カンパニョーロのアルミリムホイール「シロッコ」は、リムハイト35mmのセミディープリムです。
ノーマルハイトのホイールに比べると、かなり癖が強いので、どんな特徴でどういった用途に向いているのか気になるところです。
そこで今回は、カンパニョーロのシロッコを確認しながら、ロードバイクのホイールにおけるリムハイトの持つ意味を考えていきます。
カンパニョーロのロードバイク用ホイール
カンパニョーロのアルミリムホイールはグレード順に、「シャマル・ミレ」「シャマル・ウルトラ」「ユーラス」のハイクラス。
ミドルクラスには超人気の「ゾンダ」、下位クラスに「シロッコ」「ヴェント」「カムシン」があります。
カンパニョーロの凄いところは、下位クラスに至るまで、押しなべて評価が高い点です。
同じような価格帯の、他メーカーのホイールとの比較という意味ですが、いずれにしても安定して高い評価を受けています。
その最も顕著な例は、カンパニョーロ独自のスポークの組み方である「G3スポークパターン」を、1種類だけ除き、全てのホイールに採用しています。
3本のスポークを一対として、配する組み方です。
空気抜けが良く、エアロ効果もあるため、空気抵抗に強く、乗り心地の良いホイールに仕上がります。
これは、ロードバイクのホイールにしては、珍しいことです。
差別化の意味もあり、下位モデルにまで、同じ技術を投入することは、ほぼありません。
シロッコはロードバイク用セミディープリムホイール
カンパニョーロのアルミリムホイールの中で少し異彩を放つ存在が、今回の主役「シロッコ」です。
シロッコはリムハイトが35mmあり、「セミディープリム」というカテゴリーに入るホイールです。
定義がきっちり決まっているわけではないですが、30mmまでが「ノーマル」、35~50mmが「セミディープ」、50mm~が「ディープ」と考えられています。
カンパニョーロの他のアルミホイールは、リムハイトが高くても30mmまでですので、シロッコは一線を画しています。
他メーカーに目を向けても、リムハイトの高いアルミホイールは1種類、多くて2種類です。
これは、軽さが重視されるロードバイクのホイールにおいては、重量の重くなる要素は、なるべく排除しなければならないからです。
それを示すこととして、50mm以上のディープリムは、どのメーカーも軽量なカーボンリムのホイールです。
また、リムハイトが高くなると、剛性が高くなるので、硬いホイールになります。
仮に、アルミで50mm以上のハイトにしてしまうと、ただ重くて硬いだけのホイールになってしまうでしょう。
ロードバイクのホイールでリムハイトを高くする意味
ロードバイクのホイールは、空気抵抗との戦いです。
面積が大きいこともそうですが、スポークが空気の抜けを妨げ、乱気流を生み出すので、余計に空気抵抗の影響を受けやすくなります。
究極の空気抵抗対策のホイールに、スポークをなくし、全体を円盤で覆ったような形をしている「ディスクホイール」があります。
スポークがないため、前から来る風を、きれいに受け流すことができるので、空気抵抗の影響が少ないというものです。
ただし、横からの風は、まともに全て受けることになるので、煽られてしまいます。
そのため、屋外で使用するのは危険極まりないので、屋内のトラック競技によく使用されています。
このディスクホイールの概念と同じ発想なのが、シロッコのようなリムハイトの高いホイールです。
リムハイトが高くなる分、スポークは短くなり、風に当たる面積が小さくなります。
そのため、ディスクホイールと同じような効果が得られます。
特に、横風の影響が少なくなる高速域に入ると、抜群の巡航性を発揮します。
反面、低速では、横風の影響や慣性モーメントの問題がでます。
その影響で、漕ぎ出しや坂の上りでは、もっさりしますので、重さを感じるでしょう。
その辺りをどう折り合わせるかが、ホイール選びにおけるリムハイトの難しさです。
シロッコが適しているシチュエーション
ロードバイクにおいて、リムハイトの高いホイールは特徴がはっきりしている分、シロッコも向き不向きが顕著に出ています。
高速巡航性が高いことは間違いないので、平坦の舗装路がメインという人には向いています。
さすがに前後計で1,800g近くあるシロッコは、レース用としては厳しいですが、練習用としてなら、十分に機能してくれます。
また、シロッコはアルミリムでハイトが高いので、剛性の高いホイールです。
剛性が高いホイールは硬くてたわまないので、パワーロスが少なくなり、漕いだら漕いだ分だけ前に進むホイールになります。
しかし、クッション性がなく地面からの振動が結構伝わってくるので、乗り心地は良くありません。
そのため、長距離を乗るロングライドには向かないのです。
しかし、カンパのホイールは、先述したG3スポークのため、乗り心地は良くなっています。
無駄な力を使わなくて済むということから考えると、本来なら長距離には、パワーロスの少ないホイールのほうが向いています。
そのため、乗り心地も加味されているシロッコは、十分にロングライドでも使えるホイールということになります。
シロッコのデメリット
ロードバイクにおいて、リムハイトが高いホイールは、デメリットもあります。
先述通り、漕ぎ出しに力を擁しますので、ストップ&ゴーが頻繁にあるような街乗りには、適していません。
低速域での危険性も指摘したように、公道では大型車が横を通過したら、煽られてしまう可能性があります。
また、坂の上りも重さがあるので、きつくなります。
ヒルクライムレースの練習用で、脚力を付けたくて、あえてシロッコを選んでいるというインプレを見たことがあります。
そういったストイックな考え方なら否定しませんが、普段使いで坂道を多く通るようなら、避けたほうが良いかもしれません。
あとは、体重の軽い人や脚力に自信がない人は、剛性が高すぎて苦労しそうです。
ただし、これは逆を返せば体重がある人にとっては、たわまないホイールであり、脚力自慢の人には踏み抜きやすいとなります。
カンパニョーロ・シロッコのスペック
最後に、シロッコのスペックを確認しておきましょう。
重量は前後計、約1,800gです。
2018年より、リム内径が17mmとなり、ロードバイクホイールのトレンドである、ワイドリム化が図られます。
スポークはスチール製で、フロント16本、リア21本は平均的です。
ハブのベアリングは「シールドベアリング」です。
カンパニョーロはゾンダより、上位モデルが「カップ&コーンベアリング」です。
特殊な加工により、良く回るハブなので、ここは1枚落ちると言わざるを得ません。
ただし、一般的なシールドベアリングと違い、調整は可能なので、ノーメンテではありません。
価格は定価で5万円ほどですが、実売では4万円を切っている通販サイトがあります。
ライバルとしては、同じリムハイト35mmのフルクラム「レーシング・クアトロ」があります。
フルクラムは、カンパニョーロの子会社なので特徴は似ていますが、フルクラムの方が、より剛性が高い設計になっています。
そのため、乗り心地なら「シロッコ」、硬さを重視するなら「レーシング・クアトロ」という選択になるでしょう。
シロッコは高速巡航に最適
今回は、カンパニョーロのセミディープリムホイール「シロッコ」をご紹介しました。
アルミのセミディープホイールは貴重な存在なので、長年ラインナップし続けています。
万人向けとは言えませんが、平坦な道をとにかく速く走りたいなら、一考したいホイールです。