今回取り上げるメリダの「ライド4000」は、2015年を最後にラインナップから外れたモデルです。
メリダのロードバイクで品番「4000」は、カーボンのエントリーグレードとして手の出しやすい価格帯であり、人気が高いゾーンです。
そこが無くなってしまった理由は何なのか?
また、後継モデルはあるのか?
この点について検証してみましょう。
メリダ・ライド4000は「エンデュランスモデル」
今回の主役メリダのライド4000は、「エンデュランスモデル」というカテゴリーのロードバイクです。
ヨーロッパでは非常に人気の高い、「パリ~ルーベ」や、「ロンド・ファン・フラーンデレン」に代表される、石畳や不整地がメインコースとなるレース用に開発されたバイクです。
過酷なコースを200㎞以上走るレースに対応するために、バイクには地面からの突き上げをいなし、衝撃を吸収することが必要です。
また、不整地を力強く走るには、重心を低くしてしっかりと地面にグリップさせる必要があります。
上記のような要素がありますので、普通のロードレースに比べ、スピードよりも安定感や乗り心地が優先されます。
そうなりますと、レースモデルではありますが、少し攻撃的なジオメトリからは離れ、ゆったりと構えて乗れるので、ツーリングなどのロングライド向きとされます。
また、若干乗車姿勢がアップライドになりますので、体勢に無理がなく視界も開けるので、初心者の方も違和感なく入っていけます。
メリダ・ライドシリーズの歴史
メリダは2018年のツール・ド・フランスでチーム総合2位に食い込んだ、「バーレーン・メリダ」のスポンサーで、バイクを提供するサプライヤーでもあります。
オールラウンドのレーシングモデル「スクルトゥーラ」、エアロロード「リアクト」がチームの大躍進を支えましたが、ここにライドの名前はありません。
メリダがワールドチームのスポンサーになったのは、バーレーン・メリダが2チーム目ですが、最初のチームではライドが実戦に投入されていました。
その証として、前チーム時代の2016年には、チーム仕様である「RIDE TEAM-E」がラインナップされています。
また、その2016年モデルはライドが11種類あり、スクルトゥーラやリアクトを大きく上回る主力級のラインナップでした。
しかし、チームが変わった2017年詳しい理由は不明ですが、ライドはチームには供給されず、2018年シーズンでも引き続き使用は見送られています。
それに伴うようにして、2018年モデルではライドシリーズが一気に4機種にまで減少、ライドの冠が付いていたグラベルロードも正式に「サイレックス」としてシリーズ化されました。
そして、そこにはチーム仕様ももちろんありませんし、カーボンフレームのリア11速モデルとして人気だった「4000」の名前もありません。
メリダ・ライド4000はライドシリーズの変遷に巻き込まれ消滅!
メリダのロードバイクの製品名はプロ仕様の「TEAM」以外は、「モデル名+品番の数字」という形で表されています。
品番4ケタの数字がカーボンフレーム、3ケタがアルミフレームになります。(ライド80もアルミ)
どのモデルでも品番が大方の特徴を表しており、例えば「4000」はカーボンフレームでリア11速のシマノ・105がメインコンポという構成で、20万円台で提供されています。
2015年までラインナップされていたライド4000も105をメインコンポとし、最終年の価格は247,320円(税込)でした。
それが2016年になるとメインコンポが105の品番は4000から「3000」になり、ところどころにコストダウンが見られる仕様で、価格が4万円以上下がりました。
そして、2017年に4000の後継機と見られた3000は、コンポのグレードをワンランク落とし、リア10速の「ティアグラ」搭載のモデルとなります。
しかも、コンポのグレードが下がったにも関わらず価格が1万円上がるという不可解さで、時系列で見れば迷走状態の時期だったと推測されます。
そして、2018年カーボンフレームからリア11速仕様は消え、ラインナップ自体もカーボンは「ライド3000」のみになってしまいました。
メリダは石畳レースをスクルトゥーラとリアクトで戦う
メリダのようなサプライヤーは、レースでの使用を前提にロードバイクを開発しますので、チームに求められなくなったバイクが下火になるのは当然の流れです。
