ロードバイクのメンテナンスや整備を行っていくうちに出てくる「振れ取り」という言葉があります。
この「振れ取り」は、ホイールのメンテナンスを行っていく上で避けられないものです。
では、そもそも振れ取りとはどういうことなのか、必要性や重要性等などをご紹介していきましょう。
ロードバイクのホイールの重要性
まずは、ロードバイクの中でホイールがどれほど重要なものなのかご説明しておきましょう。
ロードバイクは様々なパーツから成り立っています。
ハンドル、ステム、フロントフォーク、シートポスト、フレーム、など挙げていけば10を超えるものから出来ています。
その中でもホイールは、車体を支える役目があり、それとは別に回転体としての大きな役割があるので、車体を進めるためには必要不可欠な物です。
エンジンである人間が、クランクに伝えた力がチェーンを伝わり、ホイールまで届きます。
その力を、いかに減衰せずに路面に伝え推進力に変えるか、という役割を担っています。
それが減衰すればするほど、遠くまで走りたい、速く走りたいといったエンジン側の欲求を満たすことが出来なくなります。
ここでホイールに異常が発生していると、減衰が大きくなってしまいます。
そのため、ホイールに異常を発生させないためにも、メンテナンスがとても重要なのです。
ホイールのメンテナンスにも数種類ありますが、その中に冒頭でもある「振れ取り」があります。
あまり馴染みがない方もいらっしゃるかもしれませんので、ホイールのメンテナンスについてご紹介していきましょう。
ロードバイクのホイールのメンテナンス
ホイールのメンテナンスにも数種類あると先程簡単に書きましたが、そのメンテナンスについて詳しくご紹介していきましょう。
まずは、ホイールの中心、回転体の役割を果たしているハブです。
この部分はベアリング構造になっています。
ロードバイクのホイールメーカーの大手で言いますと、マビックはシールドベアリングを使用しており、シマノ・カンパニョーロ・フルクラムはカップ&コーンというベアリング構造です。
シールドベアリングの場合はベアリングを交換してしまえば済みますが、カップ&コーンの場合は、分解・グリスアップの必要があり、これがメンテナンスになります。
そして、フリーハブに付属しているフリー部分も同様に回転部分ですので、メンテナンスの必要があります。
ここは、各社構造が様々ありますが、基本的に分解・グリスアップが必要な部分です。
そして、回転体とリムをつなぐスポークです。
最上級グレードではハブ・スポーク・リムがカーボン一体成型になっており、この場合はメンテナンスの必要がありません。
そうでない場合、振れ取り・テンション調整というメンテナンスがあります。
内容については長くなりますので後述します。
最後にリムです。
ここはあまりメンテナンスするところがありません。
アルミリムであれば、摩耗度合いを判別するための凹みがありますので、その部分をチェックしておく必要があります。
その他に、異物付着のチェックをしておきましょう。
ホイールの振れと振れ取りとは
続いては、先程ホイールのスポークの部分で少し触れた「振れ取り」についてお話ししましょう。
「振れ取り」とは、「振れ」を「取る」わけですが、ではそもそも「振れ」とは何なのでしょう。
ホイールは、必ずと言っていいほど、「振れ」が発生しています。
これには「縦振れ」と「横振れ」があります。
スポークとリムやフランジの間にはニップルというものがあり、それのねじ込み具合によりスポークの張り具合やそれによる振れの度合いが変わってきます。
張り具合が全く違うと、どちらの振れも発生します。
完組ホイールと言われる市販されているホイールや、ロードバイクの完成車に付属しているホイールは基本的に振れはありません。
ですが、走行しているうちに必ず発生します。
これは、数百グラム程度のリムに大きな力をかけたり、路面で大きな衝撃を加えるとニップルが少しずつ緩むためです。
これにより発生する「振れ」をなくすのが「振れ取り」というメンテナンスです。
では、なぜ振れ取りをしないといけないのでしょうか。
ホイールの振れが与えるロードバイクの走行への影響
では、ホイールの振れ取りを行わないと、ロードバイクの走行への影響はどのようなものがあるのでしょうか。
縦振れの場合が最も分かりやすいです。
