乗車位置や姿勢が大切なスポーツバイクでは、サドル幅がかなり重要な要素となります。
しかし、サドル幅が単一だったり、製品説明に記載がないものまであり、重要視されていない傾向もあります。
その点でスペシャライズドは複数のサイズが用意されていますし、適正なサドル幅に導いてくれる手段も提供してくれています。
そこで今回はそんなスペシャライズドのサドルにならい、サドル幅を突き詰めてみましょう。
スペシャライズドは坐骨幅に合ったサドル幅があるという考え方
スペシャライズドは、2017年のツール・ド・フランスでステージ最多勝メーカーに輝いているほどのフレームビルダーです。
それでいながらサドルにとても人気があり、他メーカーのバイクのユーザーさんからも一目置かれる存在です。
人間工学に基づく「ボディフィットジオメトリ」という考え方が、完成車からパーツに至るまで浸透しています。
とにかく人の身体にバイクを合わせるという考え方が徹底されており、フィッティングを重要視しているメーカーでもあります。
サドルでは左右の坐骨の幅がサドル幅を決めるという考え方から、ショップで坐骨幅の計測から最適なサイズを選んでくれます。
冒頭でもお伝えしましたが、サドル幅はワンサイズしかないサドルも珍しくない中で、スペシャライズドでは同じ種類でも複数サイズから選ぶことができます。
特に骨盤が横に長く、坐骨幅が広い傾向にある女性には選択肢が多いのがありがたく感じられるはずです。
坐骨が収まらないサドル幅ではデメリットが大きい
前項でお伝えしたように、スペシャライズドでは坐骨幅から最適なサドル幅を導き出すという考え方を採用しています。
坐骨というのは座った時に座面に当たる左右の骨で、骨盤の後下部を形成しています。
お尻の中で最も体重が掛かる部分であり、サドルにおいては坐骨を支えることが重要になってきます。
そのため、サドル幅は左右の坐骨をしっかりと受けられるだけのサイズが必要であり、坐骨幅は人によって違いますので、本来であれば複数サイズがあって然るべきなのです。
例えば、坐骨幅よりも狭いサドルに跨ると、坐骨が外に飛び出してしまいます。
そうなれば、支えがなくなるので車上での安定感を欠きますし、お尻の他の部分、特に直接触れてしまう股間に大きな負担が掛かってしまいます。
股間の圧迫による血流不全は、男性のEDとの関係も取り出されているように、サドル界にとっての大きな改善テーマでもあります。
スペシャライズには正規販売店に「アス・オー・メーター」という、クッションのような測定器があり、ものの数十秒で簡単に坐骨幅を測定できます。
何も購入しないとしても嫌な顔一つせず測定してくれる店舗も多いと聞いていますので、ぜひ一度測定してもらってください。
スペシャライズドのサドル幅は平均よりも広め
あくまでも平均ですが、日本人の坐骨幅は100~120㎜と言われており、余裕をもって支えられるサドル幅はこの幅に片側プラス10~20㎜とされています。
多くのサドルはこの平均値から、サドル幅が140㎜程度あれば事足りるという判断で、130~140㎜前後のワンサイズの展開が多いようです。
しかし、120㎜前後の広めの坐骨幅の方では140㎜前後ではギリギリとなり、サドルに乗るポジションがかなり限定されます。
サドルは前方にいくにつれて幅が狭くなっていきますので、坐骨幅に対してギリギリのサドルは、少しでも前乗りをすると骨盤の位置が下がってしまい、股間の圧迫が強くなります。
また、特にロードバイクに言えることですが、サドルの高さを上げた場合に、あまりサドル幅が広すぎるとペダリングの邪魔になるので、広ければよいとも限りません。
その点でスペシャライズドのサドル幅は、男性用が143㎜と155㎜、しかも女性用はこれに加え168㎜があります。
平均よりも狭い坐骨幅の方ですと、若干広すぎることはあるかもしれませんが、狭いよりもデメリットは少ないです。
