ひと昔前に比べたら自転車のタイヤは、カラーバリエーションも増えて、ずいぶんオシャレになりました。
話は変わりますが、オートバイ陣営では昔からメーカーロゴや文字を塗装した「ホワイトレター」をはじめ、ユーザー自身がタイヤをカラーリングすることが人気なのだそうです。
たった数文字だけのワンポイント装飾で、華のないタイヤが一気にオシャレに大変身してしまいます。
それはオートバイに限らず、自転車でも同じだと思うのです。
自転車のタイヤの文字を塗装してオシャレにして、ステップアップしてみませんか?
やってみると意外に簡単!タイヤの文字塗装の基本手順をご紹介
モータースポーツをよく観ている人なら、ホワイトレターのカッコよさは分かるかと思います。
とはいえ、いざ自分でやるとなると「ホントにキレイに仕上げられるのかな?」「はみ出したらどうしよう…」などと思ってしまうのではないでしょうか?
でも、「案ずるより生むが易し」です。
やってみると、タイヤの文字を塗装することは意外に簡単です。
そこで、まずは基本的な作業手順を見てみましょう。
【作業手順】
・文字を塗装したいタイヤをリムにはめ、規定値まで空気を入れる
(車体からは外しておいたほうが以降の作業はしやすい)
・ウェスでタイヤをきれいに水拭きして、砂やホコリを落とす
・脱脂してタイヤのゴムそのものを露出させる
・ワイヤブラシやサンドペーパーでこすり、塗る部分を多少荒らす
・塗装
・乾燥
(塗り重ねるときは必ず完全に乾かしてから行う)
実はこれだけです。
難しい作業は何もありません。
脱脂は塗料の食いつきをよくするために行いますが、脱脂用のシートはカー用品店やホームセンターで簡単に手に入ります。
また、アルコール除菌シートがあればそれで拭いても効果があります。
ただし、新品のタイヤは離型剤やワックスが残っていて、なかなかキレイに塗れません。
「ひと皮むけた(しばらく使って何度か雨に洗われ、タイヤのテカリがなくなってきた)」あたりが頃合いです。
次は、実際に何を使って塗装作業をしたらいいのかを見てみましょう。
お試しでタイヤの文字を塗装してみるならポスカがオススメ?
文字塗装の初心者で、上手にできるかどうか不安なうちは、できればコストもかけたくありませんよね?
そこでオススメなのが、例えば「ポスカ」のような水性顔料インクを使った不透明のサインペンです。
もともと、黒など暗い色のものに書くことを前提に作られているので、特にパステルカラー系の色はタイヤの色が透けてきません。
また、乾燥すれば、水に濡れてもにじんだりしません。
それも、一色数百円で買うことができて、コスパも優秀です。
せっかくなので、白だけではなく黄色やオレンジなども揃えて、あちこち試し書きをしてみたいですね。
ただ、残念なことに水性顔料インクのペンは、プラスチック板や紙など、頻繁に伸縮しないところに書くことを前提に作られたものです。
そのため、使っているうちに剥げてきてしまいます。
大事に使っていても、走行中の自転車のタイヤは常に伸縮を繰り返していますから、半年もしないうちに文字は消えてしまいます。
また、赤や青・緑など、暗い色については発色が薄いこともあり、重ね塗りしないとタイヤの色が透けてしまいます。
さらに、屋外で使用するものに使う前提で作られていませんので、紫外線による退色も見られます。
「剥げてきたら塗り直せばいいじゃん!」と割り切ることもできますが、せっかくなので慣れてきたらぜひ試してみてほしいのが、タイヤ専用のカラーリングペンです。
剥がれも退色も怖くない!耐久性バツグンのタイヤ用塗装ペン
タイヤの文字を塗装するホワイトレターは、モータースポーツから始まり、今でもオートバイ業界では人気です。
そのため、バイク用品店の補修品売り場に行くと、タイヤ専用のカラーリングペンを見つけることができます。
伸縮を繰り返す「タイヤ専用」に作られたペンであるため、ゴムへの食いつきは抜群です。
できた被膜自体が伸びるので、曲げても引っ張っても大丈夫ですが、やはり、使用を続けるとキズやヒビ割れはどうしても起こってしまいます。
ですが、先ほどご紹介した「水性顔料インクのサインペン」を使った方法に比べたら、断然持ちもいいです。
使い方は、「クリーニング→脱脂→荒らし→塗装→乾燥」という基本どおりで大丈夫です。
下地処理をしっかり行い、使用上の注意を守って作業すれば、プロ顔負けの仕上がりになります。
また、水性顔料インクのサインペンに比べて粘度の高いインクを使用しているので、使い方を間違わなければ液垂れすることもほとんどありません。
ただ、お値段は1本で2,000円~3,000円ほどします。
また、専用だからずっと色褪せずにキレイなままかといえば、そんなこともなく、タイヤが汚れれば、同じようにペイントも汚れてきます。
