ロードバイクは、基本的にレースの機材として開発されるものです。
レースに供給されるような物は、最高の素材を最高の技術を持って製造されますので高額になりますし、選手用なので誰にでも扱いやすいフレームというわけではありません。
そこで用意されるのが、素材や技術を見直し、手の出しやすい価格や扱いやすさも考えられたグレードです。
アンカーのRS8もそんな存在ですので、上位モデルとの比較も交えながらご紹介します。
アンカーは「ブリヂストン」が母体
まずは「アンカー」のお話からですが、ロードバイクの世界地図からすれば珍しいと言える、日本のブランドです。
世界的な自動車タイヤメーカー「ブリヂストン」には「ブリヂストンサイクル」という系列会社があり、そのスポーツバイクのブランドが「アンカー」です。
街の自転車屋さんの看板にも掲げられているように、ブリヂストンサイクルの主力製品は、今も昔もママチャリや電動アシスト付きなどのシティサイクルです。
そのイメージとの差別化を図りたく、スポーツバイク部門をブランド化したと言われています。
また、アンカーは、日本屈指のサイクリングチーム「チーム・ブリヂストンサイクル」に機材を提供する立場にあります。
ロードバイクを始め、MTB、トラックレーサー、シクロクロスなど、競技用自転車を多く扱っているのはそのためです。
今回の主役「RS8」は、そのチームのメインバイクである「RS9」の一般ユーザー向けモデルとも言える、セカンドグレードです。
プロ仕様より優しい味付けがされたフレームに汎用性の高いパーツを採用し、価格にも配慮したモデルになります。
アンカーのロードバイクの種類
アンカーのロードバイクには3つのシリーズがあります。
チーム・ブリジストンサイクルにも供給されるレーシングモデル「RS」、レース色を薄め長距離をゆったり快適に走ることが優先されたロングライドモデル「RL」。
そして、かつてはオリンピック出場の経験もある、アンカーこだわりのクロモリフレーム車「RNC」の3シリーズになります。
それぞれにフレームセットと完成車が用意されており、素材やパーツの構成などでグレード分けもされています。
シリーズ名にフレームのグレードを表す数字が付きますが、「9」が最上位「3」が最下位となります。
また、クロモリは別ですが、数字は9と8がカーボンフレーム、6と3がアルミという分け方にもなっています。
したがって、RS8はレーシングモデルのカーボンフレーム車、グレードは8なので最上位に次ぐセカンドということになります。
アンカー「RS8」のフレーム形状
アンカーのRSシリーズは、先述通りチームに供給されるモデル「RS9」がフレーム設計の基礎であり、中でも「RS8」はRS9と同じ設計になります。
アンカーは日本人の体型に考慮したもの作りが基本です。
そして、日本人は全体的に腕の短い人が多いので、トップチューブは短めに設計されています。
しかし、車高が低く、ヘッドチューブも短いのでハンドルが低めになりますし、リーチ(ハンドルからBB(ボトムブラケット)までの距離)が長くなっています。
これにより、サドルから見てハンドルが低く遠くなりますので、前傾が深い乗車姿勢になります。
また、チェーンステイが短いのでペダルを漕いだ力をロスしにくく、推進力に優れた反応の良いフレームになっています。
さらに、2018年のモデルチェンジで、アンカーがブリヂストン本社の研究施設である「ブリヂストン中央研究所」と共同開発した「プロフォーマット」という解析技術により、推進力を最大に高めています。
推進力を高めるという技術は、フレームを硬く変形しないようにして反応を上げるということなのですが、プロフォーマットは硬くせずにパワーロスをしない形状を編み出していますので、とてもバランスが良くなっています。
アンカー「RS8」と「RS9」のフレームの違い
アンカーのRSシリーズは推進力が高い設計なので、高弾性で硬い素材を使用している最上位モデルのRS9は、扱いやすさという面では万人向けとは言えません。
その点でRS8に使用される標準弾性のカーボン素材は、衝撃吸収性に優れており強度もあるので、乗り心地の良さや扱いやすさという点では、上位グレードよりも優れています。
その分、少しパワーロスもしますので加速力や巡航性では劣ってしまい、また強度がある分重くなります。
したがって、硬く、軽いフレームで、ひと漕ぎでかっ飛んでいくような爆発力が欲しい方はRS9が最適です。
一方、長距離を乗りたい方や、キャリアが浅くまだ十分な脚力が備わっていない方には、優しい味付けがされたRS8の方が向くことになります。
ただし、これはレーシングモデルという範囲内での比較であり、RS8も根はレースバイクということを忘れてはいけません。
本当の意味での快適性や安定感を求めるなら、ロングライドモデルの「RL」や、クロモリの「RNC」の方が上であることは覚えておいてください。
アンカーRS8のラインナップ
それではアンカーのRS8の製品をご紹介します。
RS8にはフレームセット単体と、完成車が2機種、合計3パッケージが用意されています。
それぞれの価格とスペックは以下の通りです。
【RS8 フレームセット】
参考価格:¥194,400
フレーム+フロントフォークの組み合わせです。
【RS8 ELITE】
参考価格:¥361,800
コンポに「シマノ・アルテグラ」、デダチャイ社のパーツブランド、「デダ・エレメンティ」のハンドル、ステム、シートポストが採用された、完成車になります。
【RS8 EQUIPE】
参考価格:¥275,400
コンポが「シマノ・105」になり、その他のパーツはアンカーのオリジナルになります。
完成車2機種ですが、コスパが高いとまでは言いにくいですが、セカンドグレードの位置付けにしてはかなり価格が抑えらている方です。
特にEQUIPEは2019年モデルより、105のニューモデル「R7000」系が採用されましたので、注目が集まっている一台です。
アンカーRSシリーズのフレームとシマノ製コンポの相性
前項でお話ししたアンカー・RS8の完成車ですが、アンカーはシマノとタッグを組み、世界で最も汎用性の高いシマノコンポがよりスムーズに機能するように、フレームの設計を行っています。
そのため、一部のエントリーグレードを除き、コンポはシマノのフルセットです。
RS8のようなセカンドグレードの完成車となると、コンポの所々に別メーカーのものを使用したり、シマノでもダウングレード品を使用することがあります。
特に単価の高いクランクセットなどは、同一コンポである方が少ないくらいで、フルセットではないものが多いです。
それは特に珍しいことではなく、むしろ完成車の価格を抑えるための企業努力と捉えられてもいます。
しかし、コンポはトータルパッケージとして考えられている側面もあり、フルセットで使用するのに越したことはありません。
その点はアンカーの完成車は一歩優位に立っていますので、これも安定した走行性能が評価されている大きな要因の一つです。
フレームがサポートしてくれる!
今回は、アンカーの「RS8」をご紹介しました。
レースモデルの中では優しい味付けのフレームで、価格も比較的手が出しやすい設定にはなっています。
推進力の高いフレームになっており、脚力をサポートしてくれますので、カーボンフレームが初めてという方や、自分の脚力にまだ自信の無い方におすすめしたいですね。