ロードバイクのタイヤは、700cという規格に、ほぼ統一されています。
700(mm)というのはタイヤの外径で、幅(太さ)は自由に選ぶことができます。
現在は25cと表記される、幅25mmのタイヤがロードバイクの主流です。
今回は、なぜ25cが主流になったのか、その経緯を追い、タイヤの太さについて考えてみます。
ロードバイクのタイヤ。700×25cの意味は?
ロードバイクはスピードに特化した自転車なので、ママチャリやMTBに比べ、大口径の車輪(ホイール)が採用されています。
車輪が大きければ、1回転で進む距離が長くなるので、スピードが上がるという原理です。
もちろん、ホイールに装着されるタイヤも大口径になりますが、ロードバイクは700cというサイズに、ほぼ統一されています。
700はタイヤの外径が700ミリという意味で、cはタイヤがはまるホイールのリムの規格を表す記号で、ロードバイクはcに限定されています。
タイヤサイズは、そこに幅(太さ)が加わって、700×25c(ミリ)のように表記されています。
先頭の数字700と記号のcは統一規格で変わらないので、太さの数値だけが変わると思っておけば大丈夫です。
ロードバイクのタイヤの太さは、つい最近まで23c(23mm)が主流でした。
ママチャリは30mm後半が主流なので、ロードバイクは一般的な自転車に比べ15mm前後も細いタイヤを履いていることになります。
スピード優先になるので、軽量で空気抵抗が少なく、地面との摩擦もなるべく低くと考えると、細くせざる得ないということなんです。
しかし、最近は、少し太めの25cが主流になってきました。
ロードバイクのタイヤが25cにシフトしている理由
ロードバイクはロードレースの機材なので、レースでの使用が基本です。
レースで使われたものがトレンドとなり、それがエンドユーザーである我々一般消費者に降りてくることになります。
そのため、なぜタイヤの太さで25cが主流になったのかと問われれば、プロのレースで使われる頻度が高くなったからという答えになります。
自転車に限らず、乗りもののタイヤは様々な抵抗があります。
地面と接することでの摩擦、前方からの風による空気抵抗、そして乗り手からの荷重で起こる変形などです。
これらは乗りものが前に進むのを阻む要因であり、総称して「転がり抵抗」と言います。
転がり抵抗の要素として、多くの割合を占めているのは、タイヤの変形です。
タイヤは人が乗らない状態では真円ですが、人が乗って転がり始めると変形して、横から見て平らな状態になります。
球体は角がなく、真円に近い方が転がりやすいのは明らかなので、変形率が大きいと転がり抵抗が大きくなるということです。
そして、この転がり抵抗が様々な実験を経て、23cよりも25cの方が少ないという結果になったため、レースの世界で25cが主流になったと言います。
ただし、タイヤは太さによって、適正とされる空気圧が違います。
細ければ高い空気圧が必要ですし、太ければ、反対に空気圧は低くなります。
上記の実験は、同じ空気圧で行ったものであり、どちらかに有利な空気圧だった可能性があります。
いずれにせよ、レースで使われているから主流になっているというだけで、レース以外のシーンでは25cが、必ずしも最適ということにはなりません。
25cが優れている点
ロードバイクのタイヤの太さが25cにシフトしているのは確かなので、転がり抵抗以外にもメリットはあるはずです。
その内のひとつに、乗り心地の変化が挙げられます。
タイヤは、太くなれば充填する空気の量が多くなるので、クッション性が増します。
クッション性が増すと、路面からの衝撃を吸収しやすくなりますので、乗り心地が柔らかくなります。
また、太いタイヤは空気圧が低くなりますので、先ほどの転がり抵抗の話にも出てきた、変形率が高くなります。
変形するとタイヤが平たくなって、地面との接地面積が広がるので、グリップ力が強くなり、車体が安定するようになります。
こういった乗り心地の変化によって、例えば、ロングライドにおいての快適性は、25cの方が有利になります。
