ロードバイクに慣れてくると多く人が、「もっと速く走りたい」というスピードに対する欲求が出てきます。
スピードを上げるには自分の脚力を強化するのが一番ですが、パーツでそれを補うのはホイールです。
完成車に最初から付属しているホイールは、高級なものは別として重量や剛性面では残念なレベルのものが多いです。
そこで今回はメリダのホイールを例に取り、完成車付属のホイールの重量や剛性などについて考えてみます。
ロードバイクには重量を優先する風潮が根強い
ロードバイクには「軽さが正義」なんて言葉があるほど、重量に異常なほどの固執が見られます。
「フレーム重量が1㎏を切った」、「世界最軽量完成車で5㎏台!」なんて言葉が売り文句になるほど、軽量化に対する競争は依然激しいままです。
ロードバイクはレースの機材として開発されていますので、極力軽量にすれば空気抵抗の低減になり、スピードにつながるというのはもちろん理にかなっています。
しかし、世界最高峰のロードレースシリーズである「UCIワールドツアー」には、車体が6.8㎏を下回ってはいけないという規定があります。
しかし、近年の軽量フレームやホイール、軽量なパーツの組み合わせではこれを下回ってしまうことも多いと言います。
そのため、コラムスペーサーを増やしたり、特殊な塗装をしたり、中にはレーサーに重りを付けるチームまであり、本末転倒とさえ思える軽量化もあります。
しかし、市販車には規定などありませんのでいくら軽くしても構わず、その分宣伝効果も上がると思われます。
ただし、メリダのように重量を公開しているメーカーもあれば、スペシャライズドのように非公開のメーカーもあります。
非公開でも重量は販売店がはかりに乗せてしまえば分かることですが、メーカーによっても重量の考え方が違うということなんでしょう。
ロードバイクの重量の比率でホイールが占める割合
ロードバイクの重量ですが、完成車はフレーム、車輪(ホイ-ル+タイヤ)、その他のパーツ、この3本柱と考えればよいでしょう。
例えば、メリダのプロ仕様「スクルトゥーラ TEAM-E」の重量は52サイズで6.4㎏となっています。
この内、フレームは0.8㎏と公表されており、ホイールも市販品なので調べてみますと約1.4㎏、タイヤが0.2㎏、コンポはシマノ・デュラエースのフルセットなので、これも公表値から約2㎏と分かります。
これらを計算していきますと4.4㎏となり、残りの2㎏がハンドルやサドルなどその他のパーツ分ということになります。
ワールドツアーを戦う機体なので、フレーム重量は軽すぎるというところもありますが、それ以外で目立って重量の比率が高いのがホイールとコンポということが分かると思います。
中でもコンポは選択肢がそこまで多いわけではないですし、とりわけスピードには影響を及ぼさない部分なので、重量を気にするということは少ないかと思います。
そのため、問題になってくるのはホイールということになります。
メリダの100万円超えの完成車に付属してくるホイールは?
前項でお話ししたメリダのロードバイクは、プロチームに提供されているハイエンドモデルで、100万円を軽く超える完成車です。
そのため、ホイールも「フルクラム」製のフルカーボンリムのセミディープで、市販価格が30~40万円にもなる高級品です。
そして、その重量の1.4㎏(1400g)ですが、カーボンホイール全体から見れば特別軽量というわけではなく、中には1㎏を切るものもありますので、やや重めと言われても仕方のないくらいの重量です。
ただし、このホイールはフルクラム自慢のパワーロスをさせないスポークの組み方で、抜群の加速力を生み出しますし、セラミックベアリングを採用しているハブは驚異の回転力があります。
こういった重量だけでは語れない部分があるのが、ロードバイクのホイールの難しいところです。
そして、ホイールは上記の物でもお分かりかと思いますが、単価が高い上に価格と性能が比例するので、完成車の価格によって付属するホイールのグレードも決まってきます。
メリダの「スクルトゥーラ5000」に付属しているホイールの重量は?
