スペシャライズドのロードバイク「ルーベ」は、悪路や長距離走行に適正の高い「エンデュランスモデル」です。
重量の軽さが優先されるロードバイクにおいては、その要素が後回しにされるという意味で異色の存在とも言えます。
そこで今回はスペシャライズドのルーベにとって、重量以上に大切なこととは何なのかをひも解いてみましょう。
スペシャライズドのロードバイクで重量の軽さにこだわるならこれ!
スペシャライズドのロードバイクには、4本の大きな柱があります。
カーボンフレームの3本柱「Tarmac(ターマック)」、「Venge(ヴェンジ)」、「Roubaix(ルーベ)」、そしてアルミフレームの一大勢力「Allez(アレー)」です。
ターマックは総合レーシングバイクという位置付けで、乗りやすさでも評価の高いオールラウンドモデルです。
それまで、重量にあまりこだわりを持っていなかったと言われるスペシャライズドが、軽量化戦争に割って入るきっかけにもなった機種です。
プロ仕様のS-Worksモデルでは、業界最軽量を謳う「トレック」の「エモンダSLR」と対等レベルまで来ているという話もあります。(スペシャライズドは重量未公表)
「ヴェンジ」は、スペシャライズドのロードバイクの中でもかなり歴史の古い機種です。
エアロロードとして定着していますが、あまりにも空力性能にこだわりを持ちすぎて「プロ以外誰が乗れるの?」と言われた時代もありました。
今では、意図的に剛性の低い部分を作ったりしながら、軽量化も図りバランスも取っています。
そして、今回の主役である「ルーベ」は、のちほど詳しくご紹介します。
スペシャライズドの「ルーベ」の名前の由来になったレース
スペシャライズドの「ルーベ」は、北のクラシック「パリ~ルーベ」5勝の実績を持つ、正真正銘の「エンデュランスモデル」です。
ルーベは、その名の通りパリ~ルーベ用に開発されたものであり、見事にその本分を果たしています。
パリ~ルーベは、未舗装の悪路や石畳の上に設けられたコースを走るロードレースです。
1日で勝負を決する「ワンデーレース」の中では最も格式の高いレースであり、このレースでの勝利を目標に各メーカーはエンデュランスモデルを開発します。
30か所近くにも及ぶ石畳のセクションや、小川のような場所を通るコースもあります。
そのため、落車が相次いでケガ人が続出、傷口に泥やホコリが入り込み感染症を起こすレーサーまでいるありさまなので、「北の地獄」という異名もあります。
こういった状況でのレースであるため、重量の軽さが優先されるロードレースとは明らかに違う仕様の機体が必要とされます。
スペシャライズドのルーベが分類されているエンデュランスモデルとは?
パリ~ルーべのようなワンデーレースは過酷なコース状況であるため、まず車体に求められるのは安定性と振動の軽減、そして衝撃吸収性ということになります。
そのレース向けに開発されているのが「エンデュランスモデル」であり、スペシャライズドなら「ルーベ」がぴったり当てはまります。
一般的なレース仕様のロードバイクに比べれば、前傾姿勢が深くならず、ホイールベースをゆったりめに取ることで安定感を出しています。
また、衝撃吸収性を重視するので、タイヤが平均よりも太くなりますし、路面状況に左右されない制動力を持つディスクブレーキも、今や必須と言ってよいでしょう。
そのため、軽量が売りとなるレーシングモデルとは違い、重量にこだわらない(軽くできない)モデルという言い方もできます。
レース志向が薄く重量にこだわらないのであれば「ルーベ」がおすすめ
スペシャライズドの「ルーベ」は悪路の走行に向くエンデュランスモデルですが、このモデルはロードバイク初心者の方にも向くとされています。
上体が起き気味で楽な姿勢で乗れますし、どっしりと車体が安定していますので操作性も優れています。
また、レースバイクにありがちな硬さも適度ですし、軽いギアが搭載されているので、まだ脚力が備わっていない内でも楽にペダル漕げるという利点もあります。
さらに、衝撃吸収性に長けていますので、ツーリングなどの長距離走行にも向いています。
地面からの振動はボディブローのようにあとからジワジワ効いてきますので、長時間乗るには振動の減衰と衝撃の吸収性がとても大切になります。
そして、長距離をこなすには一定のスピードを維持する「巡航」が必要なのですが、これはある程度の重量があった方が有利です。
軽い車体のバイクは、ペダルを漕ぐ力が緩むとすぐに減速するので、スピードを維持するには強い力で漕ぎ続ける必要があります。
反対に重量があると速度が落ちにくくなるので、小さな力でもスピードが維持できます。
ルーベは全車カーボンフレームなので初心者「向き」とまでは言えませんが、それほどレース志向が強くなく、あまり重量にこだわらないという方は選択肢に入れておきたいですね。
スペシャライズドのルーベ搭載の衝撃吸収システムの凄さ!
スペシャライズドのルーベですが、衝撃吸収性の向上のためにフロントに「Future Shock」というサスペンションを搭載しています。
2018年モデルからは下位グレードにまで投入されており、全モデル搭載となりました。
ヘッドチューブに20㎜ほどのピストンを入れて上下に動かすことで、地面からの振動をいなす効果があります。
サスペンションということで、どことなくフワフワした感触を懸念する声もありましたが、インプレを見ていると快適に感じている人が多いですね。
また、ただでさえ重量を軽くできないエンデュランスモデルに、さらに重量が嵩むような技術を導入してどうするのか、と言う意見もありました。
しかし、わずか200g程度の話ですし、それを補って余りある効果があるということで、その意見も相殺された感じです。
さらに、ミドルグレード以上にはシートポストのサドルとのクランプ付近に「コブルコブラ」という衝撃吸収機構があります。
お尻でコントロールしながら走るロードバイクでは、この部分に衝撃が少ないと非常に楽なので、理にかなったシステムです。
ロードバイクは重量の前に考えることがある
ロードバイクについての記事や文献には、しばしば「軽さは正義」という言葉が登場します。
何をするにも軽い方が有利のような意味で、この言葉自体は決して間違ってはいないでしょう。
今回の主役である、スペシャライズドのルーベのようなエンデュランスモデルも、列記としたレース仕様車ですからこの言葉が当てはまる部分もあります。
しかし、お伝えしてきたように、悪路や石畳の上を速く走るのは必ずしも軽量だから有利ということはありません。
また、長距離レースにおいても先述通り、軽ければよいというわけではありません。
スペシャライズドで言えば、スピードと乗り心地のバランスを求めるなら「ターマック」、とにかく速く走りたいなら「ヴェンジ」、そして悪路や長距離を走るなら「ルーベ」です。
とにかく重量に目が行きがちなロードバイクですが、まずは自分の目的や用途から考えるのが最優先ということです。
「ルーベ」のようなエンデュランスモデルは重量だけでは語れない
今回はスペシャライズドの「ルーベ」についてお話しました。
過酷な路面状況に対応するために開発された「エンデュランスモデル」であり、軽さが重視されるレースモデルとは一線を画すものです。
また、楽な姿勢で乗車でき、乗り心地に優れているのでロードバイク初心者の方にもおすすめです。