皆さんは「シクロクロス」という自転車競技をご存知でしょうか?
自転車を担いで自走する区間などもある特殊な競技ですが、歴史的には相当古く、100年以上が経過しているとも言われています。
競技バイクの製造を得意とするブリヂストン・アンカーにもシクロクロス用の「CX6」がありますが、今回はどんなバイクなのか、ユーザーさんのインプレなども参考に検証してみましょう。
シクロクロス競技の歴史とアンカーの関わり
シクロクロスは「Cyclo-cross」と表記され、シクロクロスはフランス語読み、英語圏では「サイクルクロス」と呼ばれます。
1902年にフランスで初の国内大会が開かれ、1924年には早くも国際大会がパリで行われています。
1940年代にはUCI(国際自転車競技連盟)が正式競技と認め、1950年に最初の世界選手権が開催されています。
1970年代にはアメリカに渡り、ダートコースを走る競技という性格から、MTB誕生のきっかけになったとも言われています。
日本でもJCXシリーズという年間のシリーズ戦もありますし、全日本選手権も行われています。
アンカーのシクロクロスは、2002年から全日本選手権9連覇を果たした辻浦圭一選手や、近年では2016年優勝の沢田時選手など、機材を提供する「チーム・ブリヂストンサイクル」の活躍に大いに貢献しています。
また、その選手たちは本場のフランスやベルギーの大会に参加したこともあり、その経験を活かして製造されているのが、今回の主役「CX6」シリーズです。
次項ではCX6シリーズのインプレ情報の前に、シクロクロス車の特徴についてお伝えします。
シクロクロス車の特徴
シクロクロスは競技名でもありますが、競技に使用されるバイクを指す名称でもあります。
そのため、インプレ情報などでも混同して分かりづらいこともありますので、この記事ではバイクに「車」をつけ、「シクロクロス車」と記載します。
シクロクロス競技はダート(砂地)などの不整地の周回コースで行われ、コース上に人口の柵や階段など、下車をして自転車を担いで走る部分が設けられています。
レースごとの1周目のラップタイムによって周回数が決められ、最初にそれを消化した選手が優勝となります。
競技に使われるバイクは一見すれば普通のロードバイクと変わりませんが、仕様は大分異なります。
まず、ロードレースのように究極なスピードは求められず、力強さや安定感が重視されています。
そのため、トップチューブが地面と平行の「ホリゾンタルスタイル」が多く、ホイールベースを長くして安定感を出しています。
また、泥つまりによる作動不良や、MTBのように太いタイヤを履きますので、各所のクリアランス(隙間)が大きく取られています。
そして、ブレーキですが、近年は国際大会で解禁されたこともあり、MTB同様ディスクブレーキが多用されていますが、リムブレーキでは泥つまりが少ないカンチブレーキも使用されています。
アンカーのCX6シリーズには、ディスク、カンチの両モデルが用意されています。
アンカー・CX6の概要
それでは、アンカーのシクロクロス車「CX6」についてお話しします。
CX6シリーズはアルミフレームにカーボンフォークの組み合わせで、ディスクブレーキモデルの「CX6D」、カンチブレーキモデルの「CX6C」2機種になります。
それぞれにフレームセットと完成車が用意されており、フレームはブレーキの違いに関わる仕様が違うだけで、素材や基本的な形状は変わりません。
ただし、ディスクブレーキを使用する場合は、ディスクブレーキ仕様のフレームセットでないと使用できませんので、そこだけは注意してください。
また、用意されているサイズがカンチブレーキモデルは3サイズ(490、510、530)ありますが、ディスクブレーキモデルは510のみです。
そのため、フィッティングの結果次第では、ディスクブレーキモデルを選択できない可能性もあり、インプレ情報でもそこが指摘されています。
なお、各モデルの参考価格は以下の通りです。
【CX6D】フレームセット:¥113,400(税込)/完成車(CX6D EQUIPE):¥237,600
【CX6C】フレームセット:¥108,000(税込)/完成車(CX6C EQUIPE):¥216,000
アンカー・CX6のインプレ評価
アンカーのシクロクロス車「CX6」について、ここからはユーザーさんなどのインプレ情報をまとめていきます。
まず当然なんですが、競技としてのシクロクロスに対応する評価が多くなります。
シクロクロスは下車する区間もあるように、低速から高速までの速度の振り幅が大きいので、加速力が重視されます。
CX6はBB付近の剛性を高めるとともに、BBを高めの位置に持ってきて、ペダルを踏み込む力を確実に推進力に変える仕様になっています。
その意図はユーザーさんにも伝わっており、加速力の面は高評価をされています。
しかし、全体的に剛性を高めてしまうと硬くなり衝撃吸収性が低くなるので、丸形のチューブを使って適度なしなりを持たせたり、様々な部分に曲げ加工を施し、地面からの突き上げに対応しています。
アンカー・CX6のインプレ評価~続き
また、インプレの情報では、ワイヤー類の配線(ルーティング)を高評価する声も多いです。
ロードバイクでは空気抵抗低減の観点から、ワイヤーをチューブ内に通すのがトレンドですが、CX6は泥道走行後の泥をかぶってしまうワイヤーのメンテナンス性を考慮して、あえて外に出しています。
また、極力トラブルを避けるために、地面から一番遠いトップチューブ経由でリアの変速やブレーキに配線されます。
そうなると、トップチューブにはワイヤーの受けが必要になり、その受けが車体を担ぐ際に肩や手に接触してしまうという事象が起こります。
しかし、アンカーはそこにも細かな配慮をしており、なるべく手や肩が干渉しない位置に受けがくるようにしています。
また、トップチューブに軽く角を残す部分を作り、車体を担ぐ時に指が掛かりやすいようにもしています。
このようにCX6は、これぞ日本ブランドというきめ細やかさで、多くのユーザーに支持を受けています。
アンカー・CX6のインプレ情報から見えてくるレース以外の用途
ここまでアンカー・CX6のインプレ情報を見てきました。
競技用自転車の要素が強いですが、インプレ情報をみている限りでは用途の守備範囲の広さも感じられます。
まずは、MTBと性格が似ていることもあり、山や林などの散策(トレイル)に使用できるかと思います。
しかもMTBより軽量で、ロードバイク用のコンポも搭載しており、走りを楽しめる仕様でもあるので、ツーリングを兼ねて目的地までロングライドをして山に入るという使い方も面白いかと思います。
また、車体の安定感や太めのタイヤ、トラブルの少ないワイヤールーティングなどを考えると、通勤などにも最適ではないでしょうか。
朝の忙しい時間帯は道を選んで走る余裕はなく、悪路でも構わず行けるシクロクロス車はそれだけで優位ですし、パンクや変速機のトラブルの可能性が低いのも、遅刻できないサラリーマンにとってはアドバンテージになります。
耐久性に優れた「A6061」のアルミ素材を使っていることもあり、乗る頻度が多くてもへこたれないものはありますので、通勤も含め普段使いでも十分に活躍してくれるはずです。
競技専用という考え方はもったいない!
今回は、アンカーのシクロクロス車「CX6」をご紹介しました。
日本のブランドらしく、細かい部分にまで配慮がされており、トップ選手を支え続けてきただけのことはあります。
また、競技以外の用途にも積極的に使用してみたいスペックであり、スポーツバイクのカテゴリーの一つとして考えて頂ければよいかと思います。