言ってみれば、転がり抵抗が大きくなるということは、ある場面においてはデメリットだが、場面が変わればメリットになり得るということです。
25cと23cは用途によって有利不利が決まる
ロードバイクのタイヤでは、高速巡航時も25cの方が23cよりも有利です。
タイヤは太くなると、単純に重量が重くなりますし、外周の面積も大きくなります。
こうなると、スピードに乗るまでに時間が掛かりますが、スピードが落ちるのも時間が掛かります。
一度スピードに乗れば、維持が楽ということなので、綺麗な舗装路を高速で流すような走り方には、向いていることになります。
しかし、一瞬の加速力では劣りますし、漕ぎ出しが重くなります。
そのため、スプリントレースやヒルクライムならば、23cの方が有利との見方もあります。
そして、25cは近年、クロスバイクなどの街乗り車にも採用されてきています。
クロスバイクはツーリングなどのスポーツライクな乗り方と、ママチャリのような生活の足としての両面の要素があります。
その落としどころとして、25cが採用されているということなので、25cはバランスに優れていると言えますね。
ロードバイクのタイヤは太くなる一方か?
上記のようにタイヤの太さは、「このサイズが適正」という相対的な着地点ではなく、個人の体格や用途によって決めるものです。
しかし、現実的にはホイール側が太いタイヤへの対応として、リム幅を広げていく一方です。
皆様も、「ワイドリム化」という言葉を、目にしたことがあるのではないでしょうか?
ロードバイクの完成車でも、ロングライド向きのエンデュランスモデルでは、25cはおろか28cを標準装備にしているものも少なくありません。
さらに、32cまで可能なクリアランスを確保しているフレームもありますので、タイヤはますます太めにシフトしていくでしょう。
ロードバイクでは太い方でも、自転車全体のタイヤの太さから見れば、25cも28cも相当に細い部類です。
そのため、ロードバイクの特長を殺してしまうようなことはありませんが、細いタイヤに有用性を感じている人の対処も、同時に考えなければなりませんね。
ロードバイクのタイヤは細いからパンクするのか?
最後に、もうひとつお話しておきたいのは、ロードバイクの細いタイヤは本当にパンクしやすいのか?ということです。
結論から先に言うと、間違ってはいませんが、正解とも言えないという感じです。
タイヤのパンクは、釘やガラスの破片などの異物が刺さってしまう「貫通パンク」。
そして、クリンチャーやチューブラーのように、チューブが入っているタイヤで起こる「リム打ちパンク」です。
リム打ちパンクは、歩道と車道の段差を乗り越えようとしたときに、衝撃でチューブが変形し、リムと地面の間に挟まれて穴が開いてしまうパンクです。
この内、タイヤは細くなるとゴムが薄くなり、異物が刺さりやすくなりますので、貫通パンクはしやすくなります。
しかし、細いタイヤは先述通り、空気圧が高いので、ガチガチに硬くなります。
そうなれば、少々の異物は弾き飛ばしますし、チューブも変形しずらいので、パンクする確率は減ります。
パンクしやすいのは、タイヤに空気が入っていないからである可能性が高いのです。
ですから、物理的には素材が薄くなるわけですから、23cや25cの細いタイヤは、パンクの危険性が高まります。
しかし、適性の空気圧で空気を充填していれば、その可能性は低くなるということです。
また、段差にガンガン突っ込んでいくような荒い乗り方を避けるのは、繊細なロードバイクでは常識と言っても良いでしょう。
25cを基準に自分にあった太さを見付ける
今回はロードバイクのタイヤについて、現在、主流になっている太さ25cについてお話しました。
25cが優れているのは、スポーツ自転車らしい走行性能と、ママチャリライクな快適さを持ち合わせていることです。
主流だからといって、無理に合わせる必要はないですが、基準になる太さであることは間違いないと思います。