周のリムで制動を行うので、リムを傷つけてしまう可能性があります。
ガンディスクの標準装備のホイールはアルミリムなので、これは将来的なことですが、カーボンリムは傷める可能性が高くなりますので、ディスクブレーキモデルの方が適しています。
ピナレロ・ガンディスクはロングライド向き
ピナレロのガンは、レースモデルの位置付けではありますが、ツーリングなどのロングライドに向くタイプというインプレ評価も多く、レース志向が薄い方にも推奨されています。
ガンは先代のフラッグシップモデルである「DOGMA(ドグマ) F8」の直系モデルとして登場した機種で、形状や技術は受け継いでいますが、素材を変え、ドグマとは違う味付けがされています。
ドグマの持つ神経質すぎるピーキーさや、爆発的な加速力などを少し抑え、衝撃吸収性や安定性を高めることで、アマチュアライダーが乗りやすく、扱いやすい仕様になっています。
その中でも「ガンディスク」は、ノーマルグレードのフレームにディスクブレーキを搭載したもので、ノーマルグレードはピナレロが採用しているカーボン繊維の中で、最もしなやかで柔らかめな素材が使用されています。
そのため、さらに衝撃吸収性が高く快適な乗り心地になりますし、振動や衝撃が身体に伝わりにくくなるので、ダメージが残りません。
また、しなやかなフレームはペダルを漕ぐ力に対して反発力が無いので、脚に負担が掛からず、長時間ペダルを漕ぐことができます。
こういった要素があるので、ガン(ノーマルグレード)やガンディスクは、ロングライド向きと評価されているわけです。
ロングライドにおけるガンディスクの優位性
前項ではピナレロのガンディスクは、ロングライド向きとお伝えしました。
50㎞、100㎞と走行していると、ずっとハンドルを握り続ている手にも絶えず加重が掛かっている状態なので、終盤には握力がなくなってきます。
そうなるとブレーキレバーに指を掛けるのも厳しくなり、見知らぬ地や急な下り坂でのブレーキングではとても不安が残ります。
その点では、指一本でも十分な制動力が得られるディスクブレーキなら安心感が違います。
また、メリットの話のところで、路面状況や天候に左右されにくいとお伝えしましたが、ロングライドの場合はどんな道を走るか分かりませんし、急な天候の変化は十分に考えられます。
例えば、山道などで雨が降り出したら、制動力が強く安定しているディスクブレーキの方が断然優位になります。
ロードバイクで長距離を走るならディスクブレーキは優位!
今回はピナレロのガン・ディスクが、アマチュアライダーにどんな優位性があるのかを考えてみました。
ロングライド向きと評されるガンには、本文でお伝えした通り、様々な面でディスクブレーキに優位性があります。
そのため、今後手に入る可能性は低くなってきますが、見掛けた際は検討してみてください。