フルクラムと言えばカンパニョーロの子会社として有名ですが、今や親会社にも劣らない超人気ホイールメーカーです。
主力はアルミリムの「レーシング」シリーズですが、かつて、ハイエンドモデルのレーシングゼロに非常に近い「レーシング1」が存在していました。
現在は製造をしていませんが、通販サイトではまだ販売が継続していますので、インプレなども参考にしながら確認していきましょう。
フルクラムとは
レーシング1の確認をする前に、フルクラムについて簡単に触れておきます。
フルクラムは、世界的な自転車パーツメーカーのカンパニョーロが立ち上げた、ホイール専業メーカーです。
カンパニョーロはコンポでは、シマノにシェア面でかないませんので、シマノのユーザーにも自社のホイールを使用してもらうには、どうしたら良いかと考えたわけです。
しかし、自社でコンポを扱っている以上、あからさまにシマノのスプロケットに対応するホイールを製造するわけにはいかなかったので、フルクラムを立ち上げたと言われています。
現在は、自社のホイールにもシマノのスプロケに対応するモデルを出していますが、当時は意地を張っていたのでしょうか…。
そういった立ち上げ背景もあったので、フルクラムは当初「カンパのシマノへの媚売りメーカー」とインプレなどで揶揄されていました。
実際に立ち上げ当初は、全製品がシマノのスプロケ専用だったので、そう言われても仕方無かったわけです。
現在は、世界有数のホイールメーカーとなり、カンパとは違う技術を投入して、独自路線を歩き始めてもいます。
フルクラムはアルミリム上位モデルのインプレ評価が高い
フルクラムの主力製品は、アルミリムの「レーシング」シリーズです。
2017年モデルを確認しますと、上位グレードから順に「ゼロ」「3」「クアトロ」「5」「7」となっており、先述通り、レーシング1はライナップされていません。
レーシングシリーズはリムハイト35mmのクアトロを除くと、ゼロ,3の上位組と5,7の下位組の差が、かなり激しくなっています。
例えば、スポークの組み方ですが、これは各メーカーが独自の技術を投入する代表的な部分です。
フルクラムも、「2:1 Two-to-Oneスポークレシオ」という、独自の技術を採用しています。
スポークの本数をフリー側2:1反フリー側にして、フリー側により動力が伝わりやすくなっています。
また、スポークテンションのバランスを取っているので、振れが出ずらい設計になっています。
この技術は、ゼロと3には(クアトロも)採用されていますが、5,7には採用されていません。
また、ハブのベアリングも差がつけてあり、5と7はシールドベアリングですが、3とゼロはカップ&コーンです。
どちらのベアリングが優れているかということではなく、3とゼロにはカップに特殊加工がされています。
そのため、ゼロは最初からセラミック製のボールベアリング、3はスチールですが、後にセラミックにグレードアップさせることができます。
このようなスペックの違いがあるので、インプレではゼロや3は称賛され、5や7は酷評が目立ちます。
レーシング1は、ゼロと3の中間に位置づけられていたようです。
フルクラムレーシング1のインプレ
それでは、フルクラムのレーシング1のスペックを確認してみましょう。
レーシング1はレーシングゼロの廉価版という位置付けで、使用されているパーツが、少しだけグレードダウンしています。
当時のインプレを参考にすると、リムの重量が25g、ゼロより重いとあります。
また、ハブのシェルがゼロはカーボン、1はアルミ。
べアリングがゼロはセラミックボール、1はスチールだったようです。
価格差が2~3万円ほどありますので、ハブによるところが大きいと言えます。
現在は、カンパニョーロの「ユーラス」と「シャマルウルトラ」が、この関係にあります。
インプレの使用感を見てみると、加速性や登坂能力のゼロに対し、1は巡航性の高さが指摘されています。
ゼロが「良く回る」ホイールなら、1は「良く走る」と評されています。
この辺りはスペックからでは、想像しずらい個人的な感覚もあると思いますが、いずれにしても優れたホイールだったことはうかがえました。
インプレでは上位グレードの方が好評価される
フルクラムがレーシング1とゼロで行った、微妙なスペックの違いで格差を出す方式は、他のメーカーにも見られます。
先述通り、カンパニョーロのシャマルとユーラスは、今でもこの関係ですし、シマノもデュラエースのリムを使用した廉価版がありました。
しかし、レーシング1は既に製造されていませんし、シマノも2018年のラインナップには、デュラエースの廉価版はラインナップされていません。
カンパにしても、インプレを見る限り、ユーラスに比べるとシャマルの評価が高いのは明らかです。
いずれも10万円前後のハイグレードなホイールなので、そこまでレベルが上がると価格差が2~3万円あっても、より上級のスペックを持つほうが、人気があるということになります。
それでも、レーシング1とゼロの関係で言えば、ほぼハブのベアリングの差だけです。
そこに優位性を感じなければ、2万円でも安い1が選ばれたのではないかと思われます。
レーシング1はアルミスポーク
フルクラムのアルミリムホイールは、全体的に剛性が高いことで有名です。
「硬い」という表現でも差し支えありませんが、レーシング1も、やはり剛性の高さがインプレで多く指摘されています。
フルクラム全体の剛性の高さは、リムの強さからきているわけですが、レーシング1はさらに、スポークがアルミ製です。
スポークをアルミにすることで反応がさらに良くなり、漕いだら漕いだだけ進むような、レーシーな剛性の高いホイールになります。
しかし、これは乗り手の脚力によるところが大きくなりますので、場合によっては、硬すぎて脚にくるだけのホイールになってしまいます。
また、ホイールの剛性は、乗り心地にも関係してきます。
硬いホイールは乗り心地を両立できるものではないので、どうしても当たりが強く、ハードな乗り心地になります。
実際に、シマノのデュラエースはハイエンドモデルですが、アルミよりも柔らかいステンレススポークを採用しています。
シマノは全体的に剛性が低いとされていますので、スポークだけで剛性が決まっているわけではないですが、乗り心地も考慮に入れた選択ではと言われています。
レーシング1はレーシングゼロに集約された
これまでの話でお分かりいただけたかと思いますが、レーシング1はレーシングゼロの人気に追いつかず、少し厳しい言葉を使えば「淘汰」された形です。
インプレを色々と確認しましたが、スペックの違い以外にも、走りに多少の味付けの違いはあったようです。
しかし、いずれも決定的な違いではないように感じました。
これは、よく議論されることですが、フルクラムやカンパニョーロが上位モデルに採用している、ハブのセラミック製のボールベアリングの効果についてです。
スチール製ボールとの違いを、はっきり感じる人もいれば、それほど感じない人もいます。
また、ハブのシェルがカーボンとアルミの違いも、ハブはリムより重いほうが、よく転がるという原理からすればアルミで良いとも言えます。
そのため、レーシングゼロとレーシング1は、それほど性能に差がなかったと判断できます。
そのため、レーシングゼロを購入したいと考えているのなら、市場に残っているレーシング1も視野に入れて、検討しても良いかと思います。
レーシング1はまだ在庫がある!
今回は、フルクラムのレーシング1についてお話しました。
レーシングゼロの廉価版という位置付けでしたので、人気が出なかったようです。
スペックはそこまで大きな違いはありませんので、性能はレーシングゼロに、かなり近いと推測されます。
購入する場所によっては、レーシング1が大幅に値下げされていることもあるようですから、積極的に狙ってみても良いのではないでしょうか。