ピナレロの「PRINCE(プリンス)」は、ピナレロの歴史に常にその名を残してきた名車です。
時代と共に姿かたちは変わっていますが、ピナレロの進化はプリンスが担ってきたと言っても過言ではありません。
そこで今回は、2019年で通算5度目のモデルチェンジとなる、プリンスのフレームセットや完成車をご紹介します。
プリンスのラインナップの拡充~全てのモデルがフレームセット+完成車
まずはピナレロ・プリンスの現状を把握して頂きたいと思いますので、2019モデルをご紹介します。
冒頭でもお伝えしたように、2019モデルはプリンス自身5度目のモデルチェンジとなり、フラッグシップモデル「DOGMA(ドグマ)F10」の技術を受け継いで、完全なエアロロードに生まれ変わりました。
ピナレロのロードバイクでは、ドグマシリーズに次ぐセカンドグレードの位置付けになり、後述しますが価格も中々のレベルです。
シリーズ最軽量となる「PRINCE FX」、ノーマルグレードの「PRINCE」、そしてノーマルグレードのディスクブレーキモデル「PRINCE DISK」がラインナップされました。
それぞれにフレームセットと完成車が用意されており、2018年モデルから比べると大幅な機種増になります。
のちほど歴史を振り返りますが、ここのところプリンスらしさを失っているという評価もありましたので、このモデルチェンジを「復活」と捉え、喜んでいる方も多くいらっしゃると聞いています。
ピナレロ・プリンスの歴史~革新はプリンスと共に
ピナレロのプリンスが「復活」と言われるのは、過去に華々しい歴史を作ってきたからに他なりません。
そのため、ここではプリンスの歴史を振り返っておきましょう。
初代のプリンスは1997年、ロードバイクのフレームセットの素材がアルミ全盛時代に、シートステイのみカーボンチューブを使用するという「カーボンバック」として登場します。
今のアルミフレーム車は一部低価格帯の機種を除き、ほぼカーボン製のフロントフォークが採用されていますが、当時はフルアルミが当たり前でした。
バイクの衝撃吸収性=乗り心地を左右するシートステイにカーボンを使用した事で今まで経験したことのない乗り味が話題を呼び、最大納期1年待ちという記録が残っているほど、爆発的なヒットとなりました。
2代目は現在のピナレロの象徴でもある波打つ流線形のフォーク、「ONDA(オンダ)」が初めて採用されたモデルでした。
ここまででも十分にプリンスが歴史を彩ってきたことは分かりますが、このあとカーボン全盛を迎えたところで、2008年にフルカーボンフレームとなり、当時のフラッグシップモデルに君臨します。
有名雑誌の年間最優秀バイクに2年連続で選ばれるなど、フルカーボンフレームに出遅れ感のあったピナレロにとって大きな転換となったモデルでした。
ピナレロ・プリンスの歴史②~冬の時代もあった!
引き続きピナレロ・プリンスの歴史を振り返りますが、この後プリンスは「DOGMA(ドグマ)」の台頭によりレースの世界から離れ、4代目は以前のドグマの金型をそのまま使用し、素材のグレードを見直すというレプリカモデルになってしまいました。
冒頭でもお伝えしたように、常に最先端の技術をまとって世に出てきたプリンスが、らしさを失ったと揶揄されたのはこれが原因でした。
当時のフラッグシップモデル「ドグマF8」がエアロロード寄りになったこともあり、形状が違うプリンスの存在価値はあったと思いますが、歴史を知っているファンはさびしい思いをしたということですね。
そんな現状を鑑みたかどうかは分かりませんが、2019年過去の栄光を取り戻すかのようなフルモデルチェンジとなりました。
現在のハイエンドモデルであるドグマF10から技術を受け継いでいますが、金型は新たにプリンス用に作られたものであり、ドグマとは別のフレームセットになっています。
また、これまで全体のセカンドグレードであった「GAN(ガン)」の座にプリンスを据え、ドグマとの2強体制を築く意図があるとも言われています。
新ピナレロ・プリンスのフレームセットの特徴
それでは、新・ピナレロ・プリンスを詳しく見ていきましょう。
なお、「フレームセット」という言葉が度々登場していますが、これはフレーム+フロントフォーク(以下フォーク)を製品として表す際の表現です。
先述しましたが、ONDAの技術が採用されているフォークはピナレロの象徴でもありますから、フレームとセットとして考えるべきなので、今回はあえてフレームと表現するところを「フレームセット」と記載します。
プリンスのフレームセットは「フォークフラップ」や「Concaveダウンチューブ」など、ドグマF10の技術受け継ぎながら、さらに独自のアップグレードも施されています。
ヘッドチューブとフォークの一体感を高め、ハンドル周りの乱気流を最小限にとどめています。
また、前後のブレーキがチューブに隠れるようにカットされた「ヒドゥン」デザインも採用され、空力性能のアップを図っています。
そして、これもピナレロの象徴である、左右非対称の形状もより顕著に表現されており、ドライブ側の各チューブはボリュームアップがされており剛性の強化が図られています。
新プリンスのフレームセットには優しめの味付けもされている
ピナレロ・プリンスのフレームセットの特徴をお話ししていますが、生粋のレースモデルではありますが、ドグマにはない優しさのようなものも加味されています。
ドグマはツール・ド・フランスなどのビッグレースを毎年のように勝っている、それこそプロ仕様の機体です。
そのため、性能が飛び抜け過ぎており万人が扱えるようなものではないですし、価格もフレームセットだけで100万円前後する物もあるくらいです。
その点、新・プリンスは、乗り心地のよさや、安定して神経質すぎないハンドリングを提供するというコンセプトも公言されています。
また、カーボン素材にしてもプロ仕様よりは重くなっていますし、剛性も低くなっているのでグレードダウンしているのは事実ですが、衝撃吸収性や耐久性は決して劣りません。
優しめになっているとはいえ、ロングライドモデルやクロスバイク程の快適性ではないですが、最高のスピード感の中に快適性も盛り込まれているといったところでしょうか。
新ピナレロ・プリンスのスペック
それでは、最後にピナレロ・プリンスの2019年モデルのスペックをご紹介します。(価格は税込み)
【PRINCE FX】
●フレームセット
重量:940g(53サイズ)
価格:¥491,400
●完成車
シマノ・Dura-Ace(デュラエース)Di2搭載:¥1,047,600
シマノ・Ultegra(アルテグラ):¥570,240
【PRINCE】
●フレームセット
重量:960g
価格:¥297,000
●完成車
シマノ・アルテグラ:¥468,000
カンパニョーロ・Potenza(ポテンザ):¥468,000
シマノ・105(イチマルゴ):¥415,800
【PRINCE DISK】
●フレームセット
重量:980g
価格:¥318,600
●完成車
シマノ・アルテグラ・油圧式ディスクブレーキ:¥516,240
サイズは3機種ともフレームセット、完成車共に44~62まで11サイズ、PRINCEの105搭載車のみ、小さめの42サイズが用意されています。
独自性を持って復活した!
今回は、2019モデルで自身5度目のモデルチェンジとなるプリンスをご紹介しました。
ドグマF10の技術を踏襲しながら、独自のものも多く盛り込まれ、さらに扱いやすさや乗り心地という優しい部分も加味された一台です。
手頃な価格とまでは言えませんが、ドグマに比べれば現実味も出てくるかと思いますので、一考してみてください。