そうは言っても「タイヤ専用」はダテではなく、顔料の発色はケタ違いにいいですし、紫外線による退色も最小限です。
本気でタイヤの塗装を極めたいのであれば、トライする価値は十分にあります。
ステンシルを使えばタイヤの文字塗装を自分でデザインできる
エンボス加工のないようなシンプルなタイヤの場合、ステンシルを使って自分でタイヤの文字塗装をデザインすることもできます。
ステンシルシートは、お店やインターネットで購入することもできます。
また、カットするのが面倒ではありますが、デザインしたステンシル風フォントの文字を、専用シートに印刷してステンシルを自分で作ることもできます。
本当に「世界でたった一本だけのタイヤ」を目指すなら、ぜひチャレンジしてみてください。
作業手順もペンで塗るときと大きくは変わらず、違うのは以下の2点だけです。
・ステンシルシートをタイヤにできるだけ密着させて、養生テープなどで固定する。
・化粧品用などキメの細かいスポンジに塗料(水性顔料インクやタイヤ用ペンなど)を付けて、トントンと叩くようにして塗装する。
上手く塗装するコツは、一気にベタ塗りせず、少しずつ数回に分けて塗ることです。
一度ではタイヤの色が透けてしまい、ぜんぜん仕上がったようには見えませんが「塗っては乾かして…」を何度か繰り返すと、塗料本来の美しさが出てきます。
また、乾かないうちにたくさん塗ってしまうとステンシルシートとタイヤの間に塗料が漏れ出してしまい、仕上がりが汚れてしまいます。
とにかく「ゆっくり、じっくり、少しずつ」です。
もうはみ出さない!タイヤの文字をキレイに塗装するアイテム
タイヤに文字を塗装する場合、エンボス加工されている部分に塗料を乗せるのが基本となりますが、キレイに仕上げるのには多少の慣れが必要です。
はみ出してしまったら、乾いてからサンドペーパーを当ててしまえばキレイにはなるのですが、ペーパーを当てた場所はゴムがケバ立って白っぽくなりますし、いちいち作業するのも面倒です。
そんなときにぜひ試してほしいのが「マスキングゾル」という商品です。
プラモデル用塗料のメーカー数社から販売されていて、高いものでも1本500円程度で購入することができます。
塗った部分に、薄いゴム状の膜を作って、乾燥後に剥がせる優れものです。
使用上の注意は「丁寧にマスキングすること」と「剥がせるかどうか事前に確認すること」の2点です。
マスキングのラインが、そのまま文字のエッジになります。
そのため、いい加減に「マスキングしてあるから大丈夫~」と塗装した結果、エッジがガタガタになってしまうこともあります。
また、マスキングゾルの中には液状ゴムでできていて、乾燥すると本物のゴムになるものもあり、タイヤのゴムと一体化してしまって剥がせなくなってしまうことがあります。
使う前には、必ず廃タイヤで試し塗りをして、剥がせることを確認しましょう。
タイヤを塗装するときの注意点
タイヤの文字を塗装することで、グッとオシャレな自転車を作ることができますが、タイヤを塗装するにあたって「これだけはやってはいけない」というNGな行為がいくつかあります。
一番のNGは「トレッド(路面との接地面)に塗装してしまうこと」です。
どのタイヤであっても、コンパウンド(タイヤの素材)が路面に合わせて変形、噛み合わさることで摩擦が生まれグリップを得ています。
そこに塗料が乗ってしまうと、路面とタイヤの間に塗料が入った状態になってしまい、グリップが損なわれる原因になってしまいます。
特にステンシルを使ったりして、タイヤのどこにでも文字が塗装できるようになると、あれこれとタイヤに書いてみたくなるかもしれません。
しかし、路面に触れる部分は絶対に塗装してはいけません。
もう一つのNGは「タイヤとの相性がよくない塗料を使ってしまうこと」です。
一般的な黒いタイヤであれば、それほど問題ないかと思われますが、もともと色が入っているようなタイヤの場合、タイヤのゴムと塗料の相性がよくないことがあります。
できれば、同じ種類の廃タイヤを一本用意し、試し塗りをしてから作業するようにしましょう。
そのとき、塗料を塗った廃タイヤの表面が柔らかくなってしまうようであれば、バーストやパンクの原因になり得るので、そのタイヤには塗装してはいけません。
こだわりの一台にステップアップするためのタイヤの文字塗装
オートバイに比べたら自転車のタイヤは細く、存在感があまりありません。
まして、黒一色のタイヤであれば誰も気に留めることはないでしょう。
しかし、だからこそ敢えて手を加えることで、そこにセンスと美学が光る「世界にたった一つのホイール」が生まれます。
タイヤの文字を塗装するホワイトレター化は思ったほど大変な作業ではありませんから、ぜひ、こだわりの一台へのステップアップとして、挑戦してみてください。