ライドが4000を始め、一気に機種数を減らしたのもその流れからですね。
そもそも、ライドがチームに使用されなくなったのは、先述通り今のバーレーン・メリダになってからです。
では、バーレーン・メリダが石畳コースのレースに参戦していないのかと言えば、そんなことはありません。
バーレーン・メリダは、世界に18チームしかない「UCIワールドチーム」の一員です。
そのワールドチームは、UCIが主催する「ワールドツアー」に組み込まれたレースに全戦出場する義務があります。
その中には「パリ~ルーベ」も「ロンド・ファン・フラーンデレン」も含まれますので、当然バーレーン・メリダは全員ではありませんが選手を参加させなければなりません。
ということは、ライドにも需要があるはずなのですが、バーレーン・メリダは、石畳のレースでもスクルトゥーラとリアクトで臨んでいます。
2018年のパリ~ルーベにエースライダーである「ハインリッヒ・ハウッスラ」は、スクルトゥーラで参戦しました。
しかも、全く石畳対策をせず、まるでツールを走るようなノーマル仕様で挑んだと聞いています。
メリダ・ライド4000とスクルトゥーラとの比較
前項でお話ししたように、バーレーン・メリダは石畳レースにエンデュランスモデルではなく、オールラウンダーやエアロロードで臨んでいます。
ただこれは珍しいことではなく、近年はいくつかメリダと同じ戦略で臨んでいるチームも見られます。
そのため、メリダで言えば、スクルトゥーラやリアクトが石畳をこなせるスペックであるということです。
筆者は残念ながらチーム仕様に乗ったことはないですが、4000には両モデルとも試乗した経験がありますし、ライド4000にも以前乗りましたので、ここからは比較をしてみます。
その経験を思い起こしてみますと、まずスクルトゥーラは非常に安定感を感じました。
レースモデルは速度を上げると少し挙動が不安定になり、操作に気を使うこともありますが、スクルトゥーラはコントロール性が高く、気持ちよくスピードに乗っていくイメージです。
衝撃吸収性に関しては可もなく不可もなく、地面の情報はしっかり伝わってくるレベルです。
これに関してはさすがにライドの方が優れていると感じましたが、プロ仕様はフレームの素材がもっと高弾性でしなりもありますので、もう少し衝撃吸収性は高くなるはずです。
結論ですが、石畳を完全にこなせるかどうかまでは別として、多少の悪路くらいは抜群の安定感で十分に走破できます。
また、衝撃吸収性も身体に負担が掛かってしまうような低いレベルではないので、タイヤなどで工夫をすればロングライドも行けるイメージです。
メリダ・ライド4000とリアクトとの比較
続いてはエアロロード「リアクト」と、ライド4000の比較になります。
リアクトはさすがにエアロロードなので、ライドはもちろんスクルトゥーラよりも全体的に硬めで、スピードの乗りのよさや、加速してからの伸びは秀逸です。
ただ、これはエアロロードであればメリダに限ったことではないのでそこまで強調しませんが、思った以上に衝撃を吸収してくれている感覚でした。
ライドに比べれば衝撃は来ますが、スクルトゥーラとは同等か、もしかするとリアクトの方が吸収性が高いのではないかと思えるほどでした。
リアクトには、シートポストにカーボンの数倍の衝撃吸収性がある「エラストマー樹脂」が内蔵されているので、お尻への負担は軽くなっているということです。
小さな段差などにも反応してしまうところがあるので、オフロード向きとまでは言えませんが、エアロロードにしては乗り心地が加味されているので、長距離もこなせる印象です。
このように、スクルトゥーラとリアクトの「4000」に関しては、本来ライドが得意とする部分にある程度のレベルで踏み込んできているので、ライドの肩身が狭くなったと推測します。
ライドシリーズはまだ生き残っている!
今回は2015年をもってラインナップから外れた、メリダのライド4000について考えてみました。
ライドがレースで使用されなくなったのがシリーズ全体の縮小に繋がっており、スクルトゥーラとリアクトがエンデュランスの要素を取り入れているので、ライドが活躍の場を失ってきた印象です。
それでも快適性や扱いやすさという点では一線を画すものがありますので、特にレース志向が薄いライダーにはまだ需要があるはずです。