ここでは完成車とホイールの関係をもう少し掘り下げていきますが、メリダの「スクルトゥーラ 5000」という完成車を例に取ります。
フルカーボンフレームの中の下グレードで、価格にして25万円前後の完成車です。
これに付属している、ホイールがメリダオリジナルの手組みホイールになります。
情報が少ないホイールではありますが、ユーザーさんの実測値によると重量が2200㎏前後あるといわれています。
このホイールはメリダの他の完成車にも使用されているので筆者も何度か試乗していますが、重さの割には軽い走りができる印象です。
もちろんメリダのフレームのよさもありますが、剛性が高めなのでパワーロスも少なく感じましたし、短い距離であれば坂の上りでもさほど気にならないレベルでした。
しかし、さすがにこの重さですと漕ぎ出しはもっさりしますし、スピードを上げるという観点から見ると決して有利ではないです。
ただし、メリダだけがこのような重いホイールを採用しているわけではなく、どのメーカーも30万円くらいの完成車まではこの程度のホイールしか予算的に付けられないのです。
メリダ・スクルトゥーラ5000付属のホイールは手組み!その特徴は?
前項でお話ししたメリダのスクルトゥーラ5000の付属ホイールは、メーカーの「手組み」ホイールとお伝えしました。
手組みホイールというのは、市販されているリムやハブを使って組み上げるものです。
スクルトゥーラ5000のホイールはリムにのみメーカー名が入っていますので、リムは自家製であとは市販品で組んでいるものと推測します。
一方、完成形をイメージするところから始め、部品から専用設計で作り上げていくホイールを「完組み」といいます。
リムの強度、スポークの本数や組み方、ハブの回転力などを完成形をイメージして作っていきますので、調和が取れて軽量で高性能のホイールが作り出されます。
市販されている多くのホイールが完組みであり、先ほど触れた「フルクラム」などは専業メーカーです。
一方、手組みホイールはそれぞれが別のベクトルで集められたパーツなので、調和を取るのがとても難しくなります。
特に安価なホイールというのは耐久性が重視されますので、リムに多くの素材を使い頑丈にしますし、スポークの本数も多くして安定性を高めます。
また、完組みホイールのように軽量のリムに少ないスポークの本数で手組みをすると、グニャグニャに柔らかくなってしまい、ロードバイクのホイールとして成り立たちません。
そのため、必然的に重量が嵩みますし、硬いホイールになりますので、漕ぎ出しは重いですし、脚に疲労が溜まりやすくなります。
高性能でプロが使用するレベルの手組みホイールを作るメーカーもあります。(ファストフォワードなど)
しかし、さすがにホイール専業ではない自転車メーカーでは、完組みを超えられるものを製造するのはまず難しいでしょう。
完成車のホイールにレベルを求めるのは難しい
前項でお話ししたように、手組みホイールでは重量が嵩み、剛性が高すぎてしまう傾向にあります。
そのため、いずれはホイールに不満を持つようになってくるものです。
先ほどメリダの完成車付属ホイールに対する筆者の使用感を記しましたが、メリダはまだ手組みのレベルが高い方です。
それでも、完組みホイールを一度経験してしまうと、そこには戻れないレベルの違いを痛感することになります。
これは考え方の一つですが、完成車のホイールにはレベルを期待しないというのが正解なのかもしれません。
自分の用途にもよりますが、レースに参戦したいのであればすぐに交換となるでしょうし、定期的に長い距離を走るようになれば、自然と交換に目が向くはずです。
完成車でも5万円くらいの価格差であれば、同じフレームを採用している可能性があります。
そのため、なるべく安価なものを選び、差額を後のホイール交換の費用に充てるという考え方も大いにありです。
完成車のホイールは交換する前提で考える
今回はメリダの完成車を例に取り、付属ホイールについて考えてみました。
多くの完成車が手組みになるので、重量が嵩み、剛性が高い硬めのホイールになってしまいます。
しかし、これはコスト面から見ても仕方のないことで、最初から交換ありきと考えないと極端に選択肢が少なくなります。
完成車付属のホイールのレベルは、不問として考えるようにしてみてください。