ロードバイクは乗車姿勢が極めて重要なので、それに合わせたサドルの高さや角度、前後位置なども最適なポイントが求められます。
しかし、最初はきつい姿勢にはなれないので、サドルを低めに設定して、上体を起こし気味に乗っている方も少なくありません。
それがベストである可能性もありますが、それですと大体の場合は本来の性能を出しきれていないことになります。
そこで今回は、ロードバイクのサドルの高さについて考えてみます。
ロードバイクのサドルはどんなに低めでも最初は高いと感じるもの
初めてロードバイクに乗る人がまず最初に驚くのは、サドルの高さではないでしょうか。
ママチャリはハンドルよりサドルが低い位置に来るのが一般的ですし、クロスバイクは同じ高さくらいです。
それに対してロードバイクは最初から低めに設定されていたとしても、サドルの方が高い位置にきているはずです。
これは、ロードバイクは空気抵抗を極力減らすように前傾姿勢を取るのが基本で、それには高いところから低いものを握るようにすればよいので、ハンドルよりもサドルの方が高い位置にきます。
さらに、サドルとハンドルの距離が離れていても前傾姿勢になりますので、ロードバイクのサドルの位置は「高く・遠く」が基本になっています。
また、前傾姿勢には空気抵抗の軽減だけではなく、体重をペダルに乗せやすくする効果もあります。
体重がペダルに乗ると、足先だけでクルクルと回す必要がなく、脚全体で効率よく回せるようになります。
体重を乗せてペダルを回すことを「ペダリング」といいますが、このペダリングを効率よく行える位置にサドルを持ってくるのが、今回のお話の要になります。
ロードバイクのサドルを低めにし過ぎることの弊害
ママチャリなどは、サドルに跨った際に足の裏が地面にベタッと付くのがベストと言われていますので、それに慣れてしまっているとロードバイクでも低めのサドル高にしてしまいがちです。
これですと先述した通り効率のよいペダリングは望めませんし、上体が起きてしまうので後ろ重心になってしまいます。
さらに、ロードバイクのサドルは斜め後ろに反るような角度で取り付けられているので、下げると前に移動します。
そうなると余計に重心が後ろに掛かり、サドルにドカッと腰を下ろすような乗り方になるので、お尻に全体重が乗っかってしまい、長い時間乗っているとお尻が痛くなります。
全てではないですが、ロードバイクのサドルはママチャリに比べれば硬めでクッション性のないサドルなので、なおさら痛みが出やすくなります。
お尻が痛くなるということは、ロードバイク乗りでは最も多く聞かれる悩みですが、サドルが低い可能性があることは覚えておいて頂きたいですね。
股下の長さからロードバイクのサドル高を導き出す方法
それではここから、ロードバイクのサドルの高さについて考えていきます。
まずは、大まかな目安があった方が後の調整もやりやすいので、数値を用いて高さを決めていきます。
それにはまず自分の股下の長さを知る必要があります。
プロショップに行けば測定器はありますが、自分でも測ることはできます。
壁を背にして足を、ペダリングしているのと同じ状態に近い20~25cm広げて立ちます。
股に厚めの本やCDケースを挟んで股に当たったところで止めて、挟んだものの上端から地面までの長さが、皆さんの股下の長さです。
一人で測ると微妙にずれたりしますので、出来ればもう一人に、地面でメジャーを押さえてもらうとよいでしょう。
そして、この股下の長さを参考にサドル高を出す係数があるので、それを掛けて目安の高さを算出します。
この係数は、多くのプロのロードレーサーのサドル高と股下の関係を調査した結果から、概ねこのくらいの数値が適当だと考えられているもので、0.870~0.900くらいまで幅広くあります。
初心者は低め、上級者は高めなどととも言われますが、あくまでも目安なので、今回は0.87~0.900の平均の0.885で計算しましょう。
例えば、股下が75㎝の方であれば、75×0.855=64.125(㎝)にサドル高を合わせてみます。
なお、サドルの高さは、ペダルが付いているクランクの中央部分から座面までを測ってください。
係数はあくまでも目安!正解に近づけるには微調整が必要
前項では係数を用いてロードバイクのサドルの高さを導き出しました。
これで理想に近づいた可能性はありますが、必ずしも正解ではありません。
例えば、股下の長さが同じでも足の小さい人はもう少し低めに設定しないといけませんし、靴底の厚さでも微妙に位置が変わります。
そのため、ここからは微調整をしていく必要があります。
まずペダルを一番下にしてサドルに跨り、かかとをペダルの上に乗せます。
この時に膝が伸びきる寸前くらいで、膝に少し余裕がある位置が理想とされており、最も効率よくペダリングが行える高さでもあります。
次に、親指の付け根くらいまで足の位置をずらしていくと膝が少し曲がります。
この時に膝の中心を支点として、大腿骨の外側(大転子)とくるぶしを結んだ線の角度が、145~150度になっているのがよいと言われています。
ただ、角度を測るものはどこにでもあるようなものではないので、真っ直ぐな状態が180度として、それを基準に少し膝が前に曲がっているくらいと考えれば大丈夫です。
そして、サドルの高さを決めたら次は前後位置ですが、ペダルを地面と水平にして足を乗せ、膝とペダルの軸が垂直になっているのが理想です。
ローラー台に乗って大きい姿見で確認したり、見れる人がいれば確認してもらいましょう。
脚に来る痛みが理想のサドル高に近づくヒント
さて、ロードバイクのサドルの高さと前後位置が決まったら、少し走り込んでみる必要があります。
すぐに問題が出てくるわけではないので、時間がある時に長距離を走り込んでみて問題がないかを確認します。
無理なポジションで乗っていると足に痛みが出ることがありますので、もちろん好ましくはないですが、それが適正なポジションへのヒントにもなります。
膝の前側に痛みが出る場合はサドルが低めで、重いギアを力強く踏み込むのにやりづらさがあり、疲労からくる痛みでもあります。
反対に、膝の裏からふくらはぎ周辺に痛みが出る場合は、サドルが高めで腱が伸びてしまっている状態の可能性が高いです。
50㎞、100㎞と乗ればこの痛みがヒントになるはずですので、サドル調整後には一度はロングライドをして、様子を見て頂きたいと思います。
ロードバイクのサドルを低めにするのを恐れない
ここまで、ロードバイクのサドルのポジションについて考えてきましたが、「適正」というのは個人の体格や柔軟性、また用途によっても違います。
今回は、効率よく体重を乗せるペダリングをテーマに考えてきましたが、坂の上りなどでは軽いギアにして足先で回すようなペダリングが求められます。
そうなると、ペダルを一番下にした時に膝が伸び切る寸前のサドル高では、足先で回すのは難しいです。
そのため、サドルを低めにする必要がありますが、「ロードバイクは高めのサドル位置で乗る」という固定観念が働いているのか、高めのまま乗っている方も多く見掛けます。
プロのロードレーサーは、極端すぎるポジションで乗っている人は極めて少ないですし、高めの人が多いかと言えばそんなこともありません。
ですから、一度上げてしまったサドル高を下げることは何も気にする必要はありませんし、身体のためにも、明らかに高いポジションは推奨できません。
ロードバイク=サドルが高めではない!
今回は、ロードバイクのサドルの高さについて考えてきました。
慣れるまでは、足が地面に着くことが最優先になるので低めが多いのですが、お尻に過度に負担を掛けていたり、パワーをロスする分、疲れが溜まりやすかったりするデメリットがあります。
そのため、ある程度まで上げていく必要はありますが、こだわりやプライドではなく、あくまでも自分の用途や乗り方の中で、最適な位置を見付けることを意識してください。