坐骨幅の計測方法
坐骨幅をスペシャライズドの店舗で計測してもらうのがおすすめなのですが、それが不可能という方もいらっしゃるでしょう。
しかし、あきらめる必要はなく、坐骨幅は割と簡単に自分でも測ることができます。
段ボールをイスでも床でもよいので2枚ほど敷いて、その上に座ります。
坐骨は飛び出ていますので、少しグリグリすると跡がつきやすくなります。
左右にピンポイントで最も凹んでいる部分があるはずなので、その中心の幅を測れば、それが皆さんの坐骨幅ということになります。
そこから、先ほどお話しした+10~20㎜を足せば、適正のサドル幅を出すことが可能です。
先ほども触れましたが、サドル幅は広い分には自分で座る位置の前後調整をすればよいのですが、狭くて骨盤の間にサドルがはまってしまうのは好ましくありません。
一概になるべく広めのものとも言えませんが、狭いよりは広いものという意識の方が、快適なものを選べル可能性が高くなります。
サドル幅と共にサドルには形状も重要
サドル幅をサドル選びの第一歩として、次のステップは形状になります。
自分が普段から自転車にどう乗っているか(用途や姿勢)はもちろん人それぞれ違いますので、それに合った形状というのがあります。
例えば、横から見た時に座面全体が水平になっているものは、腰の位置を前後に動かしやすいので、深めの前傾姿勢を取りやすい形状です。
また、色々な場所に乗れ、圧力が分散されて疲労が溜まりにくくなるので、ロングライド向きともされます。
スペシャライズドでは「Toupé(トゥーペ)」という種類がこれに当たります。
一方、横から見て座面にカーブが掛かっているタイプは、窪んでいる位置にお尻が固定しやすくなります。
少しアップライドな姿勢で腰を落ち着かせて乗るような方には、このタイプがよいと言われます。
スペシャライズドでは「Romin Evo(ローミンエヴォ)」になりますが、このサドルは座面後方がせり上がっているので、骨盤を前傾させることができます。
したがって、腰を落ち着かせながらも深い前傾姿勢にも対応するので、色々なシーンが想定される長距離レース向きでもあります。
スペシャライズドのサドルは股間の圧迫軽減の施しが顕著
胴長の日本人はハンドルとサドルの高低差が大きくなると、どうしても前傾が強くなってしまいます。
先ほども触れましたが、股間の圧迫という問題はことのほか大きく、前傾が強くなるのはサドル幅が狭いのと同様に、この日本人の体型にも一因があります。
そういったことも考慮され最近では人間工学に基づいた形状として、穴あきや溝切りをしたサドルが多くなっています。
スペシャライズドはそれが顕著であり、全てのサドルの座面に穴か溝が施されています。
特にレース仕様の「Power(パワー)」シリーズなどは、先端のノーズ部分にまで穴が開いており、かなり深い前傾姿勢まで意識されているモデルです。
トッププロ選手が穴あきを好まないことから、それに同調するような声もあります。
しかし、プロは完璧にハンドルやペダルに体重を分散できているから股間がそれほど圧迫されないのであり、ホビーライダーでは股間への圧迫は起こりやすいです。
そのため、股間の圧迫に悩んでいる方は、サドル幅を狭くしすぎないこと、そして穴あきサドルを選ぶことをためらう必要はないでしょう。
自分に合わないサドルは苦痛でしかない
今回はサドル幅の重要性を、スペシャライズドのサドルにならいながら確認してきました。
坐骨幅に合わせたサドル幅を選ぶためにも、まずは自分の坐骨幅を確認してみましょう。
狭すぎれば股間を始め局部が圧迫されますし、広すぎてもペダリングの邪魔になりますので、適度な幅にするのが大切です。
そして、自分に合わないサドルほど苦痛なものもないので、一度スペシャライズドのお店でフィッティングしてもらうのもよいかもしれません。