ピナレロ往年の名作「PRINCE(プリンス)」が2019モデルでリニューアルされ、全く違う形状にフルモデルチェンジされました。
新プリンスの内容も当然気になりますが、フルモデルチェンジをした機種は先代を振り返ると、より新しいものが際立ってきます。
そこで今回は、新プリンスをご紹介しながら、2018モデルまでのプリンスの歴史も確認することにします。
ピナレロ・プリンスの歴史
プリンスはピナレロの節目に登場し、常に重要なポジションを与えられてきましたので、まずはその歴史を振り返ってみます。
初代は1999年に市場デビューをしていますが、世界で初めてシートステイにカーボンを使用した「カーボンバック」のアルミフレーム車でした。
フルカーボン全盛の今でこそほぼ見られなくなりましたが、発売当初は世界を席巻した存在で、多くのメーカー、ブランドが追随したと聞いています。
2代目は現在もピナレロの象徴と言われている、「ONDA」のフォークが初めて採用された「プリンスSL」でした。
そして、2008年ここまで金属フレームをフラッグシップに据え続けてきたピナレロが、ついにカーボンをトップモデルとし、「プリンス・カーボン」が誕生します。
この成功がピナレロにDOGMA(ドグマ)のカーボン化を決意させたとも言われており、近年のピナレロの流れを決定づけたモデルと言えるでしょう。
その後一旦市場から姿を消したプリンスは、2015年に当時のフラッグシップ「ドグマ65.1」のセカンドグレードとして復活、2018モデルまで継続されました。
そして、2019モデルではフルモデルチェンジを行い、ドグマのセカンドグレードとしての位置付けは同じですが、全く新しい金型を使用した最新鋭のバイクに生まれ変わりました。
ピナレロ・プリンスは2018年まで歴史の継承モデルだった
前項ではプリンスの歴史を振り返りましたが、常に新しい試みを行う際はプリンスの名でというピナレロの姿勢が歴史からも伺えたかと思います。
そのプリンスが2019モデルでフルモデルチェンジを果たしたわけですが、冒頭でもお話ししたように先代との比較でより際立つということもありますので、ここでは2018モデルのお話をします。
2018モデルは2015年から続くドグマ65.1の直系として、ずっと同じ金型を使用してきた歴史の継承モデルでした。
4代目となるこのモデルが販売された2015年は、ピナレロの第3世代到来とまで言わしめた「ドグマF8」がデビューした年でもあります。
この後のピナレロは、この新世代のドグマを模した形状のバイクが次々に投入され、プリンス・カーボンから続いてきた流れを押し返していったのです。
明らかにエアロ形状を意識したドグマを中心とした新しい波の中で、プリンスは歴史の継承モデルとして2018まで生き残ってきたわけです。
ピナレロ・プリンス2018モデルのスペック
ピナレロ・プリンスの4代目最終シーズンとなった2018モデルは、ドグマ65.1の金型を使用、カーボン素材も「60HM3K」という、2015年当時そのままのものでした。
そして、ONDAフォークはドグマ65.1がモデルチェンジされた際に使用された「ONDA 2」で、より複雑で繊細な造形により、剛性と空力性能を大幅にアップさせたものです。
また、これはシートステイとも形状のすり合わせが行われており、一貫したデザインも高評価されていました。
さらに、これもピナレロの伝統様式の一つである、電動式、機械式のコンポをケーブルの受けを交換するだけで使い分けられる「THINK 2」のシステムも搭載されています。
2018モデルは完成車のみで、シマノ・アルテグラのニューモデル「R8000」のフルコンポ、フルクラム製のホイールに、フィジークのサドルという、これも伝統的な組み合わせでした。
価格は502,200円(税込)、ピナレロ全体からするとドグマ、GAN(ガン)に次ぐ、サードグレードの位置付けでした。
ピナレロ・プリンス2019モデルの概要
プリンスはここまでお伝えしてきたように、2018モデルまでは歴史の継承モデルとしてラインナップされていました。
そして、2019モデルで完全リニューアルのフルモデルチェンジとなります。
フラッグシップドグマF10譲りの形状で、技術も受け継がれていますが、新たな金型で製造されており、独自の技術も投入されていますので、現時点ではピナレロで最新鋭の機種ということになります。
ダウンチューブのボトルケージ部分を大胆にえぐったデザインや、整流フィン付きのONDAフォークなど、ドグマF10が絶賛された技術は搭載されています。
そして、プリンス独自の技術としては、前輪とダウンチューブの間隔を詰め、前輪に沿わせるようなデザインにしています。
さらに、フォーククラウンとヘッドチューブの一体化を推し進め、密着感を上げることで気流の乱れを防いでいます。
また、左右非対称のアシンメトリックデザインも強化されており、ドライブ側の強度をドグマよりも上げることで、素材のグレード差による性能の低下を最低限に抑えています。
そして、THINNK 2から続く電動式コンポへの対応は、シマノDi2の「ジャンクションA」をダウンチューブにセットできますので、配線のごちゃ付きがなくなり使い勝手が向上しています。
ピナレロ・2019モデルラインナップ
それでは最後に、ピナレロ・プリンス2019モデルのラインナップをご紹介します。
なお、ノーマルグレードに関しては2018モデルと同名ですので、検討される際は十分に注意してください。
それではご紹介します(価格は税込)。
【PRINCE(プリンス) FX】
●完成車
『シマノDURA-ACE Di2』
参考価格:¥1,047,600
『シマノULTEGRA』
参考価格:¥570,240
●フレームセット
フレーム重量:940g(53サイズ)
参考価格:¥491,400
【PRINCE】
●完成車
『カンパニョーロPOTENZA』
参考価格:¥469,800
『シマノULTEGRA』
参考価格:¥469,800
『シマノ105』
参考価格:¥415,800
※42サイズは小柄な方向けの専用サイズ「EZ-fit」仕様
●フレームセット
フレーム重量:960g(53サイズ)
参考価格:¥297,000
【PRINCE DISK】
●完成車
『シマノULTEGRA』
参考価格:¥516,240
●フレームセット
フレーム重量:980g(53サイズ)
参考価格:¥318,600
ピナレロ・プリンスの2018モデルを今手に入れる意味
家電製品などはニューモデルが発売される前後の旧モデルを狙うという方法がよく紹介されていますが、プリンスはどうでしょうか?
2018年11月時点の情報では、ニューモデルも店頭に並び始めている頃ですが、2018モデルもいわゆる「型落ち」ですが販売されている店舗もあります。
これだけの大幅モデルチェンジですと、旧モデルに年代落ち感があるのは否めません。
周囲にピナレロ通の方がいれば、「わざわざ旧モデルを購入したのか」という好奇な目で見られてしまうかもしれません。
しかし、ここまでお伝えしてきたように、2018モデルのプリンスは、初代がきっかけで築いてきた歴史の継承モデルであり、新時代に突入したピナレロに現存するモデルは限られています。
そのため、ピナレロの2000年代に築かれた様式を好きというファンも多く、その生き残りのプリンスに積極的に乗りたいと考える人も多いと聞きます。
これは筆者個人の考えですが、形状を見比べて旧モデルが気にいるようであれば、十分に購入する価値のあるモデルだと思います。
あえて2018モデルを選択するのもあり!
今回は、ピナレロのプリンスを特集しました。
2019モデルは先代の面影をほとんど残さない完全リニューアルとなりましたので、あえて旧モデルを振り返りました。
このタイミングで旧モデルという選択は勇気がいるかと思いますが、ピナレロの歴史と伝統様式が詰まった一台だけに、筆者個人的には捨てがたい思いが強いのが本音ですね。