クロモリはロードバイクのフレーム素材として、現存する中で最も歴史のある素材の一つです。
今はカーボンやアルミに押されマイナーな存在ではありますが、こだわりを持って扱い続けているメーカー、ブランドもあります。
ブリヂストン・ANCHOR(アンカー)もその一つであり、ハイエンドモデルの「RNC7」はコアなファン層から高い評価をされています。
そこで今回は、ANCHORこだわりのクロモリロード「RNC7」をご紹介します。
ANCHOR・RNC7のフレームに使用される「クロモリ」とは?
クロモリは正式には「クロムモリブデン鋼」と言って、鉄にクロムやモリブデンが添加された合金です。
独特のしなりがありクッション性にも優れているので、フレームにすると当たりの柔らかい乗り心地が特徴になります。
また、ベースが鉄なので耐久性にも優れており、サビに気をつけさえすれば、20年30年と乗り続けられるとも言われています。
筆者の知人にも20数年前に購入したクロモリのロードバイクを、今でも大切に乗っている男性がいます。
しっかりと手を掛けていますし、塗装などもやり直していますが、20年以上経過しているバイクにはとても見えません。
冒頭でもお伝えしましたが、自転車のフレーム素材としては歴史が古く、ロードバイクで現在もクロモリを扱っているメーカ―、ブランドも老舗が多くなります。
鉄がベースなので重量の問題があり、近年プロのレースでは評価されることもなくなりましたが、特にヨーロッパでは扱いが継続されています。
また、ANCHORも含め、パナソニック、アラヤ(アラヤ・ラレー)など、日本メーカーもクロモリフレームを扱うところは多いです。
その中でも今回は、ANCHORのハイエンドモデル「RNC7」を確認していきます。
ANCHORのクロモリフレームの高評価を支えるものとは?
ANCHORは、世界トップシェアのタイヤメーカー「ブリヂストン」の自転車部門が独立した「ブリヂストン・サイクル」の競技用バイクブランドです。
ブリヂストンの自転車と言えば、昔も今も主流はママチャリや電動アシスト付きなどのシティサイクルですが、1964年に自転車競技部が設立されており、競技用自転車への関わりも50年以上の歴史があります。
現在も日本屈指のサイクリングチーム「チーム・ブリヂストンサイクル」として活動が続けられており、かつてはオリンピックにも出場した経験もあります。
そして、オリンピック出場を果たしたのがクロモリフレームであり、1990年初頭に当時の最先端技術を駆使した「NEO-COT(ネオコット)」製法で作られたフレームでした。
2018年で25年目を迎えたネオコットは、今でも高い評価を受けており、ANCHORのクロモリフレームを支え続けています。
RNC7はそのネオコットの製法を余すところなく全て注ぎ込んだ、「ネオコット・プロフェッショナル」という高品質なフレームになります。
ANCHORの技術力が評価されるきっかけとなった「ネオコット」
ANCHOR・RNC7に採用されているネオコット製法は、「新形状最適化理論」とも呼ばれています。
ネオコットが開発された当時、自転車のフレームに使用されているチューブは丸形が常識とされていました。
丸形のチューブは溶接部分など特定の箇所に負担が集中するので、厚く重くせざるを得ない状況でした。
しかし、ANCHORは「負担を分散させる形状にすればよい」という、今のフレーム成形では基本となっている考え方を、いち早く導入しました。
1本のチューブ内で大きく圧力が掛かる場所は厚くして、その他の部分は薄くするという「バテッド」という技術で、強度を落とすことなく軽量化を図りました。
ただ、こういった複雑な形状はスチール製のチューブでは成形が難しかったのですが、ANCHORはバルジ成形(ハイドロフォーミング)という方法でこれを可能にしました。
今では多くのメーカーが、バテッドやハイドロフォーミング製法でアルミを中心にフレームを製造していますが、これを25年も前に確立したANCHORの技術力は、高い評価をされて至極当然と言えるでしょう。
ANCHOR・RNC7のフレーム評価
それではここから、ANCHORのRNC7についてお話ししていきます。
先ほど少し触れましたが、RNC7はネオコットの製法が全て盛り込まれたハイエンドモデルです。
バルジ成形でチューブの先端をラッパ状に押し広げ、それ自体をラグ(繫ぎ手)とすることで、無駄な部品も必要なくなり、最低限のロウ付けでも済むことから大幅な軽量化が図れています。
また、バテッドも最大0.5㎜という世界に類を見ないようなチューブの肉厚差になっており、この大胆さが高評価に繋がっています。
これにより、のちほど詳しくお伝えしますが、完成車で10㎏を切っており(530サイズ)、クロモリロードとしてはかなり軽量な部類に入ります。
そして、断面が丸形のチューブではないため、見た目もとてもスッキリとしてスタイリッシュです。
クロモリは素材自体の強度が高いので細いチューブになるのが特徴ですが、それにしてもRNC7はバテッドしている部分などは本当に薄く、他とは明らかに一線を画しています。
RNC7は、昔ながらのトップチューブが地面と平行で真っ直ぐな「ホリゾンタルスタイル」も高評価を受けている一因ですが、細身のチューブなので、クラシカルなイメージがより際立ちます。
ANCHOR・RNC7のインプレ評価
ここではANCHOR・RNC7の乗り心地や走行感などの、インプレ評価をまとめておきます。
まず、乗り心地ですが、これは好き嫌いの部分でもありますが、地面からの振動や段差を超える際の衝撃に対しての吸収性が高いことが伝わってきます。
柔らかい乗り心地という表現が多く、筆者の知人は「最初タイヤの空気圧が低いのかと思った」などと言うほど、当たりが柔らかいようです。
また、高評価が多いのは平地での伸びで、特に高速で巡航している際の気持ちの良い加速が期待できそうです。
軽量とは言え、カーボンやアルミよりは重いので、漕ぎ出しや上りはしんどい部分もあります。
しかし、チェーンステイが短く応力の掛かりが良い、また、バネのようなしなりが力をいったん溜めてから爆発させるので、スピードに乗れば気持ちよく進んでくれるということです。
あとは、注意と言ってもよいかもしれませんが、レース用に開発されていることから、ヘッドチューブが短く車高も低めなので、ハンドルを低く設定するとかなり前傾姿勢が深くなります。
ANCHOR・RNC7の2019年モデルラインナップ
それでは最後に、ANCHOR・RNC7の価格や完成車のスペックをご紹介します。
RNC7は、フレームセットと完成車1機種の構成になります。
●フレームセット(フレーム+フロントフォーク)
参考価格:¥183,600
以前のモデルでは、フロントフォークにカーボン製の物を使用するオプションもあったと聞いていますが、2019年モデルはクロモリフォークのみになっています。
車体の色は30色以上のカラーから選択が可能で、サイズも約10㎝刻みで490~590㎜まで選択できます。
●完成車
【RNC7 EQUIPE】
参考価格:¥280,800
2019モデルは、シマノ・105の新型「R7000」がフル装備となります。
早くも高評価されているコンポですが、柔らかめのフレームであるRNC7には、新しくなり剛性が高まったクランクが効果を発揮してくれることでしょう。
また、標準装備のタイヤは太さ25c(25㎜)ですが、28cまで装着可能になっていますので、さらに柔らかな乗り心地を求めるなら、交換をしてみても良いでしょう。
独自性の強さを感じるクロモリロードバイク
今回は、ANCHORのクロモリロード「RNC7」をご紹介しました。
「ネオコット」という独自の製法で作られたフレームは性能、見た目ともに胸を張っておすすめしたいレベルです。
クロモリ独特な乗り味をぜひ確かめていただき、選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか。