スペシャライズドのサドルは、他のメーカーのスポーツバイクユーザーにも人気のある優れものです。
サドルは、スペシャライズドの真骨頂である「ボディジオメトリフィット」の代表的存在で、高評価を伝えるインプレが後を絶ちません。
今回はその中でも、割と一般的な性格と言える「トゥーペ」を掘り下げてみます。
スペシャライズドの「トゥーペ」は「ボディジオメトリフィット」の賜物
スペシャライズドは、人間の身体にバイクを合わせる「ボディジオメトリフィット」という考え方を推奨しています。
医師や医療の専門家の協力を得て、不快になる要件を極力なくし、快適に走行できるように考えられています。
具体的には身体に直接触れる「サドル」「ハンドル(グリップ)」「ペダル」などの完成車パーツや、「ヘルメット」「グローブ」などのアパレル関連にも採用されています。
また、オフィシャルショップや正規販売店では、自分のバイクが身体と合っているのかを多角的に検討してくれるサービスも行っています。(有料)
これは他メーカーのスポーツバイクでも行ってくれますし、実際に体験した方のインプレを見ても、そこでスペシャライズドの製品をすすめられるわけでもないとのことです。
しかし、冒頭でも触れたように特にサドルは人気が高く、筆者の周りにも他メーカーの完成車にスペシャライズドのサドルという組み合わせをよく見ます。
今回はその人気に迫りますが、汎用性の高い「トゥーペ」を中心に、ロードバイク用サドルを確認していきます。
スペシャライズド「トゥーペ」のインプレにお尻の痛みを伝えるものが少ない訳
スペシャライズドのロードバイク用サドルは、座面の素材と形状、中に入っているパッドの厚さ、レールの素材、主にこのような要素で種類とグレードが分類されています。
そして、ボディジオメトリフィットの真骨頂と言えるのが、座面に開いている穴と溝です。
今では穴開きサドルは特に珍しいわけではありませんが、何を隠そう穴開きサドルを開発したのはスペシャライズドです。
股間のデリケートな部分が当たる場所に穴が開いていますので痛くならないですし、尿道や血管が圧迫されないので、血流が確保できて不快感がありません。
さらに、スペシャライズドのサドルは上手い部分に溝が彫ってあるので、お尻周りの軟組織(男性であれば睾丸など)の血流や神経も圧迫されることがありません。
後述しますが、「トゥーペ」などはサドルの先端部分の溝が長く彫られているので、前傾姿勢でも股間が圧迫されにくい形状になっています。
これだけお尻や股間に不快感を与えないことが意識されていますので、スペシャライズドのサドルのインプレは、お尻周辺の痛みの軽減を伝えるものが多くなっています。
スペシャライズドのトゥーペはこんなサドル
それでは、今回の主役サドルであるスペシャライズド「トゥーペ」をご紹介します。
スペシャライズドの完成車でもレース要素が強い「ターマック」に組み合わされているサドルですので、基本はレース仕様ということになります。
座面の幅が狭めで全体的に細長いという、ロードバイクのサドルとしては最もスタンダードな形状です。
しかも、トゥーペは座面が真っ直ぐなのでお尻の位置が固定されず、自由に位置を変えることができます。
レースでは前後左右にもがいてペダルを漕いだりもしますので、フラットでどの位置でもペダリングの効果が変わらないのは有利です。
さらに、座面が適度にしなりますので、どこの位置でも乗車姿勢に合わせてお尻にフィットしてくれます。
ユーザーさんのインプレでは、このしなりが心地よくトゥーペを選んでいるといるという声が多いです。
その分どこに座ってもお尻や股間が圧迫されないように、中央部分に穴をあけ、先端と後方には深く広く溝が彫ってあります。
トゥーぺには4つのグレードがありますが、その内3グレードでパッドの厚さ=座面の硬さを表す「パッティングレベル」が硬めの「2」です。
あまりフカフカなサドルではペダルに力を込めるのが難しくなりますので、この辺りにもレース仕様ということが垣間見えています。
トゥーペのインプレには気になる点もある
前項でお伝えしたスペシャライズドのトゥーペは、その特徴からやはりレース向けのサドルであると言えます。
薄く、幅が狭く、軽量という、ロードバイクのサドルらしさ全開の仕様ですから、レースに勝つための作りになっています。
この手のレース仕様サドルはどうしても硬さが気になったり、お尻の痛みが強調されてしまうのですが、そこを感じさせないのがボディジオメトリフィットの凄いところです。
筆者もトゥーペのハイエンドモデルである「S-Works」に触れてみたことがありますが、パッティングレベルが「1」だけに座面は硬かったです。(現在は少し柔らかくなって2です)
しかし、インプレでも伝えられていますが、実際に乗ってみると多少硬さは感じますが、しなりが効いているので、お尻の痛みは軽い程度で済みます。
ただし、少し前傾姿勢が深くなると先端が長いので、ポション的に股間への圧迫が避けられません。
また、例えばダンシングからシッティングに戻る時などポジションを大きく変える際に、レーシングパンツが引っかかってしまうというインプレは気になるところです。
トゥーペのインプレから垣間見える適性
前項ではスペシャライズドのサドル「トゥーペ」について、若干の欠点もお伝えしました。
それを考えますと、ダンシングを多用するヒルクライムや、深い前傾姿勢で何度もアタックをするようなスプリントには少し不向きと感じます。
しかし、それは適性の問題ですから、欠点という言葉は相応しくないかもしれません。
トゥーペはインプレで初心者向きと評されることが多いのですが、ロードバイク経験の浅い内はサドル上で姿勢を安定するのが難しいものです。
その点で座面にしなりがあり、どの位置でもお尻にフィットしやすいトゥーペは、サドルが下から支えてくれる感覚になるので、安定させやすいのです。
また、座る位置を頻繁に変えられるということは、疲労の分散もしやすいということなので、長時間・長距離を乗るロングライドに適しているとも言えます。
座面が硬い=お尻が痛くなるという方程式は間違いではないですが、トゥーペは上手く地面からの振動をいなしているので、硬さが気になりませんし、痛みも軽減されているのですね。
スペシャライズドのその他のサドル
ここまではトゥーペを見てきましたが、最後にスペシャライズドの他のサドルも確認しておきましょう。
トゥーペを基準にすると、もう少し前傾姿勢が深く、骨盤が半分くらい倒れている状態で随時走るような、エアロポジション向きなのが「ローミン・エヴォ」です。
座面がカーブしていて後ろがせり上がっている形状なので、お尻の位置を安定させて走りたい方向けでもあります。
よりレース仕様になるのは否めませんが、座面前方の溝の面積が大きいので圧迫は少なく、ある程度の時間や距離はこなせます。
そして、もっと前傾姿勢を深く、タイムトライアルバイク並みのポジションに向いているのが「パワー」です。
全体の長さがUCIワールドツアーの規定ギリギリの短さで、座面の2/3以上に穴が広がっています。
しかも、先端部分が極端に短かく溝も深いので、とにかく前傾姿勢で乗りたいと言う方に向くサドルです。
また、インプレで多く報告されていますが、レーシングパンツが先端に引っかかりづらいのも大きなメリットです。
反対に上体を起こして乗りたいという方には、「フェノム」をおすすめします。
本来はMTB用に開発されたサドルですが、ロードバイクの完成車ではエンデュランスモデル「ルーベ」に採用されています。
ツーリングなどで長距離を乗ることに特化しているのであれば、このサドルがよいでしょう。
トゥーペは対応する用途の幅が広い
今回はスペシャライズドのサドル「トゥーペ」の話をしました。
ロードバイク用の中ではオールマイティに対応していて、形状も割とオーソドックスです。
座面は触ると硬めですが、乗ってみるとしなりがあってお尻にフィットしやすいので、痛みはさほど出ません。
また、前面にしっかりと溝が彫られていて股間への圧迫が少ないので、長い時間乗っていても違和感なく快適に走ることができます。