縦振れしているということは、ホイールが真円ではなく、楕円になっているということです。
同じように道の上を転がした場合、真円は滑らかに転がっていくでしょう。
ですが、楕円の場合、滑らかに転がらず、加減速が必ず発生します。
加減速が発生しているということは、少なからず抵抗が発生しています。
これは、ロードバイクを進める上で不必要な抵抗です。
次に、横振れの場合を簡単にご説明します。
こちらの場合、同じ真円でも横方向に振れが発生しているということは、進行方向以外へ力がかかることになります。
同じ10の力で進もうとしていても、横方向に1の力が逃げていってしまうと、進行方向へは9の力しかかからないことになります。
よって、これも不必要な抵抗です。
レースのように一分一秒、コンマ数秒を争うような場合、不必要な抵抗があったせいで競り負けることもあり得るでしょう。
また、ゴール前まで脚を温存しなければいけないのに、道中で不必要に脚を削られてしまいます。
「振れ取り」を行うことで、このような影響を避けることが出来るのです。
ホイールの振れ取りに必要なもの
さて、それではここからはホイールの振れ取りに必要なものをご紹介していきます。
まず最低限必要なものは、
①自分のホイールのニップルサイズ用のニップル回し
②スポークホルダー
③振れ取り台
です。
③の振れ取り台はそこそこ値段のするものですし、初めてのチャレンジしてみようかと考えている方にとっては、なかなか手を出しにくかったりします。
そこで、代用方法をご紹介します。
あくまで仮のものですので、本格的にしていく場合、センターゲージ付きの振れ取り台の購入を検討してください。
基本的にリアのほうが振れますので、リア側でご紹介していきます。
用意するものは、
①タイラップ2本
②ニッパー
です。
方法は、
①ロードバイクをひっくり返す
②チェーンステーのリムに近い部分にタイラップを取り付ける(タイラップの先端部がリム側にくるように)
③ニッパーで斜めに切断する(先端とリムが1mmの隙間になるように)
④左右同様に行う
これで簡易的な振れ取り台の完成です。
これだけで縦振れと横振れの確認が出来ます。
センター出しの確認は完璧なものはこれではできませんが、チェーンステーやフロントフォークとの隙間を確認すれば簡易的なセンターの確認は可能です。
ホイールの振れ取りの方法
では、ホイールの振れ取り方法をご紹介していきましょう。
順番としては、
①縦振れを取る
②横振れを取る
③センターの確認をする
となります。
まず注意点として、スポークを張る(ニップルを締める)方向のみで調整します。
縦振れは±0mmにすることは不可能です。
1.5mm以下の範囲内であれば正常ですので、そこまで神経質にならずに行いましょう。
凸部分に出ているところに注目し、その部分の左右から出てきているスポークのニップルを右方向に回して振れ取りを行いましょう。
次に横振れですが、振れ取りは基本的にこの作業のことを言います。
基準となる面に対して、凸部分を凹ませる方向で調整します。
リムを向かって右方向に寄せたい場合は、フランジの右側から出ているスポークのニップルを締めることで右に引っ張られます。
左方向に寄せたい場合は、その逆方向のニップルになります。
ニップルの締め加減ですが、一番振れの大きな部分のニップルを1/4回転締め、その左右を1/8締めましょう。
これを振れの状態を確認しながら繰り返します。
ホイールにより多少違いますので、果敢にチャレンジして慣れることも大事です。
最後にセンターの確認ですが、基本的にあまりズレません。
もしズレが発生している場合、引っ張りたい側のニップルを全て締めていく方向で調整していきます。
簡易的な振れ取り台で確認した場合、ロードバイクにつけたままで調整を行ってください。
ホイールの振れ取りにチャレンジしてみよう
ホイールの振れ取りについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
振れ取りと聞くと、なかなかハードルが高そうでチャレンジしにくいかもしれませんが、そんなに難しいものではありません。
道具を揃える過程でショップの方に教えていただくのもいいと思います。
自分の愛車ですので、大切に長く乗っていくためのメンテナンスとして覚えておいて損はないはずです。